ウェルズファーゴ選手権(5月14日〜17日/ノースカロライナ州)から2週間の休みを挟んで、メモリアル・トーナメント(6月4日〜7日/オハイオ州)に出場した松山英樹。昨季、米ツアー初優勝を飾った舞台だけに、戦前から大いに注目を集め、再度の躍進が期待された。松山はその期待に応えて、初日に「64」(パー72)の好スコアを叩き出して首位発進。2日目以降も粘り強いゴルフを披露して上位争いに加わったが、優勝(ダビド・リングメルト、通算15アンダー)にはあと一歩及ばなかった。4日間通算12アンダー、5位タイに終わった。

 ディフェンディングチャンピオンとして今大会に臨んだ松山。コース内のあちこちに自身の看板やポスターが張り巡らされ、絶大な歓待を受ける中、大会直前の松山本人のテンションはやや低かった。

「(2週間のオフの間も)練習はしていたんですけど、今の調子が悪過ぎて......。ちょっと大変なことになっているんで、(休みの間に)練習した意味があったのかな、と。グッズ売り場に(自分を含めて)歴代チャンピオンの名前が入ったTシャツとか売っていましたけど、それらを買う元気もないくらい。いいプレイができればいいんですけど、(ディフェンディングチャンピオンとしては)今はちょっとどっかに隠れていたい感じですね(笑)」

 だが、初日はそんな不安を打ち消すような快進撃を見せた。「どこに飛ぶかわからない」(松山)と言っていたショットが好調なうえ、パッティングも冴え渡った。2番、3番と4mのバーディーバットを決めると、後半は11番から14番まで4連続バーディーを奪って「64」をマーク。通算8アンダー、首位タイと、絶好のスタートを切った。

「(大会前日の)昨日までは、ショットもアプローチもパターも、すべてよくなかった。それが今日(初日)、なぜよくなったのか、自分でもまったくわからない状態です。実際、スタート時点では不安でしたから。でも、プレイをこなしていくうちに、だんだんいいショットが増えてきて、不安も消えていった。いい感じでフェアウェーをとらえることができて、おかげでアイアンショットもいいところから打てた。それがよかったと思う」

 一転、2日目、3日目は、苦しいラウンドとなった。初日のラウンド終了後に松山は、好発進にも「(ショットもパットも)まだ自信を持ってできるところまできていない。明日以降はどうなるかわからない」と不安を口にしていた。そのとおり、2日目はショットが乱れ、3日目はパットが決まらず、スコアを伸ばし切れなかった。それでも、2日間とも「71」と耐えて、3日目を終えて通算10アンダー、首位と5打差の5位タイと踏ん張った。

「(2日目は)朝の練習から初日のいいフィーリングがなくて、同じように振っているつもりなのに、思いどおりにボールが打てなかった。その中で、よく1アンダーで回れたな、という感じです。あれだけグリーンを外しておいて、ボギー2個で収められることもなかなかないですから。

(3日目は)2日目よりはショットもパットもよくなっていましたけど、まだまだ不安を抱きながら打っているときがたくさんあった。いいショットやいいパットもあれば、同じくらいミスもあった。なんか、複雑な感じですね。何にしても、決まってほしい距離のパットが決まってくれなかったことが、スコアを伸ばせなかった要因かな、と思います」

 最終日は、前半こそスコアを伸ばせなかったが、後半に入って11番でようやくバーディーを奪うと、13番、14番、15番と3連続バーディー。13アンダーまで伸ばして、トップと2打差まで迫った。が、続く16番(パー3)のティーショットが池ポチャ。痛恨のダブルボギーを叩いて、大会連覇の夢は消えた。

「(16番は)どうしてもバーディーが欲しいところ。ティーショットは(グリーンの)右からピンに寄せていくイメージだったけど、思ったよりも風(の影響)を受けてしまった。その辺をまだ読めない自分の判断力の甘さと、少しミスショットだったことが重なって、(グリーン左の)池に落ちたと思う。さらに、17番のセカンド(グリーンオーバー)も痛かった。風(の影響)もあるけど、自分の距離感が信頼できていない。ここでも、マスターズでも、メジャーでも、勝つためにはちゃんとした、自分が信じられるモノを持っていないとダメ。それが足りなかった。昨年に比べて、自らの成長を感じられる部分もありますが、それよりも、試合には勝ちに来ているので、勝てなかった、という口惜しさのほうが強い」

 松山自身、目標としていた連覇達成が叶わず、悔しさを露わにした。しかし、ディフェンディングチャンピオンという立場で、ただでさえプレッシャーがかかる中、周囲の期待を裏切ることなく、最後まで優勝争いに加わっていたことは立派。その"流れ"のよさからすれば、次なる戦い、今季メジャー第2弾の全米オープン(6月18日〜21日/ワシントン州)に向けて、期待が膨らむ。その点について、ゴルフジャーナリストの三田村昌鳳氏は、次のように語った。

「今年の全米オープンの舞台となるチェンバースベイGCは、イギリスのリンクスコースと一緒。シーサイドにある非常に厄介なコースで、とんでもなく難しい。視察した選手たちから、『あんなところでプレイしたくない』という声が出るほど。ポイントは、どれだけ風を読めるか。松山は、そういうリンクスコースでの経験が少ないから、その辺に対応できるかどうかが、(上位進出への)カギになる。

 もちろん、松山の調子自体は悪くない。すべての面において、うまくいっている。今回のメモリアル・トーナメントでも、前回覇者として相当なプレッシャーを抱えながらも、それを乗り越えてしまった。そんな日本人選手は、これまでいなかった。それだけでも、本当にすごいことだと思う。(最終日の)16番の池ポチャにしても、あくまでも優勝を狙って、勝ちにいっての結果。それができる選手だからこそ、松山は"ウイナーズサークル(常に優勝争いに加わることができる選手の集まり)"の中にいられる。あそこで、安全圏のショットを打って、逃げているような選手では、メジャーでは勝てないし、そもそも米ツアーで通用しない。たとえそれで、ひとつ、ふたつ順位を上げたとしても、逆に(優勝できなかったことを)悔やんで、次の試合まで尾を引くことになる。

 何はともあれ、松山はもはやその程度のレベルの選手ではなくなった。"ウイナーズサークル"にいる選手であって、今やどんな大会でも優勝争いに絡んでこられる存在。そういう意味では、全米オープンでもチャンスはある。ただ、今度の全米オープンと、セントアンドリュースで行なわれる全英オープン(7月16日〜19日/スコットランド)は、かなりタフな戦い。そこで、優勝できなくても、上位争いに加わることができれば、ゴルフのゲームの幅が広がって、相当な自信になるはず。松山にとってこの2戦は、今後に向けてすごく大きな経験値になっていくと思う」

 メモリアル・トーナメントで5位タイに終わったあと、松山は「この悔しさを(全米オープンで)晴らせるようにがんばりたい」と語った。今季メジャー第1弾のマスターズ(4月9日〜12日/ジョージア州)では、最終日に爆発して過去最高の5位でフィニッシュ。日本のファンを大いに沸かせた。全米オープンでは、それ以上の感動と興奮を味合わせてくれることを期待したい。

武川玲子●協力 cooperation by Takekawa Reiko text by Sportiva