長谷部「もう一度、頬を叩かれた」

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[6.16 W杯アジア2次予選 日本0-0シンガポール 埼玉]

 罠も落とし穴もあった。日本はそこに自らハマっていった。

 MF長谷部誠(フランクフルト)は、試合終了後に突如降りだした大粒の雨とブーイングの嵐を全身に浴び、「ブーイングは当たり前のことだと思う」と神妙な表情。「相手の守備も良かったと思うけど、その中でもこれだけのチャンスがあって、決められなかった。それは何度も経験してきたこと。何かが最後の部分で足りないということを痛感する」と正面から重く受け止めた。

 長谷部が指摘するとおり、多くのチャンスがありながらゴールが遠いという試合は、今まで山のように経験してきたことだ。

「こういうゲームで点が取れないというのは僕らにとって初めてではない。監督にとっては初めてだったかもしれないけど、アジア杯でもそうだった。W杯予選でもあった」

 分かっていながら壁を打ち破れない。異文化からやってきた新しい監督は何度も強烈な言葉で教えを刷り込んだし、選手はそれを真摯に受け止めながらトレーニングを繰り返してきたが、革命的なことは起きなかった。親善試合ではうまくいっているかのように見えたが、いざW杯予選となると、進歩を示すことはできなかったのだ。

 いや、Jリーグ誕生後、W杯予選の初戦で勝てなかったのは初だというのだから、むしろ後退か。ブラジルW杯以後の悪い流れを破り、輝く日本代表になりたいと思って真剣に取り組んでいるからこそ、ぶつけようのない苦しさがにじむ。

 皮肉にも、ハリルホジッチ監督の大号令で世界を見据えて取り組んでいる「縦に速いサッカー」に足を引っ張られた感もあった。

「今日のような引いた相手に対しては、縦に速いサッカーというのは難しいというのは感じた。チャンスがなかったわけではないし、点が入れば違う印象になったかもしれないが、こういう引いた相手に対してどういう風にプレーしていくか。バリエーションが必要だ」

 

 W杯予選では今後もシンガポールのように引いた相手との対戦が続くことが予想される。「もう一度、頬を叩かれた」と険しい表情を浮かべた長谷部。日本は右の頬も左の頬も差し出して試練を乗り越えていくしかない。

(取材・文 矢内由美子)


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