30年以上の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏は、季節のイベントが相場転換のきっかけになることに注意すべきと指摘する。以下、その理由を水上氏が解説する。

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 相場転換の「きっかけ」は四季折々にあります。たとえば年末の12月は世界的にお祭りムードとなり、為替担当者も浮かれるのか、相場は凪の状態になりがちです。このように季節のイベントが相場に大きな影響を与えます。

 中でも、6月末の欧米の中間決算は影響大です。6月の中間決算だけではなく、12月の本決算でも、それまで保有してきた「ユーロ買い、ドル売り」という反対取引が、相場のテーマにかかわらず発生するものと考えています。

 たとえば、ユーロ/ドルの売りポジションをキャリー(持越し)してきたとしたら、実際にこの売り持ちポジションを、買い戻すという反対取引によって、損益を確定します。決算処理のために、具体的なユーロ買いが発生することになり、少なからず、為替相場に影響を与えています。このことを知らないで、それまでの相場観で、相場は引き続き上がるあるいは下がると見ていますと、なぜ突然相場が反転したのかがつかめず、場合によっては大きな損失を被ることになりますので、十分警戒する必要があります。

 なぜ6月の中間決算の方が、12月の本決算より、相場への影響度が大きくなりがちになるかと言いますと、それは、6月の中間決算が終わると、7月、8月が夏休みシーズンに入り、本格的に下期のスタートは9月になるため、下期の実働日数は、上期に比べて少ないためだと見ています。

 それでは、ここで、具体的な中間決算に絡んだ過去の相場展開の例を見てみましょう。

 2009年の暮からのギリシャ危機に端を発し、2010年1月には、さらに他のEU加盟国も巻き込んで欧州危機まで発展し、ユーロ/ドルは、2009年の12月から2010年6月7日までで、約3200ポイントの下落となりました。

 2010年6月初旬の段階でも、マーケットは「ユーロは売り」というコンセンサスとなり、ユーロの先安感が強い状況でしたが、そこを欧米勢が、中間決算に絡んだ利益確定のユーロの買戻しに大きく出たことから、相場は大きく反転することになりました。

 この2010年6月7日以降のユーロ/ドルの反発は、6月末までには700ポイント以上、反転上昇しました。上昇は8月初旬まで続き、安値からの上昇幅は、1400ポイントを越しました。

 いずれにしましても、この例から、中間決算絡みの反対取引によって、相場が実際に反転してしまうということがお分かり頂けるかと思います。しかも、相場のテーマをいくらうんぬん考えても、中間決算という大きな為替取引がともなう「会計取引」には敵わないわけです。

 この例では、中間決算にともなう為替の反対取引は、6月初旬から始まりましたが、早い年では、5月中旬から始まる場合もあります。ですので、5月中旬以降、注意しておくべきことは、年初来どういったテーマによって、どのようなポジションがマーケットで積み上がってきたのかを推理することが大事です。

※マネーポスト2015年夏号