本田を起点にして、両サイドから香川(10番)や宇佐美(11番)が絡んでいく。そうしたバリエーションの必要性も感じた。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 ゴール前の攻防だけを切り取れば、ある意味、スリリングなゲームだったかもね。

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 率直な意見として、今回のシンガポールのように中を締めてくる相手に対しては、もっと外を使わなければいけない。
 
 パスを速く回して、サイドに散らしてから、敵のディフェンスを引き出すような形にする。漠然とサイドからクロスを入れても無駄。サイドチェンジを繰り返して、揺さぶりをかけながら、密集地帯に穴を空けるようにする。
 
 例えば、サイドハーフに預けた時、SBは縦に上がるのはいいけど、状況によってはインナーラップ(内側に入っていく動き)も繰り出して、敵の守備陣をかき乱すべきだった。
 
 また、クロスの質はもちろん、エリア内への入り方が非常に悪い。人数は足りていたよね。でも、クロッサーが切り返した瞬間に時間と空間ができるのに、スタンバイしている選手たちの動き出しがまったくない。ただ、待っているだけ。止まりっぱなし。それでは、相手も守りやすくなるのは当然だよ。
 
 中の入り方は、チームとして約束事が決まっていないように見えた。それぞれが独自の判断でプレーしていたんじゃないのかな。そこのクオリティを上げていかないといけないし、この試合で最も気になった点だね。
 
 1本だけ、太田から岡崎に通したクロスがビッグチャンスになったけど、あれは岡崎のポジショニングが素晴らしかった。こういうシーンをもっと増やさないと、同じようなシチュエーションで同じことの繰り返しになると思う。
 
 縦を狙うのもいいけど、相手に引かれた時のトレーニングを徹底しておくべきだった。準備不足だったのは否めないね。
 
 個々を見ればイージーミスも目に付いたけど、それは些細なこと。たいした問題じゃない。それよりも、クロスの質とそれを受ける側のポジショニングの拙さこそ“最大のミス”と言える。
 
 崩しのもうひと工夫として、右サイドの本田とトップ下の香川を入れ替えても良かった。相手がゴール前を固めてくるなら、フィジカルの強い本田を起点にして、彼にボールを当ててから、サイドから香川や宇佐美が絡んでいく。そうしたバリエーションを織り交ぜる必要性も感じた。
 香川に関しては、相手のCBとボランチの間、もしくはボランチの脇のスペースで良いポジションを取れていた。それなのに、香川に効果的な縦パスがあまり入らなかったのは、後ろの選手が見えていないから。もっと視野を広げて、タイミングを図る努力をしたほうがいいと思う。ヨーロッパのクラブなら、香川にはすかさずボールが出ていたはず。そこでの連係は今ひとつだったね。
 
 2ボランチの過剰なリスクマネジメントも残念だった。
 
 シンガポールは1トップを残して、守勢に回っていた。相手はほとんど攻めてくるつもりがないんだから、なかなかゴールが奪えない状況であれば、長谷部でも柴崎でもどっちでもいいけど、2ボランチのひとりがもっと前目にポジションを取って、攻撃に厚みをもたらしてほしかった。
 
 前半にひとつ、長谷部が攻め上がってチャンスになるシーンがあったけど、ああいうプレーをもっと見たかったし、カウンターを警戒していたのかもしれないけど、ふたりとも中盤の深い位置に陣取っていたのが不思議でしょうがなかった。
 
 あとは、パワープレーという選択肢も準備しておいても良かったと思う。今回の選出メンバーには川又がいたけど、彼は怪我で離脱していたからしょうがないとして、追加招集で誰かを呼ぶこともできたはず。
 
 ハーフナー・マイクとか候補者はいくらでもいると思う。そのなかで、こんなことを言うのは俺だけかもしれないけど、あえて推すなら、横浜FCの大久保とか面白いのではないか。
 
 大久保は普段はJ2でプレーしているけど、今季もしっかりと結果を出している。ヘディングの強さは国内でも抜きん出ているし、攻めあぐねる展開になれば、彼の高さはアクセントになって、DFを引きつけられれば、他の選手がフリーにもなる。アジアレベルなら十分に通用する気がするけど、どうだろうか。
 
 いろいろと重箱の隅を突いたけど、基本的には、勝てなかったけども、そこまで大きな問題はなかった。言ってしまえば、ただ点が取れなかっただけ。相手のGKも見事な出来だった。でも1点入っていれば、5点、6点と取れたゲームでもあった。
 
 とはいえ、細かい部分で攻撃面の課題を露呈したのは事実。改めて問題点が表面化したと考えれば、必要なスコアレスドローだったと言えるね。
 
取材・構成:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)