Facebookページ「報道特集(JNN / TBSテレビ)」より

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 安倍政権が強引に押し進める安保法制は、衆議院憲法審査会に招致された3人の憲法学者全員が「違憲」と証言したことで、ようやくその危険性が国民にも知れ渡り始めた。

 官邸と自民党は火消しに躍起だが、しかし、批判の動きはどんどん広がっている。今度は"身内"ともいえる自民党の元重鎮から安保法制へのかなり踏み込んだ批判が飛び出し、波紋を呼んでいる。

 その重鎮とは、元自民党副総裁にして防衛庁長官の経験もある山崎拓元衆院議員だ。

 山崎は6月6日に放映された『報道特集』(TBS系)にインタビュー出演したが、安保法制の危険性を鋭く指摘。さらには安倍首相の"平和主義"の欺瞞についても真っ向から批判をした。

「安倍政権の言う平和主義とは自衛隊を海外で活動させることで、世界平和に貢献しようという考え方です。しかしこれは国策として誤りです」

 安倍首相の言っていることは「国策として誤り」、つまり日本の利益にならない。山崎はこう断言したのだ。その理由について財政負担と自衛隊のリスク、そして人員確保を上げている。

「(安保法制が成立すれば)自衛隊はさらに大きくしないといけない。財政負担もあるし、自衛隊員の応募から変わってくる。海外に出して死者を出せば、なかなか応募してくれない」

 自衛隊員の死亡にまで踏み込む山崎だが、自衛隊のリスクについて山崎は大きな懸念を抱いているようだ。「報道特集」放映後の8日に発売された「AERA」(朝日新聞出版)6月15日号でもかつての"宿敵"岡田克也民主党代表との対談「国会論戦を阻む『ごった煮法案』」に登場し、自衛隊員のリスクを理由に法案に反対を表明した。

「リスクの面で特に強調したいのは、国際平和支援法の基づく自衛隊の後方支援活動です。後方というのは戦闘の前線と一体で、つまり兵站です。ですから、敵軍は必ず後方も襲う」

 そうなれば自衛隊も防戦し、武力行使、戦闘状態になる。

「そこで死傷者が出ないなんて考えにくい。ですから、リスクが高まることは間違いありません。だから私は、自衛隊を後方支援に出すこと自体に反対です」

 国会で安倍首相や中谷元防衛相が、のらりくらりとまともに答えない最大の争点である自衛隊のリスクを、明確に認めたのだ。その上で、今回11本もの法案を一度に出してきた安倍首相の乱暴とも思える手法の背景についてもこう解説している。

「これはおそらくね、この法案を準備した官僚のやり口だと思うんです。法案を一本一本審議したら大変だから、この際、長年抱えてきた課題を一気に片づけようとしている。(略)国会議員は一つひとつの素材を吟味せずにまとめて食べちゃう。この素材に毒が入っている、なんてことは考えない」

 さらにその背景には、外務官僚の対米追従体質と、それを自らの願望である憲法改正に結びつけようとした安倍首相の傲慢さがあると指摘するのだ。

 しかし言っておくが、山崎は決して反戦平和、護憲という考えの持ち主ではない。政治家として長年、憲法9条改正を主張してきたし、また、集団的自衛権行使についても賛成論者だ。さらにかつては国防族のボスとまで言われた人物でもある。だがそんな山崎までが、今回の安保法制は危険すぎるというのだ。逆に言えば、それをやろうとする安倍政権がいかに異常な存在か、ということでもある。

 実際、山崎は自身の過去の経験から「報道特集」でさらに驚くべき発言までしている。

 それは2003年、自身が自民党幹事長時代に深く関わった自衛隊派遣のための「イラク特別措置法」の議論を振り返り、それらに比べ「野党に理解してもらおうとの姿勢がない」と安倍首相を批判した後に発せられた言葉だった。

「イラクに行った我が国の方針は結果的に間違いでした。(イラク戦争は)大量兵器を破棄させるのが本来の狙いだったはずですが、それがいくら探してもないんですから。間違った部分があることは間違いない」

 イラクへの自衛隊派遣は間違い。山崎は「報道特集」だけでなく「朝日新聞」(15年4月3日付)でも「大量破壊兵器があると信じたのは間違いでした」と語り、その間違いの背景についても「日本の政治家にたたき込まれた『日米同盟堅持』という外交理念によるものが大きい」と政治家たちの「対米コンプレックス」に言及している。また、安倍首相に対してもこう指摘した。

「首相の『我が軍』発言には、国家のために軍隊は血を流すものだという軍国主義を肯定するニュアンスさえ感じる」

 安倍政権への批判を行ったのは今回名前があがった山崎だけではない。同じく自民党の元重鎮である野中広務や、古賀誠、河野洋平などもまた安倍首相の「集団的自衛権容認」「安保法制」に対し、批判や懸念の声を上げている。

 憲法学者に加え自民党OBからも大きな批判が巻き起こるほど杜撰でとんでもないシロモノ。それが安倍首相が前のめりに進める「安保法制」の正体だ。この法案はなんとしても私たち国民の手で廃案にしなければならない。
(野尻民夫)