野生チンパンジーの「飲み会」動画

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野生のチンパンジーが、つぶしてスポンジ状にした葉を使って、発酵したヤシの樹液の「酒」を飲んでいることがわかった。

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ギニア南東部ボッソウでの17年にわたる研究により、野生のチンパンジーが、つぶしてスポンジ状にした葉を使って、発酵したヤシの樹液の「酒」を飲んでいることがわかった。

『Royal Society Open Science』に6日9日付けで発表された論文によれば、明らかに酔っているとわかるほどヤシ酒を飲むチンパンジーもいたという。

オックスフォード・ブルックス大学のキンバリー・ホッキングスが率いる研究チームは、1995年から2012年にかけて、26頭からなる野生のチンパンジーの群れを動画カメラを使って観察した。

この研究が実施されたボッソウの地元住民のあいだでは、ラフィアヤシから乳状の甘い樹液を採取する習慣がある。地元住民たちは、ヤシの樹冠近くに穴を開け、自然発酵してできた「樹液の酒」(平均アルコール濃度は3パーセント程度だが、最高で6.9パーセントになることもある)を採取するプラスティック容器を設置している。

ホッキングス氏のチームの研究では、チンパンジーが独自の巧妙な手法を使い、その習慣に倣っていることが明らかになった。チンパンジーたちは、数枚の葉を口のなかでつぶして「葉のスポンジ」をこしらえ、それを樹液採取用の容器に浸して、なかに入っている酒を吸い出していたのだ。

17年にわたる研究全体で見ると、複数のチンパンジーが集まって樹液を飲む「飲み会」が20回記録された。そうした飲み会には、若いオスとメスのチンパンジー13頭が参加していたが、それ以外のチンパンジーは、研究期間全体を通じて一度も酒を飲まなかった。飲酒するチンパンジーのなかには、ほろ酔い以上に酔っぱらうものも見られた。

「一部の個体は、およそ85mlのアルコールを摂取したと推定されている」とホッキングス氏は述べている。「これは、イギリスのアルコール量単位で8.5ユニットに相当する」――つまり、だいたいワインボトル1本分だ。また、飲酒後のチンパンジーでは、眠りこむ、落ち着きがなくなるなどの「酒酔いの行動」兆候も見られた。

野生動物がアルコールを摂取する例は、これまでにもいくつか報告されている(リンク先は、「アルコール分3.8パーセントの蜜」だけを食べる小型の哺乳類ツパイを紹介する日本語版記事)が、今回の研究により、野生類人猿の自発的なアルコール摂取が初めて記録されたことになる。

ヒトと類人猿はアルコールを分解できる遺伝的な特質を共有しているが、この研究結果により、そうした特質は共通の祖先から受け継いだものだとする、いわゆる「酔っぱらいのサル理論」の説得力がさらに高まったといえる(アルコールを代謝することで、地面に落ちて発酵した果物類を食べることができるようになったと考えられている。なお、類人猿のうち、「ゴリラ、チンパンジー、人間」の系統はアルコールを分解できるが、オランウータンは分解できないという)。

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