期待の宇佐美は、前半は遠慮していたけど、中央に入って来るようになった後半は良さが見られた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全4枚)

 本当に期待外れ――。それがイラク戦の率直な印象だね。
 
 最初に言っておきたいのは、日本の選手に責任はないってこと。宇佐美の初先発もあり、試合前こそ多少のワクワク感もあったが、フタを開けてみたらイラクのレベルがあまりにもひどかった。
 
【マッチレポート|日本 4-0 イラク】

 海外から有名なタレントが来たと思ったら、“替え玉”が来た感じに近いね。今年のアジアカップでベスト4に食い込んだイラクではなく、“偽者”がピッチにいるのかと思ったよ。試合後、解説者やアナウンサーも含めて、誰も相手の名前を憶えてないんじゃないかな。
 
 期待の宇佐美は、前半は少し遠慮して左サイドに張る形になったけど、中央に入って来るようになった後半は良さが見られた。ただ、本田や香川、岡崎らにしても、こんな相手だったら上手くプレーできるし、裏返せば“違い”を作れて当たり前だよね。
 
 相手がメンバーを落とすのはよくある話だけど、それにしてもイラクのコンディションは悪すぎた。満員の観客に対して失礼極まりない試合だよ。まともなシュートが0本という試合は初めて見た。日本も3点を取ったら少しペースダウンして、後半は選手交代によって勢いを取り戻したけど、不甲斐ない相手だったから仕方ない部分もあるよ。
 
 興行的には満員になって、相手もギャラをもらって、それぞれがハッピーな試合だった。でも、強化という意味ではまったく意味がないよ。こんな相手と何千試合やっても同じ。これで惨敗したブラジル・ワールドカップのリベンジを果たせるの?
 
 もちろん、日本の選手は真剣だったし、彼らを悪く言うつもりはないけど、相手がひどすぎたのは誰の目にも明らか。これならJリーグ選抜とやるほうが遥かに良いし、大学選抜でもいいぐらいだよ。
 
 こんな試合を続けていたら、ブラジル大会の反省はいつまで経ってもできないし、今までと同じことの繰り返し。本当なら、観客が相手にブーイングしてもいいくらいだった。それなりのギャラも受け取って日本に来るアジアレベルの対戦国に対しては、契約条件に「ベストメンバー」という一文を付け加えてほしいね。
 ハリルホジッチ監督が「今年の試合は全部勝つ」と宣言したのは、年内はこんなレベルの相手としかやらないと分かっているからじゃないかな。そう勘ぐってしまうぐらい、このイラク戦は意義の小さいマッチメイクだった。
 
 本気で強くなりたいなら、こんな相手と試合をする必要はないよ。選手にしたって、勝ったところでなんとも思わないだろうね。もう少し無理をしたら、いくらでもゴールは入ったんじゃないかな。
 
 ワールドカップで惨敗した日本の立場を考えた時、“勝つ試合”じゃなくて“負ける試合”をできるだけ組んだほうがいい。だって、それじゃないと「なにが足りないか」が分からないからね。
 
 よく「勝ち癖を付ける」なんて言うけれど、今日みたいな試合をいくらしても意味がないと思わない? 今日は「なにが良かった」かも分からない試合だったよ。相手はギャラがもらえるし、またマッチメイクしてもらいたいから、試合後に「日本は強かった」とお世辞を言っておけばいいとでも思っているかもね。
 
 世界各地で行なわれている他の国際親善試合を見てよ。もっと面白いよね。なんで日本だけ、こんなつまらない相手しか来ないのかな。イラクに渡したギャラじゃ強豪国は来てくれない。だからと言ってギャラを上げて強豪国を呼ぼうとすれば、協会やスポンサーの利益が飛んじゃうのだろうし、国内で負けが込めば観客数や儲けも減ってしまう可能性があるからね。
 
 “手頃な予算”で“手頃な相手”を見繕ったほうが、それは儲かるよね。今日の試合も、スポンサーとしては万々歳だろう。でも、チームの強化には一切ならない。スポンサーの存在もあって限界があるんだろうけど、イラク戦は日本が抱えるジレンマを象徴する試合だった。
 
 正直、ワールドカップ予選が始まるなか、チケットの金額を釣り上げるための“戦略”かと思ってしまうよね。日本は昨夏のブラジル大会で惨敗し、今年のアジアカップでもベスト8だよ。「さあ、なにか変えよう」という時、その回答がこのマッチメイクだとしたら、「残念」のひと言に尽きるね。
 はっきり言って、こんなレベルの相手には昔から勝っている。トルシエ、ジーコ、ザッケローニもそう。サッカー大国だったら、こんな相手が続くと観客は徐々に減っていくし、テレビですらチャンネルを変えられちゃうよ。
 
 会場に足を運んだ観客の多くは明日も仕事だよね。ならば、つまらない試合は途中で切り上げて、早く帰っても良かった。それぐらい厳格な態度で示さないと、いつまで経っても“相手の質”は変わらないかもね。
 
 逆に言うと、観客の眼が肥えればこんな相手は連れて来られないし、スタジアムだって満員にならないはずだよ。ギャラも受け取っているのに、イラクはこの有り様。日本の観客に対してちょっと失礼すぎるでしょ。だけど、多くの観客は快勝を素直に喜んで、写真をたくさん撮って帰ったのかな。だからみんなに聞きたいよ、「本当にこれでいいの?」って。 
 
 相手がひどすぎて評価に値しない試合なのに、各メディアには「日本、完勝!」、「日本、文句なしの4発!」といった見出しが並ぶのかな。ちょっとでもサッカーを知っていれば、この試合の無意味さが分かるでしょ。サッカー関係者はもちろん、観客の眼だって誤魔化せないよ。興行的には良くても、試合内容と入場料を照らし合わせると、あまりに高すぎる入場料だね。
 
 じゃあ、誰がこの負のサイクルを止めるのか。協会は興行面も考えるから無理。となれば、メディアがやるしかないよね。
 
 つまり、こんな試合の翌日は「日本快勝も、観客に失礼なゲーム」、「まやかしの快勝」、「無意味なマッチメイク」というような言葉が並んでいると、サッカー大国に着実に近づいていると言えるだろうけど……きっと大半のメディアは無理だろうね。
 
 だって、ある意味でみんな“共犯者”だから、きっと悪くは書けないよ。そういう意味では、メディアが日本サッカーを弱くしているとも言える。各メディアにどんな言葉が並ぶのか楽しみだね。