糖尿病は“予備軍”を含め実に2200万人にのぼる。日本人の5人に1人が、患者もしくはその疑いがあるとされ、今や紛れもなく国民病となっている。
 専門家もあの手この手で糖尿病対策の研究を重ねているが、一向に減少しない。そんな中、糖質制限は血糖コントロールによる治療法の一つとして、最近注目され始めた。

 「糖質」は体内でブドウ糖に変わるが、「食事由来」「肝臓からの糖新生」「肝臓からのグリコーゲンの分解」という三つのルートに分けられる。
 「そのうち主なルートが、肝臓からの糖新生です。これがうまく機能すれば、食事で糖質をあえて摂取しなくても問題ありません。また、脳はブドウ糖とケトン体をエネルギー源にしており、そのケトン体は脂質摂取で作られていますが、どうしても高カロリー質になりがちです。ただ言えることは、日常から糖質の摂取量が少なくなると、タンパク質や脂質の燃焼率が高まるので、脂肪は体内に蓄積されにくく、肥満体にもなりにくいことです」

 こう説明するのは、昭和大学病院循環器内科の担当医だ。
 米国で行った糖質制限の研究例がある。米国の医療機関が最近、8万人強のスタッフ(看護師)を対象に20年間追跡調査を行った。結果は、心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクの上昇は見られなかったという。糖質制限食で高カロリーになっても問題ない、という事が判明したのだ。

 しかし、別な専門家は糖質制限に難色を示す。
 「糖尿病で運動、食事療法のみの人は、糖質制限食を始めても構いません。しかし、糖尿病と診断を受け、インスリンか薬物治療を受けている人は、糖質制限食を続けていると低血糖を起こす可能性があり、賛成はし難い。糖質制限食で炭水化物を減らすことは、血圧、血糖、脂質を改善する効果はあるが、長期的には健康に及ぼす良い結果とはならないのです。もともと健康な人は、糖質制限などをする必要がないわけですから、自己判断で始めるのは感心しません。あくまで専門医のアドバイスを聞いてから行ってください」

 日本糖尿病学会は、糖尿病患者向けに、食事の糖の分量を抑えた糖質制限食を治療法の一環として認めている。従来のカロリー制限食に比べ取り組みやすいと、今では病院やレストランなどで糖質制限食を取り入れる動きが広がっている。
 糖質は、炭水化物や芋類などに多く含まれる。例えば、ご飯1膳に糖質量は約55グラム、6枚切りパンは1枚あたり約40グラムに上る。和食で使う砂糖やみりんなどの調味料にも注意が必要だ。一方、肉類や乳製品は糖質があまり含まれていないため、糖質制限食として勧められている。
 都内で総合医療クリニックを営む医学博士・久富茂樹院長は言う。
 「糖尿病治療では長年、カロリー制限が基本とされてきましたが、カロリー計算が面倒くさい上、量も少なく、続かない場合が多い。糖質制限食は、糖質量を減らせばカロリーは気にしなくてもいい。ある例だと、カロリー制限が上手くいかなかった患者24人を、再び『カロリー制限食』を試す人と、『糖質制限食』を試す人を無作為に分け、6カ月間観察した結果、糖質制限を試した人のみ、血糖値の平均値や中性脂肪、最低血圧値の改善が明らかになっています」
 糖質制限食は、日本糖尿病学会も治療の選択値の一つとして認めている。3年前の同学会学術集会で、「1日の糖質量130グラムを目安とする」ことで合意。ただ、やはり一部の学会員から「糖質以外に摂るタンパク質や脂質の内容も重要で、この療法を試す際には併せて考える必要がある」と、糖質量の詳細な解析を求める意見も出されたという。