幸運に恵まれ、メジャー連勝をしたスピース(撮影:上山敬太)

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 マスターズを制し、全米オープンを制し、誰もが欲しがるメジャータイトルを続けざまに手に入れたジョーダン・スピース。優勝トロフィーを胸に抱き、本当に幸せそうだった。その一方で、悔しさを噛み締めながらチェンバーズベイを去りゆく敗者たちの姿は対照的だった。
メジャー連勝!優勝カップを掲げるスピース
 全米オープン最終日、優勝を競い合った選手たちなら身に付けている技術レベルは世界屈指のハイレベル。だが、優勝できるかどうか、とりわけメジャー大会で勝利を掴むことができるかどうかは、「最後は運だ」と多くの選手たちが口を揃える。
 なるほど。敗者たちの歩みを振り返ってみると、確かに彼らには肝心なところで幸運が巡って来なかった。
 この日、先にホールアウトしたスピースに追い付き追い越すチャンスがあったのは、ダスティン・ジョンソンただ一人。だが、ジョンソンは72ホール目に2オンしていながら、まさかの3パット。「イーグルで優勝」の可能性も、「バーディーでプレーオフ」の可能性もふいにしてしまい、「パーで敗北」した。
 ジョンソンは2010年の全米オープンでも54ホールを終えて首位に立ちながら、最終日はまさかの「82」を叩き、8位に甘んじた。同じ年、全米プロでも優勝に迫りながら、72ホール目にバンカーをバンカーだと認識せず、ソールして罰打を科せられ、プレーオフ進出を逃した。
 3度目のメジャー惜敗。その原因は、突き詰めれば、技術力や精神力、あるいは注意力や集中力なのかもしれないが、ここまで惜敗が重なれば、運が悪いねと言いたくなる。
 ジェイソン・デイも、そうだ。マスターズでも全米オープンでも、いやいや、メジャー4大会のすべてにおいて、優勝目前まで迫りながら、幾度も惜敗を繰り返してきたデイ。オーストラリア人として初のマスターズチャンピオンの座をアダム・スコットにもっていかれた2013年の惜敗は記憶に新しい。全米オープンには過去4度出場し、2位が2回、昨年は4位と、3度も惜敗を味わった。
 そして迎えた今年。首位に躍り出るほどの好調なゴルフをしていながら、よりによってそんな肝心なときに持病のめまいに襲われた。土日は本領発揮できずじまいで敗北。なんて運が悪いのか。そう思わずにはいられない。そう思いながら優勝したスピースを「運」の見地から眺めると、彼こそは幸運の持ち主だと思えてくる。
 マスターズで勝利を挙げたその年の全米オープンの舞台がチェンバーズベイだったことも、スピースにとってはラッキー要素の一つだった。大半の選手が「初体験」で挑んだコースを、スピースは2010年全米アマのときに体験済みで、それは間違いなく彼のアドバンテージだった。
 さらに、スピースのキャディのマイケル・グレラーは、この地で結婚式を挙げたほどの生粋の地元民。グレラーがそもそも備えていた土地勘がこの全米オープンにおいて大いなる助けになったことは明らかで、スピース自身、「マイケルのおかげだ。チームで手に入れた優勝だ」と感謝しっぱなし。
 けれど、スピースが今年の全米オープンをチェンバーズベイで開かせたわけではないのだから、その幸運はスピースがたまたま「もらった運」だ。そして、彼の勝利にもっと大きな貢献をしたのは、彼自身の前向きな姿勢が「呼び込んだ運」だ。
 スピースは開幕前から「今、年間グランドスラム達成のチャンスがあるのは僕だけだ」と自信を膨らませ、気持ちを鼓舞した。選手たちの間から不平不満が噴出していたチェンバーズベイに対しても「ネガティブな気持ちで挑んだら、その時点で負けだ」と必死に前を向いた。
 実力勝負の世界だけれど、最後は運もある。ジョンソンの惜敗、然り、デイの不運、然り。だが、勝利をもたらす最大の力は幸運を呼び込む力、生み出す力だ。
 そう考えれば、スピースの勝利は「もらった運+呼び込んだ運」のおかげであり、その両方を合わせたものを、別名「実力」と呼ぶのだろう。
文 舩越園子(在米ゴルフジャーナリスト)
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