昨年離婚した清原亜希・和博両氏(左・『清原亜希 MY STYLE』集英社/右・『男道』幻冬舎)

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〈お弁当がつなぐ家族の物語〉──そんな謳い文句を掲げた『お弁当が知ってる家族のおはなし』(集英社)なる本が、先日発売された。著者は清原亜希氏。昨年、薬物疑惑がもち上がり、いまではすっかり姿を見なくなってしまった元プロ野球選手・清原和博氏の元妻だ。

 亜希氏といえば、結婚前にはおニャン子クラブ加入以前の工藤静香とともに「セブンティーンクラブ」として歌手デビューした経歴の持ち主だが、現在では美貌と抜群のスタイルを活かしてアラフォー既婚女性をターゲットにした「marisol」(集英社)などで活躍するモデルに。着飾らないカジュアルなリアルクローズが40代を中心に支持されているようだが、今回発売されたのは、私服紹介本でも告白本でもなく、まさかの弁当本。

 そうなると、和博氏の薬物騒動で自身にも付いてしまったダークなイメージを打ち消すための、オシャレな子育て料理本でも出版するのか──と思いきや、その中身は現役モデルとは思えない「母ちゃん」を前面に押し出した構成だった。

 たとえば、長男も次男も弁当で好きなおかずは「ソースカツ」。ソースカツ丼は亜希氏の故郷である福井県のご当地グルメだが、次男の名前にも「勝」の文字が入っているため「ここぞという日のお弁当」にはカツを入れる。そして、「カツ、このカツを食べて勝つんだよ!」と檄を飛ばすのだと亜希氏は言う。

 このあまりのベタな験担ぎには野球選手だった和博氏の存在がちらつくが、だが、亜希氏は父が家からいなくなった息子を懸命にフォローする。長男の野球の試合の日、弁当に詰めたおかずは「焼肉のたれでしっかり味つけをした牛肉とえのきの炒め物」。しかし、試合前に食していると長男が「やべ! えのきが挟まって取れない!」と大騒ぎ。そのとき亜希氏の頭に浮かんだのは「アントニオエノキ」という言葉だったという。だから何なんだと言いたくなるが、このとき亜希氏は「えのきとイノキって似てない?」と長男に話し、「それ挟まったまま試合に出たらすっごいホームラン打てちゃうかもよ!」と謎の激励。しかも長男は「見事に大きなホームランを打ったのです!」という。

「スポーツって技術だけじゃないいろんな力が加わって結果につながると思います。ときには暗示が役に立つことだってあるはず! それを信じられるって最高!」

 亜希氏のスポーツ哲学は、きっと現役選手に寄り添いつづけたからこそのものだと思うが、いまではそれを息子たちに伝える役目を担っているのだろう。そう、たったひとりの「母ちゃん」として。

 そもそも、亜希氏が弁当にこだわる理由というのが、彼女の母親にあるという。母親は13年前にガンで他界しているが、「何年も使い続けているしわくちゃのエプロンをつけ、台所に立つ丸くて小さい母の背中」だと振り返る。だから、息子が弁当ではなく友だちと一緒にコンビニで買うと言ったときには、息子の気持ちを汲み取りつつも、こう語る。

「でもね、ママはママのお弁当であなたに大きくなってもらいたいと思ってる。そのお弁当を力にしてホームランを打ってほしい! それに私はお母さんのお弁当が食べたくても、お母さんが亡くなったいまではもう食べられないんだよ」

 そう話すと、涙を流し始めたという息子。亜希氏は「いつまでも食べられると思うなよ、母ちゃん弁当! まだまだコンビニには負けないぞ!」と文章を締めている。

 亜希氏に2本立て続けで撮影の仕事が入っていた日には「今日はオレらで晩ご飯作っておこうか」と長男が自ら提案したり、次男もお品書き付きの夕食を用意したり。この弁当本を読んでいると、母ちゃんと息子たちの生活は順調に進んでいることがわかる。そうなると、ついつい頭に思い浮かべてしまうのは、昨年離婚した和博氏の現状だ。

 和博氏はいまでも家族、とりわけ2人の息子に未練タラタラで、今年のはじめに「アサヒ芸能」(徳間書店)でテリー伊藤氏と対談を行った際には、洗濯物を溜め込みすぎて乾燥機を壊してしまったことや、食事は行きつけの韓国料理店かコンビニかだと話し、侘びしい生活を吐露。いまは「後悔」しかないと言うと、その理由をこんなふうに語っている。

「息子からの手紙に「野球を教えてください」って書いてあるんですよ。そんな手紙、一緒に生活している時はそんなに心に入ってこなくて、夜、銀座に出たり、飲みに出たりとかしていましたけど......息子たちがいなくなって初めて、彼らの思いがすごく伝わってきたんですね......(声を震わせ目に涙がたまる)」

 一時は自殺も考えたと言う和博氏だが、それを思いとどまったのも息子たちの存在があったから。和博氏は「息子たちが野球をしている姿を見て、もうちょっとその成長を見ていたいという気持ちが湧いてきたんです」(同前)と語っている。

 他方、元妻は息子を養うために必死だ。この弁当本では、タッパーウェアにそうめんとつゆを入れただけのものやカレー丼など、手抜きと言われそうな弁当も登場する。でも、亜希氏は「楽をすることばかり考えているわけではないけど、それくらいの気持ちの余裕みたいなものを持ちつつお弁当に向かった方が、作る方も食べる方も楽かもしれない」と綴る。大事なのは「親子のコミュニケーション」「しっかりした信頼関係」。シングルマザーにとっては、大いに共感できる内容になっているのではないだろうか。

 一部報道によると、亜希氏自身もギャンブル依存症の父と別れた母が女手ひとつで亜希氏と兄を育てたという。母の苦労を見てきたであろう亜希氏がいま、「小さい母の背中」を思い出し、母の弁当を受け継ごうとするのは、苦労を引き受ける強い覚悟の表れなのかもしれない。

 亜希氏の弁当本に溢れる、母ちゃんのたくましさ。一方、和博氏のほうは対照的にすっかり「番長」「夜の帝王」の面影も失い、お遍路巡りをはじめたという。それぞれのやり方で、それぞれに幸せをつかみ直してほしいものだ。
(大方 草)