FIFA理事就任の田嶋幸三氏が語るFIFA問題と日本サッカーの将来…対談要旨

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 毎週土曜日、朝5時(関東ローカル)からフジテレビで一週間に放送された番組やテレビの放送について、フジテレビ自身が批評する番組『新・週刊フジテレビ批評』。13日、同番組に日本サッカー協会副会長であり、FIFA理事に就任した田嶋幸三氏が生出演した。

 FIFA理事就任後、初のテレビ生出演となった田嶋氏は、「FIFAの今、日本サッカーの将来」というテーマで編集者・ライターの速水健朗氏と対談。「男女日本代表の現状」、「FIFAの内情と今後の展開」、「W杯の日本単独開催への道」の3つの視点から語った。以下、対談の要旨。

<男女日本代表の現状>

――FIFA女子ワールドカップ・カナダ2015が開幕して、先日は男子のイラク戦もありました。まず率直にこの2試合の結果をどう受け止めましたか?

「なでしこのスイス戦は、この4年間経験を積んでいるなと。選手のみならず佐々木則夫監督の采配も、非常に先を見据えた采配をしているとすごく感じました。川澄(奈穂美)選手や何人かの選手を温存しつつ、どんどん選手を試している。彼のターゲットというのは予選突破ではなく、次の準々決勝、準決勝、決勝へ繋がるようなことをイメージしている。これはやはりチャンピオンとしての自信から生まれていると思います。そして選手たちが1−0の試合をものにできるというところ。これはこの大会に限ったことではなくて、アジア・チャンピオンになった試合でもそれをやってきましたから、実力がついているなとすごく感じています」

――一方の男子はいかがでしょう?

「もちろんアジアカップでの敗戦があったりして、(ヴァイッド・)ハリルホジッチ監督に代わったわけですけど。非常に雰囲気が変わり、イラク戦のスピーディーなパス回し、ゴールへ持ち込む動きという、本来日本が目指していたものを彼が今、具現化しようとしてくれている。もちろんまだフレンドリーマッチですから、来週行なわれるシンガポール戦からワールドカップの予選が始まります。この辺からがもっともっと楽しみで素晴らしい試合になるのを期待しています」

――大変な時期にFIFA理事に就任されましたが?

「(元 FIFA理事の)小倉純二名誉会長の後4年間空いて、その間私は選挙で敗れてしまったんです。小倉さんの後を継ぐかたちでこの4年間選挙活動をして、そのポジションを得られたというのは、私の力というよりは日本サッカーの歴史や、今の実力が後押ししてくれたのは間違いないと思います」

――2011年女子W杯で日本が優勝したのがもう4年前。「もう夢は叶ったし』と思ったんですけど、やっぱり4年経ってみるとまた優勝して欲しいなと思ってしまいます。

「これは女子、男子に限らず、例えばブラジルは常に優勝を重ねて、ドイツはすでに4回優勝したというように、強ければ強いなりに目指すところはまた違ってくると思います」

――世代交代に関して、女子は若い選手で出場するかと思ったら、2011年のお馴染みのメンバーだったと思うのですが?

「大会となると、その大会で勝つことが1番の目的であり、そのためにどの選手を連れて行くのがいいのかという選考は監督に任せています。今回を見ると、日本よりも平均年齢が高いのがアメリカなんです。アメリカはロンドン・オリンピックで金メダルを取りました。日本は銀メダルで、2011年のW杯では優勝した。非常に両チームとも成績が良い中で、選手をどんどん代えていくのはもちろんしなければならないことですが、監督にとって非常に難しいことだと思っています」

――結果が出ているチームほどメンバーを固定している?

「そうですね。代えづらいということですね。ただその中で育っていないかというと、U−17は世界チャンピオンになりました。U−21は残念ながら世界大会に出ていませんけど、良い選手は育っていますし、次のなでしこジャパンに入っても遜色のない選手たちはいます。もちろん、もうワンランク上がらなければならないですけど、決して育っていないわけではありません」

――男子はハビエル・アギーレ氏からハリルホジッチ監督に代わりました。どういう変化がありますか?

「私自身も何度かお会いしました。彼のパーソナリティ、サッカーに取り組む真剣さや練習のときの緊張感、練習のみならず協会にいらっしゃるときの周りの緊張感というのは非常に今までとは違うと感じています」

――目でみただけでも分かりますね。今までが緩かったわけではないんでしょうけど、ピリピリしている感じがしますね。

「そうですね。このピリピリ感というのはW杯の予選や本大会で勝っていくために絶対必要だと思います。でも、そういうことだけでもコントロールすることはできないんです。それにプラスして、非常に分かりやすい戦術であったり、『これをやったら勝てるぞ』と選手たちが思うようなものを与えてくださるので、選手たちが一生懸命ついていこうと思うわけです。そういう意味では変に上から権力だけでやっているわけではないので、非常に面白いサッカーになると思います。実際、本当にボールがスムーズに動くようになっていますし、人もどんどん走って動くという今のサッカーに合ったかたちになっているので楽しみです。

――攻撃のときに追い抜いていく選手が多くて、新しいサッカーという感じがしますよね。

「そうですね。ただチャンピオンズリーグの準決勝、決勝を見るとそういう試合が行われているので、世界標準に近くなっていると言っていいと思います」

――監督の人柄はどうですか?

「本当に優しい面もありますし、スタッフたちもついていっている。単純に恐いだけだとか、それだけなら誰もついていきませんから」

――日常的に協会に足を運んでいるようですが?

「これまでも協会で仕事をする監督がいたことは事実ですけれど、それ以上に頻繁に来られていますね。良いことだと思います」

――男子のサッカーで不安な点はありますか?

「まず今のメンバーで言えば、本田(圭佑)選手や長友(佑都)、長谷部(誠)選手などを中心にヨーロッパでプレーしていて、非常に個のレベルは間違いなくこの数年よりも上がってきている。そこに素晴らしい環境を加えて、良い指導をして、みんなが共同して動くことになれば、間違いなく良いチームになってくれる。今は、そういうワクワク感を持てるチームだと思っています」

――不安はないということですか?

「ないとは言いませんけども(笑)。若い選手をもっともっと僕らが育てなければいけないという点に関してはまだまだだと思いますが、今の代表に関して言うと楽しみです」

――田嶋さんは非常に若手の育成に力を入れていますが、そこにはまだ問題があるのではないでしょうか?

「そうですね。結果としてU−20の予選がなかなか突破できていないこと。そして、U−17も今回敗れてしまったことというのは、我々がしっかりと考えてそれを改善していかなければならないと思っています。しかし、世界大会に出て、若いときに経験した選手たちというのは今後の“伸びしろ”みたいなものがかなり増してくると我々は考えています」

――U−20は7大会連続で出場を果たしていたのですが、2009年大会以降は4大会連続でアジアの壁を破れずに敗退が続いています。問題があるのではないでしょうか?

「これは技術委員会のほうでしっかりと分析していくべきだと思いますし、もちろんU−20の重要性みたいものを我々がもっと意識して伝えていかなければいけない部分はあると思います」

――ヨーロッパに比べると、環境面で日本の育成面は劣っているのでしょうか?

「Jリーグも非常に一生懸命育成をやって、アカデミーを中心にやってくれていますけどまだ20年。ヨーロッパは100年以上の歴史の中、そしてかける予算も全く違いますから、これからそこを改善していかなければいけない。今までの20年の蓄積は無駄ではなかったと思いますから、それを元にしっかりとやっていくべきだと思います」

――田嶋さんは26歳で現役を引退されて、その後再びドイツに渡り指導者の道へ?

「残念ながらその頃はプロというものがなかったので、その後どうするかというときに自分は指導者になりたいという気持ちがすごく強くて、その勉強に行きました。ただ、代表には入っていたんですけど、選考で落ちるようになるとそこで急にモチベーションも落ちてしまって、プロがない中で次のステップは指導者だと思い、勉強をすることにしました」

<FIFAの内情と今後の展開>

 FIFAは6つの大陸の連盟から構成されており、各連盟から理事と副会長が選任され計25人の理事会メンバーで成り立っている。そしてアジア連盟の4人の中に、田嶋さんが新たに理事として就任された。

――FIFAを巡る問題は世界的に話題になっていますが、収束したのか、これからもどんどん逮捕者が出てくるのか。FIFAの現状はどうなっているのでしょう?

「残念なニュースばかり出ているのは、我々サッカー界自身が、自分たちでこれから事情を正常化していかなければならないんですけど、こういうお金にまつわる話が決してなかったわけではないのは事実です。それがどんどん今のように出始めたというのは、悪いことではないと思っています。逆に言うとうみを出し尽くすためのスタートだと思っていますし、実際私が2011年にAFC(アジアサッカー連盟)の中で、評価委員会の委員長を任され、その中で様々な監査をしたときに、残念ながらアジアの中にもそういうことがありました。前会長やその他FIFA理事、そしてAFCの理事の方数名の方が永久追放だったり、何年間の活動停止というような状況になってしまった。そこがスタートになり今に繋がっていることだと思います」

――今後、まだ出てくる可能性はありますか?

「決して噂だけで悪いことをしていると決めつけるわけにはいきません。しっかりと証拠などが出てこない限りそれは言えませんが、噂のある方がいるのもまた事実です」

――FIFAはすごく大きなお金が動いていて、そこに色々な利権が生まれていると思います。テレビの放映権料も上がっているという話は毎大会されていて、90年代までの額と桁違いになっていますが?

「まず90年代はジョアン・アヴェランジェ会長が就任されて、世界中にサッカーを発展させていこうと掲げ、どちらかというと地上波で絶対に誰でも見られるような環境に安い放映権で提供してサッカーの発展に貢献されたんです。その後、サッカーだけではなく放映権ビジネスが上がってきたことによって、今はFIFAの予算のほとんどが放映権の収入です。他には様々なスポンサー収入もあるわけですが、放映権収入が1番メインです」

――そういった利権が生まれて、汚職の温床になっているのではないですか?

「今回のケースでもまさにそうですね。ただ、今回逮捕されている方々はFIFAの放映権ではなく南米や北中海協会の大会に関する賄賂だったと思うんですよね」

――サッカーの本場はヨーロッパですけど、ゼップ・ブラッター会長がアメリカ大陸やアフリカ、アジアなどサッカーでいう第三世界に向けて広げていた中で、南米の理事が逮捕されたりしていますが?

「一概に、我々が日本人やアメリカの基準で監査をしている国々が思うほど世界中で徹底されているわけではありません。『なぜ、紹介してあげたのに自分が何かをもらうのが悪いのか』など、そういう感覚があるのは事実です。ただ、実際にFIFAの理事ではない方であればコンサルティング費用のようにもらうのは当然のかたちなわけです。それがFIFAの理事や、そういうポジションを利用してやるとそれは罪になる。それはみなさんご存知のはずなんですけど、ほとんどの方が自分でビジネスをされている。私は日本サッカー協会からお金をいただいて働いているわけですけど、そうでない方がほとんどです。王族の方であったり、政治家であったり、ビジネスマンの方がほとんどです。そういう方たちにとってみれば、それが日頃のビジネス活動という認識をお持ちで、その境目が非常に分かりづらくなっているのも事実かもしれません」

――FIFAの臨時理事会が7月20日に開かれるという報道がされていますが、そこで新しい会長が決まるのでしょうか?

「会長は投票でしか決められないんです。なので、7月20日の理事会で投票をいつにするか、どういう方法でやるか、場所をどこにするかなどを決定します」

――今回、ブラッター会長は再選してから辞意を表明しました。日本はブラッター会長の周囲に賄賂などの疑惑が出てきていることが分かっていながらも支持しましたよね? この理由を教えてください。

「前提として、噂で決めることはできないと思っています。例えば、選挙の2日前に南米や北中海協会の方が実は逮捕されたり連行されたりしたわけですけど、その時点でブラッター会長に何か容疑がかかったりだとか、証拠が出たわけではない。まずはっきり起訴されたとか、そういうことがない方を疑うだとか、何か悪いことをしているのではないかと決めつけることは、私の立場としてできないと思います。加えて、AFCとしてはブラッター会長を推していこうじゃないかという決議があったのも事実。ただ、もちろん投票については大仁(邦彌)会長に一任いたしました」

――ブラッター会長は日本に対して好意的な立場で、どちらかというとUEFA(欧州サッカー連盟)と対立する構図になっていたかと思います。今後、日本サッカー協会としてFIFA内での立ち位置が難しくなったりすることはないでしょうか?

「今の状況で言えば、日本こそが正常化に貢献できる国だと思っていますし、自分自身がそういうことをマニフェストに掲げて当選してきたのも事実ですし、それに関してはもっともっと入りこんでいかなければいけないと思います。この時期に政治的にUEFAがどこだというかたちで言っている場合じゃないと思っています。本当にこれを正常化できる方が会長に立候補し、その方をしっかりと押していくっていうのが我々の責任だと思っています」

――田嶋さんはこれまで様々な贈収賄などを追求する立場であったこともあり、次点に10票の差をつけて圧勝してFIFA理事に当選されたわけです。今後、今まであったような汚職体制に切り込んでいくような立場になると思うのですが?

「自分もそのことを意識してFIFAの理事に立候補しました。ありがたいことに今の賄賂や不正に対して反対を押してくれる方の割合がアジアの中でも世界の中でもどんどん増えていっています。だから私が勝つことができたのかもしれません」

――実際にそういう活動をされているときは捜査機関、もしくはFBIとやり取りはされたのですか?

「2018年、2022年W杯の件でそういう調査が入ったのは事実です。これは小倉会長や当時の組織委員会の委員長、私のところにもインタビューがきました」

――その他、FIFAの理事としてやり遂げたいことはありますか?

「3つあるんですけど、一つは今申し上げた正常化したり透明性のあるものにしていかなければいけないということ。それから、やはりサッカーの発展です。自分はアジアからの選出ですから、アジア全体のサッカーのレベルを上げていくこと。これは世界中のレベルを上げることに繋がりますよね。三つ目に、残念ながら特にアジアでは多いんですけれど、紛争地帯が多くてシリアやイラク、アフガニスタンなど、そういうところで本当に子どもたちが笑顔でサッカーができない環境があります。そういうところこそ、子どもたちにサッカーをできる環境を作ってあげることが大事。我々サッカー界が紛争を解決することはなかなかできないので、サッカーの力を持ってして、そういうところでサッカーをやるチャンスを作れるように力を出していければいいなと思っています」

<W杯の日本単独開催への道>

――一方で、FIFAの理事に日本人がいることは非常に重要なことだと思います。今後、W杯の単独開催は悲願だと思いますが、その辺はいかがですか?

「それに関しては、(男子W杯は)2026年大会までアジアから手を挙げることができません。2030年大会からアジアが手を挙げることができます。そういう中で、やはりベースとして今日本のインフラ、スタジアム等も整備されつつあります。そういうものが上手くできれば、十分単独開催はできるのではないかと思います」

――2018年、2022年のロシア、カタール大会は開催される課程で黒い部分があるのであれば、開催中止や撤退にもあり得るという話しになっていますが?

「あまり課程の話に触れるつもりは全くなくて、2022年のカタールはもうやることが決定している。それは今も全く変わらないことで、今そこに取って代わるっていうことを私の立場で申し上げることはできません。ただ可能性としては2030年、それ以降に日本としては手を挙げる意識はあるってことは今、申し上げられる」

――女子のW杯についてはいかがでしょう?

「女子については、すでに日本サッカー協会の理事会で2023年にやりたいということは決めていますので、それはぜひ勝ち取りたいと思っています」

――それは正式に日本が開催を目指すと言っていいのでしょうか?

「もう言っています。次の2019年フランスがもう決まっています。その大会の前には決まるのではないかと言われています」

――2020年に東京オリンピックが開催されます。新国立競技場の問題が屋根の問題など色々紛糾しています。その中で、8万人の観客数ってことに関しても疑問や見直しの声が出ていますが、どのようにお考えですか?

「男子W杯の開催の条件が、開幕戦、そして決勝は収容人数8万人という基準がありますから、そこを満たすものがなければ手を挙げても取ることができない」

――そこに関しては、サッカー協会からもリクエストをしたということですか?

「それは我々の理事会でもそれをお願いしたいとの要求を出してもらいました」

――そもそも招致活動の時点でそういう約束があったということでしょうか?

「そうですね。ぜひしっかりとした開閉式の屋根、8万人収容、そして可動式の席はやっていただきたいと思います」

――W杯単独開催の他にも実現したいことはありますでしょうか?

「2021年は日本サッカー協会の創立100周年なんですよ。そういう中で、やっとW杯に5大会連続で出られるようになったりして、ある意味世界のみなさんへのお礼、恩返しをしたい。そして東日本大震災から10年目になります。多くの方から援助やサポートをいただいたそのお礼も含めて、2021年に日本でコングレスを開ければと思っています」

――コングレスとはどういうものでしょう?

「今回、チューリッヒのコングレスでブラッター会長の投票が行なわれたわけですけど、209のFIFAに加盟するサッカー協会がすべて集まり、そこで様々な意思決定をするコングレスを開き、多くの方が注目する内容になっています」

――FIFAの加盟国は国連の加盟国よりも多いんですね。

「そうですね。国だけじゃないところもありますから」

――テレビとともに歩んでいくという意味でも重要になってくると思います。

「多くの方にサッカーを見ていただきたいですし、楽しんでいただきたい。その魅力があるスポーツだと思っています。