今回もまた選出理由について明確な意図を述べたハリルホジッチ監督。そのなかで国内外のプレーヤーを平等な視点で評価したいとも述べた。(C) SOCCER DIGEST

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 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が提示した日本代表改革案は、まるで歴史を熟知した上で反省点を炙り出したかのようだった。
 
 前任のアルベルト・ザッケローニ監督は、途中からメンバーを固定して「自分たちのサッカー」を熟成することに邁進した。それはジーコ監督時代にも通底する大きな疑問点だった。ジーコは言った。
「代表では順番を待たなければいけない」
 
 実績とプライドを重んじてメンバーを固定した結果、競争原理が薄れ活力が失われていった。
 
 一方ハリルホジッチ監督は「日本代表の座は誰にも保証していない」と言い切る。当たり前のことだが、言行が一致した監督は意外に少ない。
「国内でプレーする選手が入れない状況も、海外でプレーする選手が自動的に入れる状況も作りたくない」
 
 欧州に出てもプレー機会を失えば代表から外れ、代わりに国内で充実した選手が席を占める。今回も欧州組で出番が減っている乾貴士や柿谷曜一朗が外れ、ヘルタでレギュラーを奪回した原口元気が復活した。特に日本で最もタレントが溢れる攻撃的MFやFWについては「このポジションの選手は出場し続けてくれなくては困る」と厳しい要求を突きつけた。
 
 逆に今シーズン、川島永嗣や酒井高徳はプレー機会が少なかったが「今のところ高徳を上回るパフォーマンスを見せるSBを見つけられていないからで、もし見つけたら明日にでも呼ぶ」と宣した。右SBは「問題を抱えている」と見ており、先日のミニ合宿でも本来CBの丹羽大輝や塩谷司を試している。「他にも4〜5人の候補者がいる」なかで、丹羽が生き残って来たのも、センターでも右でもプレーできる利点を確認できたからだ。
 
 わざわざスタッフ全員で視察した試合数やミーティングの頻度まで明かし、選手に負けないハードワークぶりを強調したのも、なんだかのんびりムードだったジーコファミリーへのアンチテーゼとの解釈は穿ち過ぎだろうか。
 戦術や人選も、対戦相手や状況に応じて変わることを、はっきりと告げた。その点で就任2戦目のウズベキスタン戦は、指揮官自身の色が滲む会心の勝利だったようだ。
「最初はブロックを高くしてハイプレスをかけようとした。しかし30分が経過して、戦術を変える必要を感じ、後半は根本的に全て変更した。ブロックを下げ、出来るだけ速い攻撃を仕掛けて4ゴールを奪ったのだ」
 
 今回招集したメンバーで、イラクとの親善試合と、シンガポールとのワールドカップ予選を戦う。圧倒的に格下のシンガポールはもちろん、「イラクは最終予選のライバルとも考えられ、ここで叩いておきたい相手」(霜田正浩技術委員長)なので、攻撃のバリュエーションに重視し9人のFWを招集した。
 
 そのなかで川又堅碁については「他のメンバーと比べて技術は落ちるかもしれないがパワーがある。そういう選手も必要で、国内の試合では使うかもしれない」と語った。つまり対戦相手が変わり難しい状況の試合になれば、おそらく選択する戦術に応じてポジションごとの人数の比率や顔ぶれも変わって来る。そこは明らかに今までの代表監督になかった考え方だ。
 
 どんな試合でも勝利を目指し「勝つ文化を植えつけたい」という。実際常に目の前の相手を効率良く倒そうと考えれば、その都度戦術や人選が変わるのは当然だ。むしろそれが準備期間は短くても、選択の幅が広い代表監督の醍醐味とも言える。
 
 確かにワールドカップ予選は重要だが、対戦相手との力の差が大き過ぎて緊張感とモチベーションを保つのが難しい。だからこそ極力好調で新鮮な選手を抜擢し、安泰気味のレギュラー陣にも刺激を与えておく必要がある。そういう意味では、常連組の中に落とした適度なスパイスが利いて、なかなかバランスの取れた人選になった。
 
文:加部 究(スポーツライター)