「肩凝りは、眼精疲労や運動不足など、さまざまな要因が組み合わさって起こる現代病です。特にストレス社会のいま、ますます深刻化しています」
 こう警鐘を鳴らすのは、総合医療クリニックの久富茂樹院長だ。

 近年、院長の下には“痛いぐらいに肩が凝る”と訴える中年のサラリーマンやOL患者が後を絶たないという。
 人の頭は、5〜6キロの重さがある。そんな重い頭を支えているのが首と肩だ。日本人は欧米人と比べると、頭が大きい割には首から肩の骨格や筋肉がキャシャにできているため、肩凝りが起こりやすいといわれる。
 「正常な筋肉では、溜まった乳酸などの疲労物質が血液中の酸素によって分解されます。しかし、パソコン作業などで長時間同じ姿勢をとったり、ストレスで緊張が続くと、筋肉が硬くなり血液の循環が悪くなります。すると、疲労物質が分解されずに残り、周辺の神経を刺激して痛みを生じさせる。これが一般的にいう肩凝りのメカニズムです」

 肩凝りにつながる肩の筋肉の硬直や血行不良を引き起こす主な原因としては、次の四つが考えられるという。
 ●機能的障害…パソコン作業などで長時間同じ姿勢でいるために起きるもので、特に重い頭部を支える筋群の緊張から発生する。
 ●精神的影響…うつ状態やストレスが強い状態の人に多く見かける肩凝り。自分では力を入れていないつもりでも、交感神経が緊張して肩に力が入ってしまうことから起きる。
 ●機能と精神の両方…パソコン作業などで長時間同じ姿勢で、かつ精神的にもストレス過多になっていると、肩がこわばって起きる。最近もっとも多いケースだ。

 そして一番注意したいのが、内臓疾患が原因の肩凝りだ。専門家のひとりはこう説明する。
 「心臓、肺、肝臓の疾患が原因で強い肩凝りを感じる場合があります。具体的には、狭心症・肺気腫・肺がん・慢性肝炎などです。これらの場合は、咳、痰、息切れなどを伴って起こり、肩だけでなく、腕・胸・背中にもこわばりが広がるのが特徴。夜間寝ているときに強く症状が出たり、日増しに強くなるような場合は“内臓からのサイン”の可能性があります。症状が当てはまる人は直ちに受診しましょう」
 やはり、肩凝りというと軽く見てしまう傾向にあるが、心臓や肺などの疾患が伴うとなると、「たかが肩凝り」とは言っていられない。適正に対処せずにいると、命に関わる事態に陥るということを認識しなければならない。

 また、血圧の病気に罹病している人は、同じ肩凝りでも注意点が別だ。
 東京社会医療研究所・村上剛志主任の話。
 「高血圧の患者さんに多く見られる症状は、肩凝りの他に、頭痛や動悸などがありますが、やはりその中には、血流の悪化と関係した症状が少なくありません。血圧の異常にはいくつものタイプがありますが、加齢などが原因で動脈硬化を起こすと、血管が狭くなり血流障害が生じ、数値が高くなります。アテローム性動脈硬化症は、血管の内側に粥状の隆起ができることで、血流障害や血栓もできやすいので注意が必要。また、ストレスを受けたときも、同様に交感神経などの働きで血管が狭まり血圧が高くなります。そのため、ストレスが慢性化すると高血圧を招きやすい事は知られています」

 さらに村上氏がこう付け加える。
 「ただ、肩凝りが高血圧と関係の深い要因(動脈硬化、ストレスなど)とどう関係しているかは、まだ解明されていない部分があります。ただ言えることは、血流の悪化をともなう点は共通していて、高血圧を併発しやすいと考えられている。ですから、肩凝りがただちに高血圧とは言えないものの、肩凝りが酷くなったり、今まで経験したことのない凝りや痛みが始まった場合、血圧を測定してみて下さい。高血圧の治療によって肩凝りが改善することもありますからね」