話をピロリ菌に戻そう。
 そもそもピロリ菌とはどんなものなのか。大きさは4ミクロン(4/1000ミリ)で、右巻きにねじれた形状をしている。一方の端には「べん毛」と呼ばれる細長いシッポ状のものが4〜8本付き、回りしながら活発に動くことができる。
 ピロリ菌は胃の粘膜に生息している悪い菌で、主に胃や十二指腸などの病気の原因となる。一度感染すると、多くの場合、除菌しない限り胃の中に棲み続け、感染すると炎症が起きる。ただ、この時点では症状のない人がほとんどで、胃潰瘍では7割、十二指腸潰瘍や慢性胃炎、胃がんではほとんどの原因がピロリ菌とされ、感染者で症状が出るのは、全体の30%程度といわれている。

 成人になってから感染すると、激しい胃腸障害が起き、さらに菌の感染が続くと感染範囲が“胃の出口”から“胃の入り口”に向かって広がり、慢性胃炎や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、萎縮性胃炎、胃がん、さらには全身的な病気を起こす。
 東京都多摩総合医療センター循環器科の担当医はこう説明する。
 「胃がん予防に関して言えば、胃にピロリ菌がいること自体が問題です。胃の不調で受診した時にはすでに“進行がん”の場合もある。症状が出るまで除菌をせずにいることは非常に危険です。ある調査では、昭和30年以前に生まれた世代の80%が感染の疑いが強いという結果が出ています」

 胃の中には、食べ物の消化を助け、食べ物の腐敗を防ぐために胃液が分泌されている。胃液には鉄をも溶かす強い酸(塩酸)が含まれているため、胃の中は強い酸性に覆われ、通常の菌は生息できない環境にある。それなのになぜ、ピロリ菌は胃の中で生息できるのか。
 「その秘密は、ピロリ菌が出している“ウレアーゼ”という酵素にあります。この酵素は、胃の中の尿素を分解してアンモニアを作り出す。アンモニアはアルカリ性なので、ピロリ菌の周りが中和され、胃の中でも生き延びることができるわけです。また、ピロリ菌はべん毛をスクリューのように回転させて自由自在に移動することができるため、酸の弱そうなところを探し回る。その際、べん毛はセンサーの役目も果たしています」(前出・専門医)

 胃潰瘍、胃炎などの“震源地”とされるピロリ菌。その有無を調べる検査には内視鏡、血液検査、便検査などがあるが、“尿素呼気試験”の精度が一番高いといわれる。検査薬を服用して20分後に専用の袋に息を吐き、機器にかければすぐ判定できる。不安のある人は医療機関で相談の上、検査を薦めたい。
 胃腸系クリニックの篠原伸顕医師はこう提言する。
 「なかなかピロリ菌の除菌に行けない人は、食事で胃潰瘍を予防しましょう。『LG21』というヨーグルトに使われている乳酸菌は、ピロリ菌を減らす効果が認められ、また、ブロッコリーに含まれているスルフォラファンと言う成分は、ピロリ菌を抑え込む効果があるのです。さらにキャベツに含まれるビタミンUには、胃酸を抑える働きがあります」

 突如の吐血で苦しい思いをしたくなければ、ピロリ菌の除去治療も試みてはどうだろうか。