原口らしいドリブル突破から、鮮やかに代表初ゴールをゲット。監督の起用に応えた。 写真:田中研治

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 66分、日本代表のベンチが動き、同時に3枚のカードが切られた。本田、宇佐美、香川に代えて、永井、武藤、そして原口が投入される。前線のアタッカーの競争心を煽る、今後を見据えたオーディションであることが一目瞭然な、ハリルホジッチ監督の思い切った采配だった。

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 清武が負傷離脱したこともあり背番号8をつけた原口は、前日練習でもプレーしていたトップ下に入った。
 
「真ん中(トップ下)は自信があるかと言われたら、ないポジションだったし、ターンして仕掛けられそうなところでアンパイなプレーをしてしまう場面が多く、難しさを感じながらやっていた」
 
 左サイドからカットインしてのシュート――。原口のプレーの代名詞と言えば、持ち味である切れ味鋭いドリブルと、思い切りの良いシュートだ。
 
 ただ昨夏浦和から移籍したブンデスリーガのヘルタ・ベルリンでは、システムに応じて様々なポジションでのプレーが求められた。試行錯誤しながら、シーズン終盤には得意とする左ウイングのレギュラーポジションを掴んだ。
 
 臨機応変な対応という、ドイツで磨いてきた成長ぶりが、早速ハリルジャパンでの自身デビュー戦で問われたのだ。
 
 そして迎えた84分、柴崎からの縦パスがクリアされたボールをいち早く拾うと、相手DFの間を縫うようなドリブルで、ペナルティエリア内へと切れ込んでいく。一瞬、GKの位置を確認し、狙い澄ました右足のシュートを鮮やかにゴール左隅へ突き刺した。A代表通算4試合目に訪れた、待望の初ゴールとなった。
 
「上手く身体でボールを持って前を向けた。目の前にいたひとりをかわせれば行けると、そこだけ集中していた。あそこまで入れれば敵をかわせると思っていた。シュートも上手く入って、良かった」
 
 ゴール直後にできた歓喜の輪のなかで、誰よりも喜んでいたのが、浦和時代の原口の“教育係”を担当していたDF槙野だった。やや大げさではあるが、ふたりがA代表のピッチで、この瞬間を分かち合えたのも、なにかの運命だったのかもしれない。
 
 決して原口らしいストロングポイントを出し切れるポジションではなかったかもしれない。それでも与えられたチャンスで、しっかり結果を残したあたりは、ブンデスリーガでの1年の成果を、日本に帰ってきて示せたと言えた。
 
「プレーの質自体は良くなかったけど、自分らしい良い形から点が取れたのは良かった」
 とはいえ原口は、「反省のほうが多い。ミスが多かったし、判断も悪いところがあったから改善しなければいけない」と、この日のプレーに満足などしていない。
 
「キヨくん(清武)が怪我をしてから練習でチャンスをもらえて、点が入ったシーンも真ん中(のポジション)だったから決まったゴール。その意味では良かった。どのポジションでもできないとチャンスはもらえない。トップ下での質も上げないとダメ。それにしてもミスが多かった。そこは改善していきたい」
 
 この一戦を経験したことで、原口の向上心と闘争心が一段と強まった。それが最大の収穫とも言えるかもしれない。
 
「どこが目標かと言えば、ここ(初ゴール)ではない。今回だけで終わりにならないようにしたい。(香川)真司くんや本田選手のように、多くのゴールで日本の勝利に貢献できる選手になるのが目標。その第一歩にしたい」

 昨年のJリーグ開幕時、浦和に在籍していた原口はこんなことを語っていた。
 
 オフの間に体幹トレーニングやスプリントトレーニングを取り入れ、肉体改造を推し進めた。その変化を、プレーでも実感できているという話をしていた時のことだ。
 
――アスリートとしての意識が、どんどん高まっていますね。
 「どうすれば日本一の選手になれるかを考えたら、みんなと同じことをしているだけだったら到達できない。そのためには、足りない部分をどう克服し、どう長所を伸ばすべきなのか、たくさん考える必要がある。そうやっていろいろ考えたなかから取捨選択し、トライしている」
 
――「日本一の選手」ですか。
「まず、なによりもサッカーが上手くなりたい。そこが一番、自分を触発している部分ですね」
 
 日本一の選手へ――。イラク戦での閃光の一撃は、その第一歩を踏み出す節目のゴールになるはずだ。16日のシンガポール戦は、戦い慣れた埼玉スタジアムで開催される。短く刈り上げた頭の原口は、「埼スタに戻って来られたことが嬉しい。気持ちを込めてプレーしたい」と、さらなる活躍を誓った。

取材・文:塚越 始(サッカーダイジェスト編集部)