■5月特集 いま見るなら、女子ゴルフ(9)

 香妻琴乃(23歳)が動けば、多くのギャラリーが移動する。今や、女子ツアーのトーナメント会場ではお馴染みの光景である。

 お洒落なサマンサタバサのウェアを着こなし、その愛らしいビジュアルも相まって、女子プロゴルフ界屈指の人気を誇る香妻。ブレイクのきっかけは、昨年の躍進にある。

「昨年はすべてが噛み合った年でした」

 そう語る香妻は、プロ入り4年目の昨季、レギュラーツアーのシード権を持たない身ながら、主催者推薦などで出場した試合で奮闘。上位争いに何度となく顔を出して、サマンサタバサガールズコレクションレディース(2014年7月18日〜20日/茨城県)や、ミズノクラシック(2014年11月7日〜9日/三重県)では2位と、ツアー初優勝まであと一歩というところまで迫る試合もあった。そして、最終的には賞金ランキング19位となり、初のシード権を獲得した。

 それだけの成績を残せたのは、まさしく香妻が言うとおり「すべてが噛み合った」結果だろう。小柄ながら、パワフルなティーショットを披露。その飛距離は確実に伸びていて、安定感も増していた。さらに、平均パット数1位というパッティングのよさが何より際立っていた。その点について、香妻が語る。

「平均パット数1位というのは、ショットの精度がよかったからなんです。特にセカンドやサードショットですね。100ヤード前後のショットがほとんどピンに寄っていったんです。それで、そのピンに寄ったパットをきちんと沈められたのが、よかったんだと思います。おかげで、ロングホールのバーディー率が上がっていました」

 飛躍の要因は、他にもある。香妻が続ける。

「昨季の前半戦は、専属キャディーをほとんどつけず、ハウスキャディーを頼んでプレイしていました。グリーンまでの残り距離など、あらゆる距離感の感覚を自らがきちんと身につけていこうと思ったからです。コースマネジメントについても同様です。プロのキャディーだと、それらのことはどうしても頼りがちになってしまうので、それを避けたかったんです。そうして、距離の計測やマネジメントなど、すべて自分でやるように心掛けてきました。その成果が好成績につながったように思います」

 キャディー頼みのゴルフをする女子プロが多い中、香妻はあえてそれを避け、自身の能力アップを図った。そして、自らクラブの番手を選び、狙いどころを考えてプレイすることで、コース攻略法を体にしみ込ませ、さまざまなコースセッティングにも対応できる術を身につけていった。

「だからこそ、昨年はすごく手応えを感じて、プレイできました。私を見てくれているコーチからも、『安心して見られるようになった』と言ってもらいました」

 迎えた今シーズン、香妻はツアーの"顔"と言えるほどの注目を浴びていた。だが、ここまでは思わぬ苦戦を強いられている。

 開幕戦のダイキンオーキッドレディス(3月6日〜8日/沖縄県)で予選落ちを喫すると、そこから2試合を欠場。その後も、試合に出場しても、ギリギリの予選突破か、予選落ちという不本意な結果が続いている。

「不調の要因ですか......。ひとつは、周囲からの期待とプレッシャーを感じてしまっているのはあります。もうひとつは、腰痛が改善しないことです。そのため、今はすべてにおいて自信がないんです。それが原因で、アドレスする時間が少し長くなったり、スイングのタイミングがずれたりして、細かい部分のミスにつながっていると思います」

 香妻は今季、周囲から注目されるシーズンになることはわかっていた。しかしそれは、彼女が想像する以上だった。各メディアからの取材依頼はもちろん、香妻について回るギャラリーの数も、昨年とは比べものにならないほど増えた。それには、さすがに香妻も面食らった。

「今季は、メディアの方々から『出遅れていますね』って言われるんです。それは、昨季の実績があるからだと思うのですが、(私は)まだツアー優勝もしていないし、今季も簡単に結果を残せるなんて思っていないんですよ。その辺(自分と周囲とのギャップの違いに)は、ちょっと戸惑っています」

 そうは言っても、そうした周囲の期待は彼女自身の励みにもなっていて、香妻自身、そこまで大きな問題だと思っていない。最大の悩みは、腰痛だ。

 香妻は昨季も、手首と腰に痛みを抱えながらプレイをしていたが、それは短期間で痛みが消え、プレイに大きな支障をきたすことはなかった。しかし今回の腰痛は違う。開幕戦から痛み出して、それから3カ月経った今でも、痛みが和らぐことがないようだ。そんな状態では、プレイがままならないのはもちろん、結果が出ないのも当然だ。

「スイングするときは痛くないのですが、歩いたり、しゃがんだりすると痛みがあります。その痛みを感じながらプレイするのは、すごくストレスになっていますね。パッティングの際には、しゃがんでグリーンのラインを見るルーティンをこなすわけですけど、そこで痛みがあったりするので、プレイが遅くなってしまったりするんです。それで、流れが悪くなったりして......。また、ラウンドの後半を迎えるにつれて、体が疲れたり、足がはってきたりすると、腰が痛くなってきます。そうしたことが、すごくプレイに影響しているのだと思います」

 痛みを気にして、自分のリズムでプレイできないことは、香妻にとって、相当な重荷になっていることだろう。そのつらさは想像するに余りあるが、今は痛みを抱えながらでも試合に出ることが最優先だという。

「正直、今はどうしたらいいのか、答えが出てこないんです。腰への負担を軽減して、痛みを減らすよう、毎日トレーニングをして体幹は鍛えていますが......。とにかく、いろいろと試行錯誤しながら、試合には出続けます。理想のスイングが100点だとしたら、今は60点くらいのスイングしかできないんですけど、試合ではその60点のスイングを常に100%出せるようにやっていこうと思っています」

 そうした状況の中、出場9戦目の中京テレビ・ブリヂストンレディス(5月22日〜24日/愛知県)で、今季初めてアンダーパーでラウンド(19位タイ)。続くリゾートトラストレディス(5月29日〜31日/山梨県)でも、4日間通算6アンダー、16位タイという結果を残した。香妻としては、ここから調子を上げていって、目標とする7月のサマンサタバサガールズコレクションレディース(7月17日〜19日/茨城県)では、是が非でも結果を残したいと思っている。昨季は2位に終わったが、今年こそホステスプロとして優勝したい、と強い意欲を見せる。

「昨季も、『この大会で結果を残す』って決意して、試合に出ました。今年もこれから内容のいいゴルフを続けていって、この大会にはいい状態で臨みたい」

 今後も、苦しい状況が続くかもしれない。だが、香妻は決して諦めてはいない。どこかで浮上のきっかけをつかんで、彼女の悲願が達成されることを期待したい。

text by Kim Myung-Wook