「Thinkstock」より

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 FIFAワールドカップ(W杯)1990年のイタリア大会アジア予選以来の大失態である。

 6月16日、W杯2018年ロシア大会出場を目指す日本代表は、シンガポール代表とアジア二次予選初戦を行った。戦前は「勝利が絶対条件で、あとは点差や内容に注目」という見方が大勢を占めたが、結果は0対0でまさかの引き分けとなった。

 初戦を白星で飾れないという25年ぶりの大失態に、試合後の埼玉スタジアム2002は大ブーイングに包まれた。

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「私の人生で、19回のチャンスを作りながら点が入らなかったという経験はほとんどない」と、遠回しに内容は良かったとアピールしたが、強がりも甚だしい。ここまで戦術的見どころのない試合は、久しぶりである。

 日本のサッカー選手は、監督の色に染まりやすい。フィリップ・トルシエ監督の時は、ラインコントロールをはじめシステマチックな動きに終始し、相手に読まれるとなにもできない人形のようなサッカーだった。

 それもあり、後任にジーコが選ばれたが、今度は自由を与えられた選手たちは、規律を見いだせなくなってしまった。二度の監督経験がある岡田武史氏は、「欧州の選手は個人戦術が高いため、ある程度の枠を与えれば、その中でプレーできる。日本人選手は、一から十まで教えなければいけない」と語っていた。

 ハリルホジッチ監督は、日本代表監督に就任してから「縦へのスピード」を強調してきた。選手たちは、監督に選ばれるために、それを体現しようとした。シンガポール戦後、多くの選手たちが「縦に急ぎすぎた」と反省していたように、ピッチでは急ぎすぎた選手たちの“交通渋滞”が起きていた。ハリルホジッチ監督が色を出しすぎたゆえの現象である。

●「アギーレに戻ってきてほしい」の声も

 もちろん、選手側の対応力にも問題があるだろう。しかし、ハリルホジッチ監督の采配に対する疑問はそれだけでない。

 監督の仕事は、試合前にスターティングメンバー、スタートポジション(フォーメーション)、セットプレーの役割などを決めることであり、試合開始後は選手交代になる。つまり、それらが監督の評価となるわけだが、シンガポール戦でいえば、ハリルホジッチ監督の“監督力”は、5点満点の2点といったところだろう。

 日本代表のセットプレーは拙く、高さを使うのか、トリックプレーなのか、アバウトなまま行われていた。さらに最悪だったのが選手交代であり、交通渋滞が起きている前線に大迫勇也選手を入れたことだ。

 当然、大迫はボールにからめず、徐々に存在感をなくしてしまう。その後、中盤の柴崎岳選手に代えて原口元気選手を入れたが、なぜか原口選手は普段のポジションとは違うボランチで使われた。結局、3人の交代枠すべてを使ったが、一度も流れは変わらなかった。「縦へのスピード」に執着し、個人の能力で打開を図るという、学生のようなサッカーに終始していた。

 ハビエル・アギーレ前監督は、1月のAFCアジアカップ オーストラリア2015の準々決勝で、UAE代表を圧倒しながら0対0で終わり、PK戦の末に敗退した。その後、八百長疑惑で解任されてしまった。あるサッカーライターは「意図のはっきりとした選手交代などは、アギーレ前監督のほうがよかった。アギーレ前監督に戻ってきてほしい」と語るが、「それは日本サッカー協会が絶対に許さないし、ハリルホジッチ監督は協会のお気に入りだ。大手メディアが25年ぶりの失態を批判しないことが、それを物語っている」と嘆いていた。

 ファンの大ブーイングは、協会幹部たちの耳に届いたのだろうか。
(文=TV Journal編集部)