【NBAプレーオフ2015・ファイナル展望】

 現地6月4日(日本時間6月5日)、2014−15シーズンのNBAファイナルがいよいよ幕を開ける。最後の大舞台に駒を進めたのは、イースタン・カンファレンスを制したクリーブランド・キャバリアーズと、ウェスタン・カンファレンスの覇者ゴールデンステート・ウォリアーズだ。

 イーストの第2シードでプレーオフに突入したキャブスは、ファーストラウンドでボストン・セルティックスをスウィープ(4勝0敗)し、カンファレンス・セミファイナルでシカゴ・ブルズを4勝2敗で撃破。そしてカンファレンス・ファイナルでは第1シードのアトランタ・ホークスを再びスウィープ(4勝0敗)で下し、圧倒的な勢いでファイナルに駒を進めた。

 そもそもキャブスは、2003年のドラフト全体1位で地元出身のレブロン・ジェームズ(SF)を獲得したことを機に、エリートの仲間入りを果たしたチームだった。ところが2009−10シーズン後、レブロンがマイアミ・ヒートに移籍すると、その途端にドアマットチーム(※)へと陥落。レブロン不在の4年間は、一度も勝率5割にすら到達できなかった。

※ドアマットチーム=ドアマットのように他チームに踏みつけられるほど弱いチーム。

 転機となったのは、またもやレブロンだ。昨年オフ、FAとなったレブロンが「今から帰るよ」と復帰を決意すると、その発言を聞いたクリーブランド市民は狂喜した。その後、キャブスはミネソタ・ティンバーウルブズからケビン・ラブ(PF)の獲得に成功し、生え抜きのカイリー・アービング(PG)と併せて「ビッグ3」を形成。シーズン開幕前の予想では、いきなり優勝候補の一角に躍り出た。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 ただ、NBAの世界はそんなに甘くなかった。いざシーズンが始まると、新戦力と既存戦力が噛み合わず、勝ち星はまったく伸びず......。さらに昨年12月にはスターターのアンダーソン・バレジャオ(C)がアキレス腱を断裂し、シーズン中の復帰が絶望となった。そして今年1月には泥沼の6連敗を喫し、ついには19勝20敗と黒星が先行。デビッド・ブラット・ヘッドコーチ(HC)とレブロンの不仲、アービングとレブロンの相性の悪さなどが指摘され、レブロン自身も、「キャブスには負け癖が染みついている」と語るほど、チームの未来に暗雲が立ちこめていた。

 しかし、このままで終わらないのが、今季のキャブスの強さだ。急きょ獲得したティモフィ・モズゴフ(C)やJ・R・スミス(SG)、イマン・シャンパート(SG)らがフィットし始めると、勝ち星は急増。残り43試合をリーグトップの勝率となる34勝9敗で終え、イースタンの第2シードを獲得した。

 ところがプレーオフに突入すると、再び試練がキャブスを襲う。ファーストラウンド第4戦で、主軸のラブが左肩を脱臼して戦線を離脱。さらに、カンファレンス・ファイナル第1戦ではアービングが左ひざを故障し、第2戦と第3戦の欠場を余儀なくされた。

 そんなチームを救ったのも、やはり、「キング」レブロンだった。カンファレンス・ファイナル計4試合で平均30.3得点・11.0リバウンド・9.3アシストと、ほぼトリプルダブルという驚異的なプレーでチームを牽引。その結果、プレーオフ通算4805得点はカール・マローン(1985年〜2004年/元ユタ・ジャズなど)の記録を追い抜いて歴代6位に、そして通算1135アシストはマイケル・ジョーダン(1984年〜1993年、1995年〜1998年、2001年〜2003年/元ブルズなど)やコービー・ブライアント(現ロサンゼルス・レイカーズ)の記録を上回る歴代4位となった。

 また、ホークスとの第3戦では37得点・18リバウンド・13アシストを記録し、プレーオフ通算12回目のトリプルダブルも達成。ジェイソン・キッド(1994年〜2013年/元ニュージャージー・ネッツなど)を抜き、通算30回の大記録を持つマジック・ジョンソン(1979年〜1991年、1996年/元レイカーズ)に次ぐプレーオフでのトリプルダブル回数歴代2位に浮上した。

 だが、大車輪の活躍を見せた代償を、レブロンは支払わなければならないかもしれない。今年30歳となったレブロンは左足や腰に爆弾を抱え、カンファレンス・ファイナル第3戦では2度も足がつり、試合終了のブザーと同時に両ひざをフロアに付いてうずくまるほどの満身創痍だ。優勝するのが先か、パンクするのが先か――。それでも、レブロンは断言する。

「勝ちたければ、犠牲を払わなければいけない」

 ヒート時代に4度のファイナル進出で2度のNBA制覇を果たし、今年で5年連続の大舞台となったレブロン。ファイナルの勝ち方は、コートにいる誰よりも知っている。故郷に帰還した「キング」は、地元クリーブランドに初のタイトルをもたらすことができるか。

 そして、対するウォリアーズ。シーズン開幕前の評価は、「プレーオフ進出の可能性あり」という程度のダークホース的扱いだった。強豪ひしめくウェスタン・カンファレンスで2シーズン連続の6位。しかもスターターの補強はなし。選手からの信頼が厚かったマーク・ジャクソンHCを解任し、コーチ経験のないスティーブ・カー(1988年〜2003年/元ブルズなど)を抜擢したことが不安視されていたことを考えれば、妥当な評価だろう。

 しかし、開幕直後に16連勝で波に乗ると、「いつかは失速するはず」という周囲の予想を裏切り続け、ひたすら首位を独走した。さらに終盤戦でも12連勝を飾り、レギュラーシーズンが終わると67勝15敗。リーグ最高成績でウェストの第1シードの座を奪取し、「プレーオフ進出の可能性あり」の評価はいつしか、「優勝最有力候補」に変わっていた。

 プレーオフが始まってもその勢いは衰えず、ファーストラウンドでニューオーリンズ・ペリカンズをスウィープ(4勝0敗)すると、続くカンファレンス・セミファイナルではメンフィス・グリズリーズを4勝2敗で撃破。さらにカンファレンス・ファイナルでもヒューストン・ロケッツ相手に4勝1敗と圧勝し、1975年以来となるファイナル進出を果たした。

 チームを牽引するのは、レギュラーシーズンMVPを獲得したステファン・カリー(PG)だ。どんなにタイトなマークが付こうと、スリーポイントラインの数歩後ろであろうと、まったくお構いなし。軽やかにスリーポイントシュートを放ち、次々とネットに沈めていく。カリー以外の選手が同じ状況でスリーポイントシュートをチョイスしたら、即ベンチに戻されてもおかしくないだろう。

 そんな型破りなスタイルでありながら、カリーはレギュラーシーズンから調子を崩すことなく、プレーオフでは計15試合で平均29.2得点をマーク。対戦相手の徹底マークも苦にせず、スリーポイントシュート成功率43.7%(167本中73本)を記録している。プレーオフでのスリーポイントシュート成功数73本は、2000年にレジー・ミラー(当時インディアナ・ペイサーズ)が計22試合で達成した58本を抜くプレーオフ歴代1位の記録だ。ファイナルは少なくとも4試合――。どこまでカリーが記録を更新するのかも興味深い。

 奇しくもキャブスには名将フィル・ジャクソンにディフェンスを高く評価されたシャンパートが、ウォリアーズには今季のNBAオールディフェンシブ1stチームに選出されたドレイモンド・グリーン(SF)が在籍する。レブロンとカリーの両エースは、彼らエースストッパーをどのように攻略するのか。両エースの出来がファイナルの勝敗を大きく左右するのは間違いないだろう。

 先日、NBAメディア関係者129人の投票によるオールNBAチームが選出された。1stチームに満票で選出されたのは、レブロンとカリーの2選手のみ。また、今季のNBA選手ユニフォーム売上ランキングでは、1位がレブロンで、2位がカリーだ。

 実力・人気で双璧を成す、レブロン・ジェームズとステファン・カリー。今年のNBAファイナルでチームを優勝に導くのは、どちらのエースだ?

水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro