『日本列島「現代アート」を旅する (小学館新書 243)』秋元 雄史 小学館

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 寺社仏閣や、伝統的な古典文化に留まらず、日本には現代アートの名作もまた多々存在。直島や、金沢21世紀美術館、十和田市現代美術館といった、現代アートに触れることのできる場を訪れたことのある方も多いかもしれません。

 欧米のアートファンが見に来るほどクオリティの高い作品もあるのだと、日本における現代アートの存在に注目するのは、現代アート研究の第一人者として、数多くの斬新な企画を展開してきた秋元雄史さん。

 本書『日本列島「現代アート」を旅する』では、日本にある秋元さんオススメのトップレベルの現代アート10作品----イサム・ノグチ『エナジー・ヴォイド』、マーク・ロスコ『シーグラム壁画』、アントニー・ゴームリー『ANOTHER TIME XX』、三島喜美代『Newspaper08』、ロン・ミュエク『スタンディング・ウーマン』、レアンドロ・エルリッヒ『スイミング・プール』、安田侃『アルテピアッツァ美唄』、ジェームズ・タレル『ブルー・プラネット・スカイ』、内藤礼『母型』、ウォルター・デ・マリア『タイム/タイムレス/ノー・タイム』----が紹介・解説されていきます。

 たとえば紹介される作品のなかのひとつ、金沢21世紀美術館の顔ともなっている作品、レアンドロ・エルリッヒによる『スイミング・プール』。

 2004年に金沢21世紀美術館が開館して以来、恒久設置作品として人気を博しているこの作品は、一見すると幅4メートル、長さ7メートルのほどの小型の水泳用プールですが、覗き込んでみると、水中に人がいるように見えるのです。

 そして、プール全体が地中に埋め込まれ、水面にあたる部分にガラスが嵌められており、そのガラスの上に水が張られているという構造から、上方からは水中に人がいる光景が、下方からはプールを覗き込む人の姿が見られる仕組みのこの作品は、来館者たちの記念撮影スポットとなっています。

 ここで秋元さんは、この作品を記念撮影スポットとして観客たちが楽しんでいる点、つまり「仲間や他の来館者と写真を撮り合ったりするような、作品によって生じるコミュニケーション」に注目します。

「『スイミング・プール』は、立体作品としての造形美を堪能するための作品ではないのです。(中略)ですから彼の作品は、通常の美術作品に対して行うような、解釈を掘り下げるということをしたり、距離をとって分析するといった方法を取ると、途端に本質を失い始めます。レアンドロの作品は、あくまでも作品に直接的に出会うことによって機能します。(中略)観客と共に「遊び」、「生きられる世界」として存在しているのです」(本書より)

 観客がそれぞれ記念写真を撮り、友人たちに見せて楽しんだりすることも含め、この作品との関わりであり、参加の表れであると秋元さんは指摘します。

 現代アートの楽しみ方。まずは本書で紹介される10作品から、実際に自分の目で見て、感じ、体験、参加してきてみてはいかがでしょうか。