大相撲夏場所は大混戦の末、関脇・照ノ富士(23)が初優勝。同時に大関昇進の切符も手中にした。
 このニューヒーロー誕生の陰ですっかり株を下げたのが終盤、自滅して史上初の2度目の7連覇を逸した白鵬(30)。またも審判の裁定に“物言い”をつけ、抗議の無言を繰り広げるなど、その傲慢な土俵態度たるや、とても大横綱のイメージではなかった。

 それは何とも冷ややかな光景だった。初日、白鵬は場所前に散々稽古でかわいがったモンゴルの怪物、逸ノ城の意表を突く突き落としにバッタリと左手を付いた。抜群の安定感を誇る白鵬が初日に黒星発進するのは平成24年夏場所に安美錦に敗れて以来、丸3年ぶり。呆然とした表情で引き揚げて来た白鵬は「恩返しされちゃったね」と苦笑いしたが、大本命が敗れたその瞬間、館内のあちこちで「ヨッシャーッ」と声高に叫び、ニヤリとする親方たちの姿が見られたのだ。

 白鵬が物言い取り直しになった稀勢の里戦の裁定にクレームをつけ「(自分が)勝っている相撲。子供でもわかる」と審判委員たちを激しく批判したのは、史上最多33回目の優勝を果たした初場所直後のことだった。夏場所前には「親方を通じて北の湖理事長とも話した。もう終わったこと」と話し、既に一件落着したことを明かしたが、プライドを傷付けられた親方たちの怒りは収まっていなかった。と同時に、その後の動きを見れば、上っ面はともかく白鵬も腹の底では不信感がくすぶっていたことがよくわかる。

 新たなトラブルが起こったのは12日目の豪栄道戦だった。この一番に勝てば単独トップに立つ、ということで気負っていたのかもしれない。白鵬がモロ差しになって寄った瞬間、豪栄道が放った捨て身のクビ投げに大きく傾き、右肘から土俵に落ちた。このことはビデオを見てもハッキリしている。白鵬の明らかな負けで、NHKで解説していた元横綱の北の富士勝昭氏も「物言いがついたとしても確認程度。これはクビ投げ。子供が見てもわかる」と、白鵬が使用したフレーズをそのまま使ってバッサリと切り捨てた。
 勝負は明白。当然のことながら物言いもつかなかった。すると白鵬は、何で物言いがつかないんだ、おかしいだろう、と言わんばかりの表情で勝負が終わった後の礼もせずに土俵上に突っ立ち、さらに土俵下に降りてからもおよそ1分間、控えに入らずに周りを見渡して立ち続けた。

 いくら軍配に不満があっても、これまでこんなにあからさまに無礼な抗議をした横綱はいない。支度部屋でも憮然として、これ以降、千秋楽までまるで先場所のビデオテープでも見るかのように報道陣に背中を向け、無言を貫いた。
 「優勝が30回に近づいたあたりから、急に白鵬は傲慢になりました。増長していると言ってもいい。取材していても、自分に気に食わない質問をすると怒り出しますし、取材に応じないことすら度々。これじゃ、白鵬が比較されることを嫌っているトラブルメーカーの朝青龍と同じ。いや、陰湿な分、朝青龍以上にたちが悪い。大横綱ほど潔いものですが、これで勝負に汚いこともハッキリしましたね」(担当記者)

 この騒動が尾を引いて、この2日後にも稀勢の里に惜敗。優勝争いはにわかに混沌となり、千秋楽、照ノ富士の劇的な優勝につながる。白鵬が最も恐れていた世代交代の風がとうとう吹いたのだ。

 つい1年くらい前まで白鵬は力士の鑑といわれ、みんなのお手本だった。それがどうしてこんなに暴走するようになったのか。宮城野部屋関係者が話す。
 「白鵬が尊敬している大鵬にはニラミの利く師匠がいて、常に監督管理していました。しかし、白鵬には師匠はおれど、ニラミの利く人間がいない。全て白鵬の言うまま、するがままなんです。しかも、取り巻きはイエスマンばかり。だから自分から折れるということをしないんですね。前回の審判批判のときも、取り巻きの放送作家がプロデュースするテレビ番組で謝っただけで、それ以外では全く謝罪しませんでした。親方たちの見る目も、以前とは違って厳しくなる一方。これまで良き理解者だった北の湖理事長も、最近は持て余しています」
 きらびやかな実績とは対照的に、協会内の評価はガタ落ちなのである。

 白鵬は、9年前に横綱になったときから自分の部屋を持ち、弟子を育成したい意向をもらしていた。
 「夢は、自分の息子も力士にして横綱に育て、モンゴル相撲の大横綱だった父、自分、そして息子の3代の横綱になることです。都心のど真ん中、東京・銀座に部屋を構え、総ガラス張りにして道行く人にも稽古ぶりを見てもらいたい。そんな壮大な青写真を披露したこともあります」(前出の担当記者)
 既にこの“夢”を実現するための第一歩として、十両の石浦、元幕内で現三段目の山口ら内弟子も獲得し、手元で熱烈指導中。また年寄株については引退時に、大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花に続く史上5人目の一代年寄が認められるのは確実で、後はその大前提となる日本国籍に帰化するだけだ。

 しかし、こんな険悪な状態が続けば、協会内の反発の声は強まる一方。このままでは大相撲界を追い出された朝青龍の二の舞いになりかねない。
 白鵬はどうやってこの“反乱”を収めるつもりなのか。夏場所は終わったが、こちらは全く終わりが見えない。