ミュージカル『エリザベート』出演真っ最中の尾上松也。様々なジャンルで精力的に活動する松也だが、本業である歌舞伎では、2009年から『挑む』というタイトルの歌舞伎自主公演を毎年行ってきた。松也をはじめとした若手の歌舞伎俳優が中心となって作られ、歌舞伎が初めての人でも楽しめるという『挑む』について、松也が語った。

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『挑む』シリーズは、8月に上演される『挑む〜更なる幕へ勇みし気迫(こころ)〜』で7年目となる。

「毎年回を重ねるたびに、進化をしているつもりですし、手応えも感じています。だからこそ、毎年新しいことにチャレンジをして、自分たちにプレッシャーをかけ続けています。今年は特に例年以上に挑戦の連続となる公演です」

満を持して、大先輩の片岡孝太郎とともに舞う

2010年の『挑む』で一度上演した「二人椀久」という演目を再び上演するのも今回の挑戦のひとつ。前回は澤村國矢と市川蔦之助の二人が演じたが、今回は満を持して松也自身が大先輩である特別出演の片岡孝太郎とともに舞う。「二人椀久」とは、絶世の美女・松山太夫と、彼女に入れあげすぎて座敷牢に閉じ込められてしまう椀屋久兵衛の物語。二人が夢で会う幻想的な場面が大きな見どころ。

「いつか演じたいと思っていた演目でした。若い頃はずっと女形を勉強してましたので、演じるならば松山太夫だろうと思っていましたが、今回は何度も松山太夫を勤められている孝太郎お兄さんが出演してくださるので、椀屋久兵衛を精一杯、勤めたいと思います」

また、「二人袴(ふたりばかま)」という名作狂言は工夫を重ね、『挑む』バージョンのオリジナル作品として一から作り上げていく。ある男が舅に挨拶に行く際、父に玄関まで付き添ってもらう。正装となる袴を父からその場で借りて挨拶をするが、父も舅に呼ばれてしまい……というもの。

「袴がひとつしかないのを二人でなんとかごまかすという、かなりコミカルなものなので、そこを大事にしながら作っていきたいと思います」

これまでより広いKAAT(神奈川芸術劇場)での上演も、ひとつの大きな挑戦だ。

「演劇の第一線で活躍されている方々が使う劇場で上演できることは非常に光栄ですね。もちろん自分たちがやりたいということもありますが、お客様に観ていただきたくて開催している公演です。毎年楽しみに待っていてくださる方が増えているというのは、本当に継続していくことが力になった結果だと思っています」

同世代の歌舞伎俳優たちとともに、毎年自主公演を重ねてきたことが、確実に自身の力になっているという松也。

「本当にみんなが一丸となって走っている。普段から出演者全員で話し合いながらいろんなことを進めています。『挑む』のグループLINEがあって、確認事項やアイデアはすべてLINEで共有しているんです」

『挑む』シリーズはこれまで、「歌舞伎役者の粋と意気」「傾く者の繋ぐ技量」など、サブタイトルでその熱い思いを伝えてきた。今回は「更なる幕へ勇みし気迫(こころ)」。

「これは、プロデューサーが俯瞰で見て、どういう気持ちでやっていくのかを言葉にして提案してくれるんです。僕ら役者だけで闘っているわけじゃない。制作陣も、歌舞伎に関わりのなかった人たちが集まって、気持ちで支えてくれる。僕らもその気持ちに背中を押されてここまでやって来られたと思います。全員が右も左もわからないところから、チームでなんとかやってきた。この『挑む』というのは、公演に関わる全員が挑むという意味が込められているんです」


これからの歌舞伎を引っ張ってゆく役者となるため、挑み続ける松也。上演を前に、6月21日には、イベント「歌舞伎トークパーティwith尾上松也」も開催。

「挑む」への思いはもちろん、素顔に迫る「100問100答」など様々な角度から松也と「挑む」の魅力にスポットを当てるイベントになりそうだ。さらなる彼のチャレンジを見届けたい。

『挑む〜更なる幕へ勇みし気迫(こころ)』
2015年8月8日(土)
昼の部11:30〜、夜の部16:30〜
KAAT(神奈川芸術劇場)
S席8,640円 A席7,560円 B席6,480円
チケットぴあにて発売中

『歌舞伎トークパーティwith尾上松也』
2015年6月21日(日)
17:45開場/18:30開演
会場:シーバンスホール(東京都)
料金 当日座席指定 6000円(軽食1ドリンク付き)