モナコGPでジェンソン・バトンが8位入賞し待望の今シーズン初ポイントを獲得したマクラーレン・ホンダだが…

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F1今季第6戦、モナコGPでジェンソン・バトンが8位入賞。マクラーレン・ホンダが待望の今シーズン初ポイントを獲得! この勢いに乗って優勝争いの一角へ…と言いたいところだが、まだまだ道のりは遠いというのが現実のようだ。

「家の近所」からモナコGPを観戦したという元F1ドライバーで、週プレF1解説委員のタキ・イノウエこと井上隆智穂(たかちほ)氏が、こう手厳しく評する。

「自分は、今年もシャンパン片手にスタート・フィニッシュラインが目の前に見えるバルコニーから観戦しました(汗)。マクラーレン・ホンダはよほどポイントが欲しかったのでしょう。バトンもアロンソもかなりコンサバな走りをしているように見えました。

レース自体も、終盤にトップを独走するメルセデスのルイス・ハミルトンが、チームの信じられない判断ミスで無用なタイヤ交換を行ない、優勝を逃してしまったというドタバタ劇、そのきっかけとなった17歳の“F1暴走族”、トロロッソのマックス・フェルスタッペンの“オカマ掘りクラッシュ”(66周目にロータスのロマン・グロージャンのリアに激突)を除けば、スローペースで退屈なレースでした。バトンの入賞も、あの遅いペースのおかげだと思いますね。

余談ですが、今年初めてF1を生で観戦したら、エンジンの排気音が相変わらずひどい音で悲しかったですね。特にひどいのがホンダで、アレは『ブタがいびきをかいているような音?』とでもいうのでしょうか? それに比べるとメルセデスは『ブタが叫び声を上げているような音』ですかね(汗)。

まあ、寝ているブタと起きているブタ、どちらもブタには違いないわけですが、僕の住むモナコでブタが街中を走り回っているというのは、やはり興ざめですからなんとかしていただきたいですね(汗)」

…ホンダのエンジン音が本当に「ブタのいびき」に似ているかどうかはともかく(実際に聞いてみるといい音とは言い難いが)、肝心なのは音じゃなくてエンジンの「性能」だ。

新興チームのBARと組んでエンジンサプライヤーとしてF1に参戦し、その後「ホンダF1」というワークスチーム体制で戦ったものの、一度としてトップレベルの戦闘力を発揮できずに撤退を強いられた「第3期ホンダF1」(2000年から08年)と違って、第4期である今回は初年度からマクラーレンというトップチームとのジョイント参戦の形をとっている。

さらに、アロンソとバトンという最高のドライバーズラインアップをそろえて、ホンダ自ら「1年目からメルセデスと対等に戦い、優勝争いに加われる自信がある」と大風呂敷を広げてしまった以上、たとえ「1年目」は無理だとしても、いずれはその目標を実現しないわけにはいかないだろう。

しかし、ボロボロの開幕スタート後も、新井康久F1プロジェクト総責任者をはじめとしたホンダ関係者は「近い将来、メルセデスと対等に…」「夏頃には表彰台に上がりたい」など、威勢はいいけど根拠のない公式見解を繰り返してばかりだった。

6戦目で初めてのポイント獲得という、現時点での上位陣との差を見る限り、「近い将来」にそれが実現するとは到底考えにくい。

ホンダは、どうせならたとえ地味でもいいから、もっとリアリスティックな目標を示してはどうか? そのほうが応援するほうも変にガッカリしなくて済むので助かるんだけどなぁ…。

ブリヂストンでF1タイヤ開発の責任者を務め、撤退後はフェラーリF1の一員として昨シーズンまで活躍した浜島裕英(ひろひで)氏も次のように話す。

「現実的に考えて、今シーズン中にメルセデス、フェラーリ、ウイリアムズに追いつくのは難しいでしょう。まずは、モナコ以外の一般的なサーキットでも8位、9位あたりをコンスタントに狙えるようになる…というのが、今季のマクラーレン・ホンダにとってはひとつの目標じゃないかと思います」

かなり「地味」な目標ではあるが、実際にはそれを実現するのだって簡単じゃないだろう。でも、そういう戦いをコツコツと続けていく以外に勝利への道は開かれないはずだ。バトンはレース後に次のようにも語っていた。

「毎戦進歩しているが、ポイントを取れば、周りにもそれがわかってもらえる。僕らのチームのスタッフは世界一優秀だけど、それでも時間はかかるものだ。この調子で前に進み、もっといい結果が出せるようになりたいね」

うーん、ドライバーはちゃんとわかってますな。

というワケで、ようやく初ポイントを獲得したマクラーレン・ホンダだが過度の期待は禁物! モナコでのポイント獲得は決して「まぐれ」でも「偶然」でもないけれど、「優勝争いの一角」なんて、今はまだ夢のまた夢……。マクラーレン・ホンダを応援するなら、新井氏らホンダ関係者の言葉はスルーして、「地味に気長に温かく見守る」という姿勢が正解かも。

ちなみに、その後の第7戦カナダGPでは今年二度目のWリタイアでしたーー。

(取材・文・撮影[タキ・イノウエ]/川喜田 研 撮影/桜井淳雄)