Q:会社の経営状態が悪くなっていて、将来に不安があります。そのことの影響が大きいと思いますが、気分がなんとなく晴れず、軽いうつ状態が続いています。精神科や心療内科を受診し、薬を服用したほうがよいでしょうか。アドバイスをお願いいたします。(35歳・製造業勤務)

 A:私が医師になったのは40年ぐらい前ですが、当時アメリカでは、誰もが普通に精神科のかかりつけの医師を持っていると聞き、どういうことなのかよく理解できませんでした。
 当時の日本には「うつ」は珍しかったからです。ところが、バブル経済の時代にうつ状態に陥った人が見られるようになり、不景気が続くなか、うつは増え続けました。そして、「うつの時代」といわれるようになりました。
 精神疾患としての「うつ病」と、正常な人の「うつ状態」は違います。夫婦が死別すると、残された夫や妻がうつ状態に陥ることがありますが、それは当然の反応です。会社が倒産して失職した場合も同様です。現在の日本は管理社会で、個人は潰されようとしています。精神疾患ではない正常な人が、世の不条理に出合い、うつに陥り、その状態が長引いているケースが増えてきました。

●漢方の胃腸薬で改善
 こういう、うつ状態の人が、現代医学の古典的な抗うつ薬を服用すると、だるさなど体調不良が生じます。抗うつ薬は精神疾患としてのうつ病の薬だからです。
 今では精神科とは別に心療内科があります。こちらは、精神疾患としてのうつ病ではなく、うつ的な人を診る診療科です。しかし、治療手段が精神科と同じ抗うつ薬ですから、矛盾を抱え込んでいるのです。ご質問の方は、精神科か、あるいは心療内科の受診を考えておられるとのことですが、むしろ漢方医を受診するほうがよいでしょう。
 漢方では、うつ状態の治療には胃腸薬を用います。抑肝散加陳皮半夏、加味帰脾湯、甘麦大棗湯などです。
 生物の発生学的には、脳よりも腸のが先で、腸と脳は深い関係があります。漢方の胃腸薬を服用すると腸の自律神経が調整され、うつ状態が改善することがわかっています。
 胃腸を満足させると、心は落ち着きます。うつ的な人がケーキバイキングに行って甘いものをたくさん食べると、一時的に心が安定します。寝る前にラーメンを食べて寝ると気持ちが落ち着くのも同じことです。

岡田研吉氏(研医会診療所漢方科医師)
東邦大学医学部卒。ドイツ留学中に東洋医学に関心を持ち、帰国後、国立東静病院で漢方を学ぶ。独自の漢方処方で生活習慣病などに成果を上げている。著書『さらさら血液が長生きの秘訣』など多数。