現地6月18日の早朝(日本時間6月18日の夜)、第115回全米オープンが開幕する。

 開催コースは、西海岸のワシントン州にあるチェンバーズベイ。聞き慣れないコースだが、それもそのはずで、開場(2007年)わずか8年、過去にメジャー大会はおろか、プロのトーナメントさえ開催されたことがない。この未知なる舞台が、今年は例年とは違った形で、多くの選手たちを苦しめることになりそうだ。

 というのも、全米オープンと言えば、これまで深いラフと高速グリーンなどが選手たちを悩ませてきたが、今回のコースのコンセプトは"リンクス"だからだ。その雰囲気はまさに全英オープンと見間違うほどで、フェアウェーのみならず、グリーン上も大きくうねっていて、フェアウェーやグリーン周りにはアゴの高いバンカーが待ち受ける。そして、海岸沿いに造られたコースゆえ、リンクス特有の強風が吹き荒れ、それこそが選手たちを苦しめる最大の"難関"となる。

 また、全長距離(最大約7900ヤード)や、いくつかのホールのパー数が日によって変わるセッティング(※)。そんな変則コースで、過去とは明らかに違う「全米オープン」とあって、戦いが始まる前から、ほとんどの選手がすでに戸惑いを隠せないでいる。
※1番と18番ホールが、その日のコンディションによって、パー4になったり、パー5になったりする。ただし、全18ホールのトータルパー数「70」は変わらない。

 最終予選を突破して、3年ぶりに全米オープンの舞台に戻ってきた石川遼(23歳)は、練習ラウンドでこの"モンスターコース"の怖さを早くも痛感。困惑の思いを正直に吐露した。

「ちょっとミスしたショットでも、(ボールが)グリーンから30〜40ヤードは簡単に離れていってしまう。そういうところは、普段プレイしているPGAツアー(の会場)とは違うな、と感じますね」

 日本から参戦する藤田寛之(46歳)も、大会前には「平常心で挑む」と話していたが、練習ラウンドを消化して、コースの対応に苦慮。5度目の全米オープン挑戦ながら、過去との違いに面食らっていた。

「18ホール、すべて違う顔をしているというか、毎ホール難しい。(全米オープンは)いつもそうだけど、気が抜けるホールがないし、本当にすごく難しい」

 そうした状況にあって、淡々と練習ラウンドをこなしていたのが、日本人初のメジャー制覇が期待される松山英樹(23歳)だ。

 今季の松山は、トップ10フィニッシュが8回と、とにかく抜群の安定感を誇る。この数字は、今年のマスターズ(4月9日〜12日/ジョージア州)を制したジョーダン・スピース(21歳/アメリカ)の9回に次ぐ記録だ。

 その安定した成績を支えているのが、飛んで曲がらない、正確なドライバーショット。それは、平均飛距離とフェアウェーキープ率を合わせたスタッツ、『トータルドライビング』で3位という数字でも示されている。現地6月16日、アダム・スコット(34歳/オーストラリア)と一緒に9ホールの練習ラウンドを行なったが、その際もパー3を除く7ホール中、6ホールでフェアウェーをキープ。ほぼ完璧なドライバーショットを見せた。

 さらに、松山は今季、メジャー制覇への意欲が一段と高まっている。彼の気持ちに火をつけたのが、前述した2学年下のJ・スピースだ。アマチュア時代から同じ舞台でしのぎを削ってきたライバルで、昨年の日本ツアー、ダンロップフェニックス(2014年11月20日〜23日/宮崎県)では、ふたりで熾烈な優勝争いを展開。J・スピースより1打上回った松山が大会を制した。また、昨年、一昨年の全米オープンでも同じ組でラウンドし、常に切磋琢磨し合ってきた。

 そんなJ・スピースが、今年のマスターズで初のメジャータイトルを手にした。それが、松山の"ライバル心"を一層かきたて、松山自身に大きな自信をもたらした。

「ジョーダン(・スピース)ができることなら、僕もできる、という思いはあります。負けられないって、気持ちもありますし。そこで、どういうプレイをしたら勝てるようになるのか、僕自身は考えてやらなければいけない。やっぱり(J・スピースには)勝ちたいと思っていますから」

 一方、J・スピースも松山のことは常に気にかけているようだ。全米オープンを前にした会見でも、松山について触れている。

「私は、英樹をとてもリスペクトしているし、今週(全米オープン)は英樹にも優勝のチャンスがあると思う。昨年のザ・メモリアルトーナメント(2014年5月29日〜6月1日/オハイオ州)での優勝もそうだけど、それらの結果が、彼が大きな大会で勝つ可能性があることを示していると思う」

 今季、松山はわずか1打差で優勝を逃した試合が3つある。4日間のトーナメントで1打差というのは、極めて小さい差である。裏を返せば、その1打を縮めることができれば、世界の頂点に立てるということだ。そして、松山にはその準備ができている。J・スピースが言うとおり、チャンスは間違いなくある。

 さらに、米ツアーの公式ページで公開された全米オープンの「優勝予想ランキング」では、世界ランク1位のロリー・マキロイ(26歳/北アイルランド)、同2位のJ・スピースに次いで3番目に、松山(世界ランク14位)が選ばれている。松山の実力は、世界が認めているのである。

 日本人によるメジャー制覇――それは、期待でも、夢でもなく、確実に手の届く場所にある。

テレビ朝日 全米オープン取材班●構成 text by tv asahi US open crew