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野球において、どのポジションでも守れる選手のことを「ユーティリティープレーヤー」と呼ぶ。チームのウイークポイントを埋める欠かせない存在である反面、確固たるレギュラーポジションを持たないことの裏返しでもある。よく言えば「器用」。悪く言えば「器用貧乏」とされてしまうのも、このタイプの宿命だ。

野球ファンがユーティリティープレーヤーとして思い浮かべる選手に、石川雄洋(DeNA)や西川遥輝(日本ハム)がいるだろう。

石川は昨季、二塁手、遊撃手、左翼手、中堅手、右翼手と内外野を幅広くこなしていた。しかし、それは新外国人・グリエルが入団して、彼の動向に応じて、いろんなポジションをたらい回しにされていた感が強い。事実、グリエルがゴタゴタの末に契約解除された今季は、二塁手に完全固定されて好結果を残している。

一方の西川については、現状は「どこでも守れる」というより、「どこを守れるか探している」というほうが、適切な表現だろう。当初は二塁手として期待されていたものの、近距離の送球が不安定で一部ファンの間では「魔送球」と揶揄(やゆ)されることもあった(「魔送球」については不朽の名作『巨人の星』をお読みください)。

外野手としては伸び伸びとプレーしているが、チーム事情を考えると本当なら層の薄い内野を守ってくれるのがいい。しかし、今季はここまで二塁手として6試合に出場して失策は「2」。不安は解消されておらず、5月5日以降、一度も守っていないことから首脳陣は難しいと考えているのだろう。

というわけで、この2人に関しては「ユーティリティープレーヤー」と呼ぶには違和感が拭えず、本人たちもそう呼ばれることは不本意だろう。そこで、他にもユーティリティープレーヤーがいないか探してみた。

○開幕して2カ月で内野すべてを守った井端

最初に名前が挙がるのは、大ベテラン・井端弘和(巨人)だ。シーズンの3分の1も終えていない時期に、すでに内野4ポジションすべてを守っており、しかも規定打席にも達している。

本職の二塁では片岡易之とレギュラー争いを繰り広げ、阿部慎之助が捕手へ戻れば一塁手へ、坂本勇人が故障すれば遊撃手へ。村田修一が不振にあえいだときにも、肉離れのために登録抹消となった今も代わりに三塁に入ったのは井端だった。特にシーズン序盤に故障者やスランプの選手が続出しても、なんとか持ちこたえ、巨人が好位置をキープしているのは、井端の「縁の下の力持ち」による貢献も大きいだろう。

将来のユーティリティー候補としては、ルーキーの中村奨吾(ロッテ)を挙げたい。ここまで本職の二塁を中心に、三塁、遊撃としても出場。高校、大学時代には中堅も守っており、じきに外野手としても出場機会が巡ってくるかもしれない。

ドラフト1位指名の期待に応え、いずれはロッテのレギュラーに定着しなければならない選手。どのポジションで定位置をつかめるのか、注意深く見守っていきたいところだ。

○ユーティリティープレーヤーは執念だ

最後にこんな例も挙げておきたい。ヤクルトのベテラン・田中浩康はベストナイン2回、ゴールデングラブ賞1回を受賞したほどの名二塁手だ。しかし、今やヤクルトの二塁といえば、チームの顔である山田哲人の不動の定位置になっている。

ここまで山田はフルイニング出場を続けており、当然、田中の出る幕はない。しかし、プロ11年目となる今季、田中はプロ入り後、1回も守ったことがなかった外野に挑戦している。4月2日の阪神戦では6番・右翼手で出場すると、阪神・梅野隆太郎の打球を横っ飛びでダイビングキャッチ。神宮球場のライトスタンドから大歓声を浴びた。

田中が見せた「プロで生き抜こう」という執念。まず、このハートを持っていることが、「ユーティリティープレーヤー」である絶対的な前提条件ではないだろうか。

週刊野球太郎

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