01Antec Signature Series S10_R

写真拡大


米Antec社(以下アンテック)が、COMPUTEX TAIPEI 2015で公開したPCケースの新製品発表会を東京都内で開催したので取材した。
ただし、記者は「昔、自作PCを組んだことがある」程度の知識なので、マニアな方には物足りないかもしれないが、おそらくすでに情報は得て実機を手に取る算段は整えていることだろうから、ご容赦いただきたい。

さて、PCを自作する向きには有名なアンテックだが、複数の新製品の中でそのフラッグシップモデルはとんでもないものだった。
この発表会にはケースの設計を担当した台湾出身のHan Liu氏が日本語と英語を交えて、実機を解説した。
まずは、同氏が語ってくれた開発の歴史を抜粋して振り返ることにする。

「1999年、AMDはAthlon CPUを発表しました。これはリテールのデスクトップパソコンにとって、初めての1GHz CPUです。AMDはたちまち市場の主流になり、Intelも2000年に1GHzのPentium CPUを発表して、クロックスピードの競争が始まりました。

Athlonが発表された後、CPUの発熱は多くのユーザーたちにとって問題になりました。これを解決するために、ファンを増やします。想像してみてください。パソコンに5個のファンが付いて、高速回転するのです。それはジェットエンジン並みのノイズでした。しかし、当時はそれが普通のパソコンで、誰もおかしいとは思っていませんでした。
「PCをもっと静かにさせる方法が無いだろうか?」その答えがSonataです。

2002年、世界初の静音ケースSonataを発表しました。この機種は現在もなお販売されています。Antecも革新的なPCパーツメーカーとしてユーザーに認知されるようになりました。

2004年、パフォーマンスシリーズのP180を発表しました。これにより、拡張性、機能性、静音性を兼ね備えたハイパフォーマンスモデルの指標を確立しました。

2006年、SOLOを発表しました。本体は1mmの硬質スチールで構成されたミドルタワーケースです。SOLOは日本市場において絶大な人気を誇り、後継のSOLO IIも2011年に発表され、静音、高剛性、高品質な製品の代名詞となりました。その後も自慢の製品をたくさん開発してきましたが、一番自慢できるのは今から紹介する商品-S10かもしれません。」

ということで、出てきたモンスターケースのS10。確かにすごい。徹底したクーリング機構とメンテナンス性の良さ、見栄えもかっこいい。
6月20日よりパーツショップで発売なのはいいのだが、問題はその値段で、79,800円税別だ。
ケースの値段で、そこそこのPCが買えてしまう。

新製品はいずれもフィルターが簡単に取り外せて水洗いできる機構になっている。
半年や1年、忘れたころに掃除機でPCの裏側を必死にゴシゴシ吸う必要はなさそうだ。

日本では年内発売予定の強化ガラス張りのバージョンも参考展示されたが、美しいPCには違いない。

PC専門誌の記者さんやバイヤーさんは興味津々、ケースを開けたり閉めたり、パーツ談義に忙しそうだが、その方面に明るくない記者にはさっぱりわからない。わからないどころか、ある疑問がわいてきた。
いったい誰が買うんだろうと。

さしてPCに詳しくない記者は恥ずかしながら担当者に聞いてみた。
対応してくれたのは、日本の総代理店である株式会社リンクスインターナショナルの阪口さん。以前、LIVAという超小型PCの取材で、いろいろ不安をぶちまけたので、今回も遠慮せずいったい誰が買うのかと正直にぶちまけてみた。

「はっきり言って高いです。現在のケース市場の主流は数千円から2万円になると高級ケースの部類ですから、疑問を持たれるのも無理はないです。しかしケースに限らずパーツの市場は両極端で、中途半端ではダメな面もあります。

例えば、車でもデコるという分野がありますね。あれと同じで、光ったり、中が見えたり、きらびやかでとにかくデザイン重視な方向性が一つ。そして、もう一方は質実剛健、静音と言ったらとにかく静音にこだわる。かといって密閉してしまっては熱がこもりパフォーマンスが悪くなりますね。だからこういう製品も一つの選択肢となるのです。ただし海外では住宅事情が異なりますから、平気で1辺が1メートルくらいで5万円クラスのケースはいくらでもあります。」

なるほど、ゲーマーさんはCPUを最新の最速のものにして、水冷クーラーにしてガンガン冷やしてもまだ足らず、グラフィックボード1枚に10万円クラスの投資をする。高性能なグラボを積めばそれだけ消費電力が増え、電源ユニットも相応のものが必要になる。いずれも大型化する。いよいよ熱がこもりパフォーマンスに影響するという、負のスパイラルに陥る。日本の住宅事情ではサーバークラスのPCを気軽に置くわけにもいかないので、結果的に高くても高性能、高機能なケースを選択する市場が存在するということだろうか。
きっとマニアな方は同製品の価格性能比を評価できるから市場が成り立つのだろう。

他にも、手ごろな9,980円(税別)のMicro-ATX対応キューブPCケース、P50も発売される。通常の自作PCならば十分にスタイリッシュ、アクリルウインドウで中も見えるのでドレスアップもできるから、こちらでもいいだろう。

同社は電源システムも手掛けるため、450W、550W、650Wの電源も近々日本で発売予定だという。こちらはできるだけ安価で発売したいという。

いずれにせよ、高機能、高性能、高価格の究極を目指すマニア向けのフラッグシップモデルから、手ごろでスタイリッシュでかつ機能性も重視したモデルまでそろうので、ケースのチョイスに迷ったら選択肢の一つとして入れてみてはいかがだろうか。
この日本には、どの世界でもマニアの心をつかむものは、ソフトやハードはもちろんのこと、あらゆるコンテンツに至るまで、必ずそろうものだと感心せずにはいられない取材だった。
久しぶりにPCを作ってみてもいいかなと、ささやく小悪魔がそこには確かにいた。

※写真は記者撮影
 製品のスチールは株式会社リンクスインターナショナル提供

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか