(※イメージ写真)

写真拡大

 さまざまな不安が募る年金問題。厚労省のでは、夫の平均的収入(賞与を含む月額換算)が42.8万円で40年間働き、妻が専業主婦のケースをモデル世帯に、15年度に受け取る老齢厚生年金(老齢基礎年金を含む)を22万1507円だとしている。しかし、「そもそも、厚労省のモデルケース自体に無理がある」との意見がある。
 
 社会保険労務士でAZプランニング代表の古井佐代子氏は、「女性の社会進出が進み、かつ生涯未婚率が男性で20%、女性で10%の時代に、会社員の夫とずっと専業主婦の妻、子どもが2人というモデル世帯は、現実にそぐわなくなっているのでは」と疑問を投げかける。

 そこで、社会保険労務士でブレインコンサルティングオフィス代表の北村庄吾氏におひとりさま(独身)や自営業者の場合の年金額の推移を試算してもらった。

 15年度に受け取る額と10年後の額をそれぞれ見ると、おひとりさま(会社員)は15万6499円→14万1160円、夫婦2人(自営業者)は13万16円→11万7272円、おひとりさま(自営業者)は6万5008円→5万8636円とそれぞれ約1割減少する。

 さらに、より現実に近い収入で以下の3パターンを試算してもらった。厚労省のモデル世帯の夫の収入42.8万円が高すぎるとの意見もある。厚労省の「平成26年賃金構造基本統計調査」の平均賃金でさえそれより安いのだ。また、40年間も会社に勤める人は最近ではまれだ。試算してもらったのは、

【1】38年間会社員の夫と38年間専業主婦の同じ年の妻
【2】38年間会社員のおひとりさま男性
【3】同じくおひとりさま女性

 それぞれ見ていこう。

 【1】の場合は、現役時代の賃金(平均賃金)が32万9千円であるのに対し、夫婦2人分の年金額(老齢基礎年金2人分と老齢厚生年金1人分)は19万6649円(15年度の場合)。

 【2】は、賃金は32万9千円で【1】と同じであるにもかかわらず、妻の老齢基礎年金がないぶん、年金額は13万1649円と夫婦世帯に比べて6万5千円少ない額に。

 【3】の場合は、現役時代の賃金(平均賃金)が23万8千円と男性よりも約9万円低いこともあり、年金額は11万4987円とかなり少なめだ。

 この数字をもとに、試算を行ったところ、10年後の年金額は【1】の場合で17万7374円。【3】に至っては10万3717円と、東京都の最低賃金(時給888円)で月160時間働いた賃金を3万8千円超下回るのだ。

 定年間際のおひとりさま女性、吉田美枝子さん(57)は、「親世代の老後生活を見て、定年後も今の賃金と同程度の年金がもらえるなら、のんびり過ごしながら、時々は趣味のゴルフも楽しめると思っていました。でも、最近はじめて『ねんきん定期便』を見て、そんな生活は無理だとわかった。それ以前に、この年金額では、どうやって暮らせばいいのかすら、見当がつきません」と顔を曇らせる。

週刊朝日 2015年6月12日号より抜粋