カンファレンス・ファイナルのまっただ中、現地5月21日に発表された今季のオールNBAチームの1stチームに選出されたのは、以下の5選手だった。ステファン・カリー(ゴールデンステート・ウォリアーズ/PG)、ジェームス・ハーデン(ヒューストン・ロケッツ/SG)、レブロン・ジェームズ(クリーブランド・キャバリアーズ/SF)、アンソニー・デイビス(ニューオーリンズ・ペリカンズ/PF)、マーク・ガソル(メンフィス・グリズリーズ/C)。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 そのときから、予感はしていた。「今季のプレーオフの主役は、カリーではないか」と――。なぜならば、今季のレギュラーシーズンMVPに輝いた27歳のポイントガードは、1stチーム発表時、すでに上記5名のうち2名とプレーオフで対峙し、ともに撃破していたからだ。

 レギュラーシーズンで両リーグを通じて最高勝率(67勝15敗・勝率.817)をマークしたウォリアーズは、ウェスタン・カンファレンスの第1シードとしてプレーオフに挑んだ。そして迎えたファーストラウンドでは、アンソニー・デイビス率いるニューオーリンズ・ペリカンズを4連勝でスウィープ。成長著しいリーグ屈指のパワーフォワードを無敗で一蹴した。

 プレーオフ初出場だった22歳のデイビスは、1試合平均31.5得点をマークし、キャリア最初のプレーオフ4試合でカリーム・アブドゥル=ジャバー(1969年〜1989年/ロサンゼルス・レイカーズなど)やウィルト・チェンバレン(1959年〜1973年/フィラデルフィア・76ersなど)といったNBAのレジェンドに並ぶ、「平均30得点・10リバウンド以上」のスタッツを残したNBA史上4人目の選手となった。

 それはつまり、遅からずデイビスの時代が到来することが約束されたと言ってもいいだろう。しかし、「まだ、お前の番じゃない」と言わんばかりに、カリーはファーストラウンド4試合で平均33.8得点を記録し、今季の主役がどちらかなのかを知らしめた。

 さらにウォリアーズは、カンファレンス・セミファイナルでマーク・ガソル率いるメンフィス・グリズリーズと対戦し、4勝2敗で勝ち進む。堅守を誇るグリズリーズ相手に、カリーは平均24.5得点にとどまるも、1勝2敗で迎えた第4戦で33得点、カンファレンス・ファイナル進出を決めた第6戦で32得点と、ここぞという試合で大爆発。敗者のガソルは、「言い訳はしない」と潔く結果を受け入れるしかなかった。

 次なるはリーグ屈指のスコアリングマシーン、ジェームス・ハーデン率いるヒューストン・ロケッツとの対決となったカンファレンス・ファイナル。ウォリアーズは4勝1敗でハーデンに競り勝ち、40年ぶりとなるファイナル進出を決めた。レギュラーシーズンのMVP投票でカリーの次点に甘んじたハーデンは、平均28.4得点の活躍を見せたものの、カリーはそれを上回る平均31.2得点を記録した。

 そして、いよいよNBAファイナル――。イースタン・カンファレンスを勝ち抜いてきたのは、今季オールNBAチームの1stチームメンバー最後のひとり、「キング」ことレブロン・ジェームズ率いるクリーブランド・キャブスだった。ファイナルでレブロンを破って優勝すれば、カリーが現在のNBAでナンバー1プレーヤーであることを疑う者はいなくなるだろう。レギュラーシーズンMVPの授賞式で、トロフィーを掲げながら言ったカリーの言葉が、現実になろうとしていた。

「このトロフィーのほかに、もうひとつトロフィーを勝ち取れたらと思っている」

 レブロンを倒してウォリアーズが優勝し、ファイナルMVPはステファン・カリー。ただ、そんなシナリオを、「キング」が黙って受け入れるはずはない。ファイナル開幕直前、カリーに最大限の敬意を払いつつ、レブロンはこう言った。

「カリーを止められるか? 俺を止めようとするのと同じだ。つまり、誰も止められない」

 ついに、頂上決戦の幕は上がった。

 第1戦――。カリーは26得点、レブロンは44得点を挙げ、延長戦の末に108対100でウォリアーズが先勝。だが、キャブスにとって敗戦以上に痛かったのが、カイリー・アービング(PG)が左ひざを骨折し、第2戦以降の離脱が決定したことだった。ファーストラウンドで離脱したケビン・ラブ(PF)に加え、ここにきてアービングも負傷。「ビッグ3」の両翼を失ったレブロンはひとりでウォリアーズと戦わなければならず、現地メディアは「世界最強のバスケットボール選手(レブロン)と、世界最強のバスケットボールチーム(ウォリアーズ)との対決」と報じた。

 キャブスの圧倒的不利と思われた第2戦だったが、再びの延長戦を押し切ったのはキャブスだった。孤軍奮闘のレブロンは、39得点・16リバウンド・11アシストのトリプルダブルを達成。さらに、アービングの代わりにスターターとなったマシュー・デラベドバ(PG)が、見事な「カリーストッパー」となった。

 もちろん、カリーが止めようと思って止められる選手でないことは、キャブスも承知していた。よって、デラベドバはファウルぎりぎりまで密着し、カリーにシュートを打たせないことを最優先。味方選手もスクリーンプレーの際にノーマークの選手が生まれるリスクを冒してでも、カリーに対してダブルチームを敢行した。その結果、カリーは23本のシュートを放ちながら、成功したのはわずか5本。19得点に抑えられてしまう。

 キャブスの術中にハマったカリーだったが、それでも試合後には胸を張った。

「たった1試合の結果だけで、僕はシュートを打つことを止めない。自信がなくなることもない」

 そして第3戦は、またしてもキャブスが押し切って2連勝。レブロンは40得点・12リバウンド・8アシストと、ほぼトリプルダブルの活躍だった。復調したカリーも27得点を挙げるが、エンジンがかかるのが遅く、勝敗を左右する場面で活躍できない。

 物語の主人公が、カリーからレブロンに変わろうとしていた。

 だが、第4戦――。ウォリアーズにシリーズの流れを変える救世主が現れる。それは、思わぬ伏兵のアンドレ・イグダーラ(SF)だった。スティーブ・カー・ヘッドコーチ(HC)は、レギュラーシーズンでもプレーオフでも、1度たりともスターターを務めたことのないイグダーラを先発に大抜擢。この采配が当たり、イグダーラは22得点とオフェンス面で貢献したのみならず、守備でもレブロンを20得点に抑える活躍を見せた。ウォリアーズは躍動感を取り戻し、103対82で2勝2敗のタイに戻す。

 第5戦はリードチェンジが20回、同点が10回という大激戦となった。レブロンは40得点・14リバウンド・11アシストと再びトリプルダブルを記録するも、最後に押し切ったのはウォリアーズ。復調したカリーは7本のスリーポイントシュートを沈め、合計37得点を挙げた。

 そして第6戦。レブロンは32得点・18リバウンド・9アシストという大車輪の活躍を見せるものの、試合残り33秒で97対101の4点差に詰め寄ることが精一杯。結果、ウォリアーズが105対97でキャブスを下し、4勝2敗で40年ぶりのNBA制覇を成し遂げた。

 試合後、レブロンは「プレーオフでは健康な状態を保たないといけない。そして、少しの運が必要だ。俺たちは素晴らしいプレーをした。だが、運がなかった」と気丈に振る舞った。

 ただ、今ファイナルでのレブロンの大活躍に、「敗戦チームからファイナルMVP受賞者が誕生するかもしれない」と、会場はにわかに色めき立った。しかし、待っていたのは違った結末だった。ファイナルMVPを受賞したのは、レブロンでもカリーでもなく、伏兵のイグダーラ。投票で11票中7票を獲得し、最高の栄誉を手にした。

 ファイナルMVPのトロフィーを掲げるイグダーラの横で、満面の笑みを浮かべるカリーは言った。

「ルーキーから数えて6年。今、信じられないような経験をしている。チームのために自分を犠牲にして、努力してくれたチームメイト全員を愛している」

 表彰式でカリーは、チームメイトやスティーブ・カーHCとともに、優勝の証である「ラリー・オブライエン・トロフィー」を高く掲げた。ファイナルMVPのトロフィーでこそなかったが、それはたしかに、カリーが何よりも欲した自身ふたつ目のトロフィーだった。

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro