数多くのチャンスを迎えながらスコアレスドロー……。まさかの結果にハリルホジッチ監督も衝撃を受けたようだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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「長い間、サッカーに携わってきましたけど、19回ほど決定機を作りながらこのような結果になったのは初めてです。こういう試合になってしまうと、カウンターアタックから1点奪われて負けるというパターンも想定できますが、そうでなくても、もちろんスコアレスドローという結果にはがっかりしています。

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 スタジアムやグラウンドの雰囲気も良かったです。ただし、チームを非難することはできません。勝つためにすべてを出しました、決定的チャンスをモノにする力が足りなかっただけだと思います。少し慌てたのか、少しチャンスがなかったのか、運がなかったのか、それから相手GKの成功もありますね。素晴らしいセーブを見せたと思います。
 
 私にとっても、(結果が)本当に厳しいものだと思っています。昨日も皆さんに話しましたが、(ワールドカップ予選の)初戦というのはいつも罠が仕掛けられていると思っています。選手はよく戦っていました。次に向けて、しっかりとゴールを決めて勝とうと思っています」
 
――イラク戦に比べると選手の動きが違っていた。精神的なものなのか、疲れなのか、原因はどこにあると思っていますか?
 
「相手が守備しかしてこないのはある程度想定していました。大袈裟に言えば、我々にとってほとんど恐くない相手だった。CKもなかったですしね。1点取れればすべてが変わったと思うんですが、少し正確さが足りなかった。少し慌てていた部分もありましたね。
 
 得点が欲しいと思っても、GKの素晴らしいセーブがあって、シュートがバーやポストに阻まれてしまった。そういう試合だったと言うしかないですね。フットボールの難しさを改めて痛感させられました。19個ほどの100パーセント決まるだろうというチャンスを作ったわけです。フィニッシュのところに関しては多くのディスカッションができると思います。
 
 選手たちは本当に勝利を求めていました。もしかしたら、次の試合は少ないチャンスでも得点が入るかもしれません。イラク戦ではこんなにチャンスを作っていないわけですから。ただ、こういう相手にも勝たなければいけない。ショックとまでは言いませんが、それに似た感覚を今は持っています。
 
 ただ選手には、希望を失うな、まだ次がある、もっと良い得点を奪えるので頑張っていこうと言いたい。最後は5、6人で勝負を仕掛けました。相手はすでに走ることができませんでしたね。試合後にシンガポールの監督がこっちに来て、『私は守備しかできなかった』と言っていましたけど、彼らは求めた結果を得たんだなと思っています」
――格下を相手に主導権を握り、攻めても得点できない展開はこれまでも多くありました。チャンスを仕留めるための方法を探すのは簡単ではないですが、改善する意味で、選手にどう意識づけしていきたいと思っていますか?
 
「おっしゃるとおり、(シンガポールが)引いてくるのは分かっていました。私はダイアゴナルに逆サイドへのパスを要求していたんですが、それができず中央から攻めすぎたかなと。もっと我々がオブリックランニング(斜めの走り)と言っている動きを出したかったですし、ダイアゴナルのパスが少し足りなかったんです。
 
 中央から崩そうと思えば、ダイレクトで2、3回つながなきゃいけない。4、5回はそれで成功したんですが、残念ながらシュートが正確ではなかった。私はFWだったので、彼らがどのような心理状況なのかも分かります。ただそうは言っても、前半にあれだけ支配したのに、(ゴールまで)16メートルより前のFKがなかった。これはちょっと説明しがたい。
 
 後半は(ゴールまで)16メートルより前で、2、3回チャンスがあって、本当ならこれも決めなければいけなかった。サッカーで一番難しいのは得点を奪うことですが、それに対して我々は十分なパフォーマンスではなかった。
 
 この試合は本当に勝ちたいと思っていました。観客の皆さんが素晴らしい雰囲気を作ってくれて、失敗は許されなかったんですけども、こういう結果になってしまった。ワールドカップ予選で(簡単に)勝てる試合はないと申し上げていますけど、それが今日現実に起きたんです。少し分析が必要かなと思います。後半、何人かの選手は疲れていましたし、フィジカルが十分でない選手も何人かいました。
 
 まずは冷静になって、しっかり休憩して、それから分析していきたい。もちろん運がなかったということではなくて、他の要素があると思います。冷静にしっかり分析するということが大事だと思います。それから、トレーニングを続けていきたい」
――前半の45分間を監督がどのように評価されて、ハーフタイムにどのような指示を選手たちに出したんですか?
 
「まずハーフタイムですが、『中央へ攻めすぎだ』と伝えました。中を崩すのであれば、フリックや2、3回ワンタッチを入れて背後に抜ける動きが必要だった。それよりも、『外からボールを入れてくれ』と言ったんです。特に、斜めの逆サイドへのボールを出してくれと。実際、昨日も逆サイドにボールを運んでそこからクロスを上げる練習はしました。
 
 後半は2トップにして、両サイドからクロスを入れながら得点を狙いましたが、例えば本田が放ったヘディングシュートに関しては、もっと隅を狙うべきでしたね。相手もしっかり我々の戦術を理解して縦を防いできたので、逆サイドに展開しそれからそこから崩そうとしました。
 
 サイドからのオーバーラップも積極的にトライして、太田には『今日は君の試合だ』と言いました。相手に警戒されながらも、それでも彼はしっかりクロスを上げてくれた。勝つためにあらゆる手を尽くしたつもりですが、19回ほどのチャンスを作って、ゴールが入らなかったのは私の人生であまり見たことがありません。
 
 少しがっかりしていて、なかなか(この結果を)飲み込めず、消化できません。ゴールがたくさん生まれて、スペクタクルな試合になっても不思議ではなかったんですが、次の機会を待とうかなと思います」
 
――歴代の代表監督、例えばジーコさん、オシムさん、ザッケローニさんも、引いてくる相手に大変苦しんできました。この先もこういう戦術を採る相手との対戦は避けられませんが、それに対するマジックや対策は?
 
「フットボールにマジックはありません。トレーニングをするだけです。この試合でもハイレベルなアクションは見られて、選手たちの戦う気持ちも感じました。ボールを失った瞬間、彼らはおそらく3、4秒以内に奪い返していたんじゃないでしょうか。チームは勝つために全力を尽くしていたと思います。
 
 欲を言えば、もう少しファウルを誘っても良かった。おそらくイタリアだったら、(彼らはずる賢いので)3回PKをもらっていますね。そういったナイーブなところも少し向上させなければいけない。本当にこれだけ運がなかったのは、信じられないです。素晴らしいシュートも5、6回あったんですけども。
 
 選手を非難すべきではありません、もし非難するのであれば、私を非難してください。全部監督のせいですから。勝ったら選手のおかげで、負けたら私の責任です。今は状況を上手く飲み込めません」
――先日のイラク戦同様、後半途中から香川選手に代わって、トップ下に原口選手が入りました。原口選手にトップ下としての適性を認めているのか。もうひとつは、大迫選手が入ってからシステムが変わりましたが、変化を加えたかったのか?
 
「(システムを)変更したのは得点を取りに行くためです。サイドアタックを期待していたので、ヘディングが上手い大迫と岡崎のふたりを前線に置いて、『クロスをもっと入れてくれ』という意味もありました。
 
 原口に関しては、シュートを打つためにボールを運んでほしかったんです。遠目からでもシュートを狙ってくれという話もしましたが、そういったプレーはあまりなかった。ゴールまで16メートル前まで行って少し慌てていましたね。もう少しスピードアップしてシュートを打ってほしかった。
 
 何人かの選手は疲れていたので、新たな選手を入れて、なにかをもたらすためのトライをすべてしました。ただ成功しなかったですね。パスを横ばかりに回すのではなくて、ダイアゴナルのパスを入れて、オブリックランニングをしてほしかったんです。
 
 いろんなことを分析する必要がありますが、我々は19回ほど決定的なチャンスを作ったわけですね。シンガポールよりもより良いチームだと私は思っていますけども、十分じゃなかった。(代表監督に就任後)3試合やってある程度効果が出た半面、我々はまだなにも成し遂げられていません。
 
 この試合への準備はしましたが、残念ながら成功しなかった。分析するには良い試合かなとも思っています。ただ、負ける可能性があったという意味では、ちょっと恐かったですね。そういうことが起こり得たわけですから。
 
 こういう結果になって、(試合後に)私は選手たちをグラウンドで勇気づけました。すぐに頭を切り替えて、顔を上げてくれと言いました。『君たちは勝つために全力を尽くした。だから次は勝とう』と」