ワールドカップ第2戦でカメルーンを2−1で下した日本は初戦から2連勝。早々に決勝トーナメント進出を決めたが、その内容は青写真通りとはいかなかった。

 後半は怒涛の攻めに合うが、苦しみながらもなんとかしのいだ

 少し驚きの布陣だった。鮫島彩(INAC神戸)の左サイドハーフへの起用は追加点を狙う起爆剤として考えられていたが、スタートからの配置。ボランチは宮間あや(湯郷ベル)と阪口夢穂(日テレ・ベレーザ)のコンビ。右サイドにはバックに近賀ゆかり、ハーフに川澄奈穂美(ともにINAC神戸)が入った。要注意人物であるトップのFWエンガナムットにマッチアップするのは岩清水梓(日テレ・ベレーザ)と熊谷紗希(オリンピック・リヨン)のセンターバック。フィットすれば新たな強みとなる布陣だ。

 スタンドには初戦に負ったケガで帰国を控えた安藤梢(フランクフルト)の姿。選手たちの想いは確かにひとつになっていた。

 その闘志は開始6分、鮫島のゴールという形で現れた。右サイドの近賀ゆかり(INAC神戸)が攻撃のスイッチを入れると、川澄奈穂美(INAC神戸)がクロスを配給、スルーしようとした大儀見優季(ヴォルフスブルク)の足に当たったボールの軌道がわずかに変わり、完全にフリーとなっていた鮫島がツメた。

「あの(ゴールエリアの)中にいればこぼれてくる」(鮫島)と狙い通りのゴールだった。もともと攻撃意識の高い鮫島。今シーズンはその動きがゴール前へと中央寄りに幅が広がっていたからこそ取れたポジショニングと読みは完璧だった。

 続く17分には、ショートコーナーから宮間あや(湯郷ベル)のクロスに角度のないところから安藤の代わりにスタメンを任された菅澤優衣香(ジェフL)が頭で押し込んで追加点。34分には右サイドで川澄、菅澤、近賀と小気味よくパスをつないで、最後は宮間がDF裏へ、タテパスを送る。走り込んだ大儀見は惜しくも一歩及ばなかったが、足元につけばゴールを描けた攻撃だった。と、ここまでは日本の理想とそう違わぬものだった。しかし、ここから異なる展開へと向かっていく。

 カメルーンが特に難しいことをしてきた訳ではない。けれど、日本のパスミスをすかさず拾い、タテへ転じる徹底したカウンターは、カメルーン持ち前のフィジカルを際立たせるものだった。日本陣営は、攻め入ってくるカメルーン攻撃陣に次第に追い詰められていく。特に後半に至っては、日本は自陣からほとんど出ることが出来なくなり、終了間際にカウンターから失点を喫してしまった。

 90分のうちには、自分たちのペースで運ぶことができない時間帯が必ずやってくる。そこをどう乗り切るかが課題だった。シンプルに跳ね返すのか、タッチラインを割るのか――初戦のスイス戦でもイメージは固めたはずだったが、実際には、第2戦のピッチ上で、そうした試みは少なかった。

「初戦よりもできた部分はあったけど、危ないシーンも多かった。(危ないところまで)持ってこさせない守備も必要」と振り返るは熊谷。

 試合終了後は勝利の喜びではなく、即刻最終ラインが集まってのピッチミーティングが行なわれていたことからも、守備陣の必死な調整を感じ取ることができる。

 互いのズレが生じる理由のひとつには現在取り組んでいるポジションチェンジがある。

 後半に入ったところで佐々木則夫監督はボランチの宮間を左サイドハーフへ、左サイドバックの宇津木瑠美(モンペリエ)をボランチに、左サイドハーフ鮫島を左サイドバックへ変更し、55分には右サイドハーフの川澄に代えて大野忍(INAC神戸)を、64分には阪口を下げて澤穂希(INAC神戸)を投入した。

 試合中に中盤、サイドバックを同時に大きく変更するには少なからずリスクが伴う。互いの間合い、カバーリングのタイミングを再度なじませる時間がどうしても必要だ。その間が最も危険な時間帯となる。カメルーンのようにスピードのあるチームに対してはなおのこと難しい。ズレればピンチになるが、ハマれば相手を翻弄できる。今はまだ体得していると言える状況にはないが、どこまで完成度を上げていけるかで、なでしこジャパンはまだまだ"化ける"可能性は十分にある。

 マズイことばかりではない。スイス戦ではエースのバッハマンに一枚一枚DFが剥がされるという屈辱的な突破を許していたが、カメルーン戦では、ここぞというときには少なくとも3枚、多いときには4枚が同時に囲い込むという、同じビジョンを同じタイミングで描けるようにはなっていた。

 全体的に走力を上げて、終始、数的優位な状況を作る動きも功を奏していた。もちろん、対戦相手の実力差も踏まえればこれを即課題克服と結びつけるのは安易だが、同時に複数人が反応し、囲い込める守備が出始めれば、なでしこの調子が上がってきている証拠。すり合わさってきていることは確かだ。

 そしてもうひとつ気になるのがシュート数の差。前半立ち上がりに猛攻を見せたものの、日本のシュート数はわずかに4本と、寂しい。そのうち2本を得点につなげているのは、確実性から見れば高い数字かもしれないが、あまりにも少ない。乱発を促すわけではないが、シュートを打たねばゴールは決まらない。カメルーンが後半に放ったシュートは20本。打たれ過ぎだ。強引さはあるもののそのうちの何本かは精度のマズさに救われただけで、確実に仕留められたタイミングだった。

 時間帯、展開によって攻守のバランスを変えるのは当然のこと。そこに今、なでしこは複数のポジションチェンジを最低限のメンバー変更でこなす、高度な戦術が加わっている。これをこなすことができれば相手にとって脅威になることは間違いない。今は徹底的にポジション感を体に叩き込み、そのときどきのコンビネーションを積み上げていかなければならない。それも早急に。

 次なる相手は、各チームに大量失点を食らっている格下のエクアドルだ。これまでの佐々木監督の戦い方から見れば、控えの選手の引き上げを狙ってターンオーバーという道も思い浮かぶ。だが今チームに必要なのは"実戦"での積み上げに他ならない。1位通過になれば中6日空く。フィジカル的なターンオーバーは特に必要ない状況にある。今なお控え選手のメンタルと経験の引き上げにこだわるのか、いくつか可能性が生まれた脅威となるフォーメーションの完成度を上げる手を打つのか、指揮官の判断に注目したい。

早草紀子●取材・文 text by Hayakusa Noriko