今季メジャー第2弾の全米オープン(6月18日〜21日)がワシントン州のチェンバーズベイGC(パー70)で開催された。優勝は、通算5アンダーのジョーダン・スピース(21歳/アメリカ)。マスターズ(4月9日〜12日/ジョージア州)に続いて、メジャー大会2連勝を飾った。過去、同一年度にマスターズと全米オープンを制したことがあるのは、ジャック・ニクラウスやタイガー・ウッズら5人だけ。J・スピースは、そんな史上6人目となる快挙を最年少記録で達成した。

 一方、日本勢注目の松山英樹(23歳)は、4日間通算3オーバー、18位タイに終わった。日本人選手初のメジャー制覇も期待されたが、出場選手の多くが嘆いていた"難コース"に、松山も苦しめられた。

 松山自身、試合前からプロトーナメント初開催で、全米オープンでは異例となる"リンクス"コースに警戒していた。

「コースは難しい。やっぱり(距離が)長いですし、グリーン周りからも(パットの)タッチを合わせるのが大変ですから。また、グリーンに乗ればまだいいですけど、外してはいけないところというか、(ボールを)落としてはいけないところがかなりある。その分、結構頭を使いますね。傾斜を利用してカップに寄せたりもできますけど、一歩間違えたら大変なことになりますし。とにかく、そんなにバーディーはとれないだろうから、できるだけボギーやダブルボギーを叩かないようにしたい」

 迎えた初日、10番スタートの松山は安定したプレイを見せた。ティーショットはほとんどフェアウェーをとらえて、11番パー4、16番パー4でバーディーを奪取。前半は2アンダーと絶好のスタートを切った。しかし後半、4番パー4で初のボギーを叩くと、7番パー4でダブルボギー。結局、イーブンパー、26位タイで初日を終えた。

「(7番のダブルボギーは)3打目のバンカーショットはよかったけれども、そのあとの3パットが痛かった。やっぱり、ダブルボギーは避けたいところ。もったいなかったな、と思う。でも、いいショットを打っての結果ですから、(気持ちの)切り替えはできていました。(メジャーでは)一度、集中が切れてしまったら、どこまでもスコアは崩れていく。だから、(集中を)切らさないように、切らさないようにやっています。

(初日を)イーブンで終えたことは、良くもないし、悪くもない。ボギーになりそうなところでパーをセーブできたし、逆にバーディーチャンスを外してパーになったところもあった。明日(2日目)以降のセッティングがどうなるかわからないけど、今日のようなプレイをして、ミスを少なくしていけば、チャンスは十分にあると思う」

 後半崩れながらも、そう前向きに語った松山。上位進出にも意欲を見せたが、2日目以降も厳しいコースセッティングに泣かされた。「出したくない」と語っていたダブルボギーを連日ひとつは喫して、2日目「71」、3日目「72」、最終日「70」と、一日もアンダーパーを記録することなく、4日間を終えた。

「コースは難しかったですけど、それでも(スコアを)伸ばせるピンポジション、ティーグラウンドの日があった。にもかかわらず、こうして結果がついて来ないというのは、まだ(自分には)このコースで戦うだけの技術がないのかな、と思う。また、(最終日には)一緒に回ったアダム(・スコット。34歳/オーストラリア)と遜色ないショットを打てていたと思うけど、その後のグリーン周り、パッティングですごく差を感じた。まあその辺が、上に行く人と、下で終わる人との差かな、と思った(※)。4日間を通して見ると、ダボがいくつもあったのがもったいなかった。ともあれ、そうしたことを反省材料にして、次につなげていくために、しっかりと練習したいと思います」
※アダム・スコットは最終日に6つスコアを伸ばして、トータル3アンダー、4位タイでフィニッシュ。

 松山は今季、米ツアーでベスト10フィニッシュが8回。非常に安定したゴルフを披露して、メジャー第1弾のマスターズでも最終日に爆発して5位と奮闘した。それだけに、松山に対する周囲の期待は高まっていたが、松山は慣れないコース、癖のあるポアナ芝とフェスキュー(リンクスコース特有の細くて長い草)の混ざったグリーンに最後まで翻弄された。だが、こうした経験を繰り返していくことが、今後の松山にとっては「プラスになる」と、ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏は語る。

「ひと言で言えば、今回松山は、また未知なる世界を知ったというか、新たな"壁"にぶつかった、といったところだろうか。別にそれは、いい意味でも、悪い意味でもない。まず、単純に結果として(海外の選手と)差が出たのは、アメリカでのゴルフ生活、キャリアというものが長いか、短いか、ということが一番大きい。ああいうとんでもないコース――距離にしても、うねったグリーンやフェアウェーにしても、さらに芝質にしても、アメリカで育った選手は多かれ少なかれ、ジュニア時代から経験はしてきている。しかし、日本で育ってきた松山は、日本のゴルフ場がトレーニング場であって、そうした経験はないに等しい。その差というのは、実は意外に大きい。

 そうして、今回の全米オープンのようなコースでは、クリエイティブな部分とイマジネーションがすごく要求される。そんな状況にあって、イマジネーションに関しては、松山も結構持っているほうだけど、ああいうコースでプレイしてきた実戦経験がないから、どう対処すべきかわからないことも多かったはず。アメリカで育った選手ならば、過去にどこかで経験していて、まったく慌てたりしないことでも、松山には戸惑うことがあっただろう。その差が、結果に表れたのだと思う。松山にとってみれば、準備は整えてきたけれども、また違う"ステージ"が自分の前に立ちはだかっていた、という感じではないだろうか。

 とはいえ、松山はここで、自らの足りないモノを知った。本人も結果を出した選手との差を語っていたように、勝つためには今の自分に何を足していけばいいのか、少なからずわかったと思う。そういう意味では、改めて挑戦意欲が増しているのではないか。また、こういう経験の積み重ねが、今の松山にはすべて自らの"肥やし"になっている。それに、アメリカ育ち、日本育ちという差も、アメリカで1年、2年......と繰り返しプレイしていれば、そこに順応していくし、埋められる。そういう意味では今後、松山にはいくらでもチャンスはあるわけだから、今回の結果は何ら悲観することはない。

 だいたい、メジャー大会なんて、そう簡単に勝てるものではい。フィル・ミケルソン(45歳/アメリカ)だって、プロ入り(1992年)してから10年以上経って、初めてメジャー制覇(2004年マスターズ)を果たした。それに比べて松山は、プロ入りしてまだ3年目。米ツアーを主戦場にしてから2年目。そんな彼に、周囲は早急な結果を求めるべきではない。じっくり待っていれば、松山が歴史を刻む瞬間は、必ず訪れるはずだ」

 次なるメジャー大会は、スコットランドの名門、セントアンドリュース(オールドコース)で開催される全英オープン(7月16日〜19日)。全米オープンと同じ、リンクスコースである。またひと回り成長した松山が、どんなプレイを見せてくれるのか、楽しみにしたい。

武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva