10人に1人が罹るといわれるほど、ありふれた病の胃潰瘍。周囲でも患った人が多いのではないだろうか。この病は、胃壁を保護している粘膜などの“防御因子”と、食べ物を消化する胃酸などの“攻撃因子”のバランスが崩れ、胃酸によって胃の粘膜が深くえぐられてしまい、痛みや不快感、吐血や血便といった症状が現れる。
 日本消化器病学会専門医の福田達哉医師は言う。
 「胃潰瘍を軽く見てしまう傾向があるようですが、それは間違い。かつては多くの人が命を落としてきた病気で、今でも自宅で血を吐いたまま亡くなっていたというケースもあります。胃壁が深く傷つけられ太い血管が切れてしまうと、大量の血が噴水のように噴き出し、出血性ショックによって昏倒して、そのまま死亡してしまう。高齢者になると痛みを感じにくくなるため、症状がそれほど出ていないのに、突然大量の血を吐く例もあるので注意が必要です」

 総合病院には、ほぼ毎日、胃潰瘍による吐血で患者が運ばれてくるという。搬送された患者は、直ちに胃の中の切れた血管を止める内視鏡的手術を行う。その際、大量の血を浴びるため、医師は防護服のような手術着を着たうえ、ゴーグルをかけて処置にあたるほどだ。
 術後は1〜2週間の入院を必要とし、潰瘍が塞がるまでは食事もできない。

 胃潰瘍になる原因は、大きく分けて二つある。それは「ヘリコバクター・ピロリ菌」によるものと、薬剤によるもの。
 ピロリ菌に感染していると、慢性胃炎を起こしている状態が続き、ちょっとしたストレスを受けただけで潰瘍ができてしまう。
 「それはなぜか。ストレスがかかると、胃酸を分泌するホルモンが増えることに加え、胃の血流が減り、胃壁を保護する粘液も減ってしまいます。つまり、攻撃因子が強まるうえに防御因子が減ってしまうので、潰瘍ができてしまうのです。ただ、ストレスだけで潰瘍になるケースは非常にまれで、主因のピロリ菌を除菌すれば防げて簡単に潰瘍にはなりません」(前出の福田医師)

 胃潰瘍のもう一つの要因とされる薬剤の影響だが、これはピロリ菌に感染していなくても、痛み止めや“血液をサラサラにする薬”、風邪薬などが原因で、胃潰瘍になるケースだ。
 「動脈硬化などで血をサラサラにする薬(バイアスピリン、幼児用バファリンなどの低用量アスピリン製剤)を飲んでいる人、慢性的な腰痛、頭痛、関節痛などで痛め止めの薬(NSAIDS=非ステロイド性鎮痛薬)を常用している人は気を付けましょう。これらの薬は、胃の粘膜を保護するプロスタグランジンというホルモンを抑制するため、潰瘍ができやすい状態になるからです」(専門医)