世の中には、不安定な見た目で私たちを不安にさせる雑貨たちがある。実際には安定した構造をしているので倒れてしまうことはないのだが、その不安定な見た目で見るものを落ち着かなくさせるのである。ほとんどのものはそこに合理的な理由は「なく」、ただ単に「驚かせたいから」、そんな動機だけでこうしたものたちは制作されている。

今にも滑り落ちそうなベンチ『Leaning Bench』

今にも滑り落ちそうなベンチ『Leaning Bench』 今にも滑り落ちそうなベンチ『Leaning Bench』

Izabela Boloz氏によるこのベンチ、壁に立てかけられており見るからに安定感に欠けるが、もちろんちゃんと座ることができる。座った時にベンチにかかる負荷は脚と背もたれに分散されるし、脚の裏には滑り止めのゴムがついているからである。横幅のあるベンチだけにもちろんひとりだけではなく、ふたりで座ることも可能ということだからなおさら驚かされる。ところでこのベンチ、不安定な見た目ではあるがこのようなデザインにしたことで生まれるメリットもある。それは省スペース化である。見方を変えると壁がベンチの一部を担っているので、その分余分なスペースを省略することができるのである。もちろん十分なスペースのある壁があることは前提だが、デザイン的にも余分なものがないことで美しさが生まれている。ただ、残念ながらこちらの『Leaning Bench』は販売されておらず購入することはできないようだ。

ひとりでに動きだす鉢植え?『Voltasol』

ひとりでに動きだす鉢植え?『Voltasol』 ひとりでに動きだす鉢植え?『Voltasol』

スペインの「Studio BAG Disseny」による『Voltasol』は円錐状の底部を持つ鉢植えである。地面に接している部分が本体を支えているので倒れてしまうことがないのだが、円錐状の頂点の部分を支点にして鉢植えが回転するので、風が吹くとまるでひとりでに鉢植えが動き出すように見えて面白い。どうせなら1つや2つと言わず、何十もの鉢植えを並べてひとりでに動くところを眺めてみたい。ところで名前の『Voltasol』、ポルトガル語には「volta(回転)」、「sol(太陽)」という単語があるので、回転して満遍なく太陽の光を浴びる鉢植えであることを表しているのだろうか。ラインナップは底部のカラーリングの違いで、ホワイト、ピンク、イエロー、テラコッタ(色なし)、コッパーの5色。価格は47ユーロ(約6400円)。「livingthings」のHPで販売されている。

重力を可視化したチェア『60 Red Chair』

重力を可視化したチェア『60 Red Chair』 重力を可視化したチェア『60 Red Chair』 重力を可視化したチェア『60 Red Chair』

目に見えないものなのでともすると忘れてしまいがちになるが、地球に住む私たちは常に重力の影響を受けている。もちろん重力の影響は人間だけでなく、植物や物体、声といった目に見えないものですら重力の影響下にあるのである。そんな重力の存在を思い出させてくれるのがこの『60 Red Chair』。「XYZ Integrated Architecture」により2011年に製作されたこのチェア、スチール製なのでこのような無理な姿勢(?)でも倒れたり折れてしまうことはないのだが、緊張で先に座っている人の心が折れてしまいそうだ。販売されているものではなく、あくまで作品のひとつとして製作されたもののようだ。

最後の一歩手前を切り取った『Megalith』

最後の一歩手前を切り取った『Megalith』

最後の一歩手前を切り取った『Megalith』

名前にある「Megalith(メガリス)」とは、有史以前に制作され、現在も形を残している巨石遺跡のことであり、有名なものに「ストーンヘンジ」などがある。さて、こちらの『Megalith』、スチール製のドミノが今にも倒れてしまいそうになっており、その上に強化ガラスのテーブルが乗っている。先ほどの『60 Red Chair』と同様、ユーザーに緊張を強いるテーブルであるが、こちらの方が数段その圧力は増している。ラインアップはブラックとホワイト、艶消しの3タイプ。価格は艶消しのみ2万9000ポンド(約550万円)、残り2つは2万4000ポンド(約460万円)。「Duffy」のHPから購入することができる。ところで、英語の世界には「The last straw breaks the camel's back」という諺がある。わずかな重さしかない藁(わら)だが、積まれたラクダの背中を折る最後の一本もまた、同じ重さしかない藁なのである。コップを乗せたらテーブルが崩壊、そんなことにならないことを祈るばかりである。

一緒に酔ってくれるデカンタとグラス『Vas ICE Sakeセット』

一緒に酔ってくれるデカンタとグラス『Vas ICE Sakeセット』

こちらのデカンタとグラスのセットは、先ほど紹介した『Voltasol』と同じ仕組みをしている。つまり、底部の部分が円錐状になっていることで錐状の頂点の部分を支点にして回転するのである。デカンタとグラスが回転することに正直あまり意味はないと思う。だが、大した意味などなくてもいいのだ。会話の合間に手持ち無沙汰になったときにちょっと回転させてくれる、それだけでもこの形をしている意味はあると思う。価格は77ドル(約9500円)。FANCYのHPで販売されている。

時々お世話になっている形『Italic Light』

時々お世話になっている形『Italic Light』 時々お世話になっている形『Italic Light』

斜めがカッコいい。この『Italic Light』を見て改めてそう思わされた。『Italic Light』はイタリック(斜体)をモチーフにしたLEDライトである。ボディは大理石製、シェード部分はアルマイト製と、素材にもデザインにもこだわりを感じるこのライト、年内に発売予定という話もあるので、是非一度手にとってみたいものだ。それにしても字体をモチーフにするとは発想が面白い。他の字体でラインナップを展開するのもまた面白いかもしれない。

text/Wataru KOUCHI

趣味は合唱、読書、語学、旅行、美術館巡り、雑貨屋探索etc...日本、海外の雑貨やガジェット、デザインコンセプトの中から思わず「それ、いただき!」と言ってしまうモノ達を紹介するライター。