F1モナコGP、アメリカのインディ500マイルレースとともに「世界3大レース」のひとつとして知られる「ル・マン24時間耐久レース」。

そのル・マンにニッサンがGT−Rの名前を使った奇妙なマシンで参戦した。

ニッサンの本格的なル・マン参戦は1999年以来と、実に16年ぶり。今シーズン、ル・マンを含む全8戦で争われる世界耐久レース選手権(WEC)に「ニッサンGT−R LMニスモ」(以下、GT−Rニスモ)という新開発マシンでエントリーする力の入れようだった。

ところが、ニッサンが持ち込んだこのニューマシン「GT−Rニスモ」とはル・マンのトップカテゴリー、「LMP1−Hクラス」(ル・マン・プロトタイプカー1・ハイブリッドクラス。ポルシェやアウディの他、トヨタも参戦)の常識を根底から覆すフロントエンジン、フロントドライブ…つまり「FF」方式を採用した前代未聞の珍マシン!

しかもコレがシャレにならないほど「遅い」のだ……。

初心者のためにル・マンに出場するマシンのクラス分けを簡単に説明しておくと、トヨタ、ポルシェ、アウディなどが出場する「LMP1−H」は、レース専用に設計された屋根付きのスポーツプロトタイプカーといわれる車体にエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドエンジンを搭載した最上位のクラス。

このLMP1−Hと、通常のエンジンを搭載する「LMP1−L」と「LMP2」までがいわゆるプロトタイプマシンで、いずれもエンジンはミッドシップが基本。ル・マンでは、こうしたプロトタイプとフェラーリやポルシェ、アストンマーチンなど市販車ベースのGTEクラスが混走する形になっている。

ニッサンはLMP−1クラスに常識破りのFFマシンで殴り込みをかけた…のだが、結論から言えばレース結果は「惨憺(さんたん)たる」ものだった。

そもそもマシンの完成が予定より大きく遅れ、世界耐久レース選手権の開幕戦である4月のシルバーストン(イギリス)、5月の第2戦スパ(ベルギー)欠場を早々と発表していた。

そのため事実上、「ぶっつけ本番」に近い形での参戦となったル・マンでは、予選で同じLMP1−Hクラスのポルシェ18号車がマークした最速タイム3分16秒887より20秒以上遅い3分36秒995を記録(ニッサン勢では最速)。

レギュレーションで定められた「同クラストップタイムの110%以内」という基準を満たせず「ペナルティー」対象となり、3台そろってスターティンググリッドをLMPクラスの後方まで下げられる降格処分を受ける始末。

決勝でもスタートから約時間後、日本人ドライバー、松田次生のドライブする21号車が右フロントホイールの脱落でリタイア。他の22号車と23号車は、度重なるトラブルでピットでの修理を繰り返しながらなんとかレース終盤まで走り続けたものの、23号車はサスペンショントラブルにより残り1時間というところでストップ。

唯一、生き残ってチェッカーフラッグを受けた22号車もレースの3分の1、約8時間ピットガレージで修理に費やした結果、合計で242周しかできず規定周回数の不足で完走扱いにもならなかった(ちなみに優勝したポルシェの総周回数は395周)。

ニッサンの技術力を世界にアピールする絶好の機会どころか、返って「GT−R」というブランドの名前を貶める結果となってしまったのだ…。

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(取材・文・撮影/川喜田 研)

■週刊プレイボーイ27号(6月22日発売)より