プレーが止まった時には本田とハリルホジッチ監督が話し合って戦術を再確認。修正を加えて、3点目をお膳立てした。写真:田中研治

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 今回ひとつの試みとして、本田圭佑のみのプレーを追ってみた。この日、本田がボールを保持したプレー機会(CKを含む)は34回で、ミス(ここでは完全に相手ボールにしてしまったプレーを「ミス」と定義した)と言えたのは3回だけ。プレー成功率は実に91.1パーセントだった。

【PHOTOハイライト】日本 4-0 イラク
 
 そのデータを分析してみると、ハリルジャパンの実像も浮かび上がってくる。
 
 まず特筆すべきは、本田は23分までマイボールにした18回のプレー機会で、一度もミスをしなかったことだ。
 
 5分の先制ゴールの場面は、▽41秒:吉田へのバックパス、▽2分:岡崎らとの連係からの惜しいシュート、▽2分:酒井のヘッドに合わせたCK――この後の4回目のプレーで抜け出し、相手DFをブロックしながら確実に左足でシュートを突き刺した。
 
 ほぼマンマークで本田に付いていたのがイラクの左SBドゥルガム・イスマイルだった。果たして、彼がどのあたりまでマークに付いてくるのか? どのような対応をしてくるのか(厳しくマークにくるのか、様子を見る感じかなど)? そのあたりの様子を窺う間に、本田がぐっと中央寄りにポジションを取ってDF陣のギャップを突き、相手が怯んだ一瞬の隙を見逃さずゴールを奪った。
 
 この試合、最初にボールを失ったのが、中央の香川へのパスが相手にインターセプトされた19回目のプレーだった(本田のミスというより、ふたりの呼吸が合わなかった)。そして、このあたりから、しばらくイラクに主導権を握られる時間帯が続いた。
 
 ウイングの本田は自陣でのプレーが続き、27分、29分とボールを味方にパスをつなげられず、ボールを失っている。
 
 サイドが圧された場面で、どのようにしてボールを預けるのか(例えば岡崎、香川、どちらかが必ずサイドに流れて起点になれるポジション取りをするなど?)。劣勢時のボールの収めどころをある程度決めておくことは、この試合から見えた数少ない課題に挙げられそうだ。
 
 それでもイラクの時間が続いた31分、相手チームに負傷者が出てプレーが止まった間にタッチライン沿いで本田とハリルホジッチ監督が話し合い戦術を改めて確認。その直後の32分、本田から香川へのパスが起点になり、岡崎の代表通算44ゴール目(この日3点目)も決まった。
 もちろん、アタッカーが積極的に仕掛けて、ミスをすることは決して悪いことではない。ただ本田はボールを失うリスクを怖れ、決してこわごわしたプレーなどしていない。むしろ前に出て仕掛けた時に、必ず「脅威」を与えていた点も、他の選手との違いに挙げられるだろう。
 
 また、この日の本田はチーム全体のバランスを考え、左ウイングの宇佐美が積極果敢にドリブルで仕掛けることを考慮し、右サイドでしっかりボールをためて時間を作るという役割もこなしていた。本田のいる右サイドでボールを収めて時間を作り、宇佐美のいる左サイドからスピードのある仕掛けをするという、ひとつの流れもできていた。そのチームのバランスをキープするためにも、本田はよりミスのないプレーを心掛けていたように見えた。
 
 後半は交代するまで8回のプレー機会があり、ミスと言える場面はなかった。ただ51分から三度続けて前線にボールを持ち込んだが、いずれもシュートに結び付けられなかった。52分にはドリブル突破を仕掛けて相手にタックルを受けてカットされている。が、その三回とも、長谷部や柴崎らがフォローして日本のマイボールになっているので、今回はミスにカウントしなかった。
 
 長谷部らとのそのあたりの危機管理を含めた阿吽の呼吸は、やはり、この日本代表チームのなかでも絶妙だと言えた。
 
 プレー機会は前半26回と後半8回の計34回、そのうちミスと言えたのは3回のみだった。背番号4が見せたプレーの高い質と安定感が、決して弱小ではない難敵相手に快勝を収めた要因に挙げられるだろう。
 
 本田は柴崎からのスルーパスから抜け出した先制点について、「まだまだ少ないけど、こういう形が増え出しているのは、アタッカーとして確実に階段を踏めているということ。その実感はある。ただ成長速度が遅すぎる。このゴール前へ飛び出す形を、シュートを外してもいいから、毎試合、クラブでもできないといけない」と説明。
 
 また、「今回は幕張での調整(ミランでも行なっていない有酸素運動などが多く組み込まれた)が良かったので、出すことができた。ただ試合が立て込んだりした時、次の試合でも続けて出せないのが、自分が次のステージにいけない理由。この感覚で、常にできるように準備しないといけない」、「今回たまたま(ゴールが)決まったが、追加点を決められそうなところでも決め切れずにいた。ボールを引き出せなかったところもあり、そこは意識していきたい」と自らの課題を挙げた。
 さらにハリルホジッチ体制ではまだ3試合ということで、今は自分たちのスタイルを見つめながら取り組んでいるのかとの問いに、「相手の力量とのバランスはある。2点、3点、4点と取りたい試合はある。このようにイラクに4-0で勝った記憶はない。進化しているかどうかは、数値に現われる。対戦相手が同格以下という周りの評価であれば、僕らも数値的なものも求められるのではないか」と話した。
 
 その点でいえば、ほとんどノーミスだった本田のプレーの高い質は、調整が上手くいったことを含め、本人からすれば、ある意味、当然だったと言えたかもしれない。
 
※今回のデータで「ミス」に入れなかったケース
・パスが混戦になったあと、マイボールになった場合 ・シュートを打った場合。
 
取材・文:塚越 始