2万枚の紙でできた「歩ける橋」がつくる景色

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イギリス北部の田舎に、突然真っ赤な橋が現れた。誰もが思わず目を奪われてしまうこの橋は、環境アーティスト、スティーヴ・メッサムが22,000枚の紙でつくった、期間限定のインスタレーションである。

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2/5後に取り除かれる木のサポートによって、橋は形づくられていった。

3/5メッサムは、紙を1,000枚ずつの塊に分けて橋をつくっていく。

4/5紙はぎっしりと詰まっているので、橋は重りが乗っても崩れない強度をもつ。

5/5橋は、周囲の環境と共鳴し合うインタスタレーションだ。

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イギリスの田舎に現れたその橋は、22,000枚の紙でできている。

後に取り除かれる木のサポートによって、橋は形づくられていった。

メッサムは、紙を1,000枚ずつの塊に分けて橋をつくっていく。

紙はぎっしりと詰まっているので、橋は重りが乗っても崩れない強度をもつ。

橋は、周囲の環境と共鳴し合うインタスタレーションだ。

イングランド北部には、22,000枚の紙でできた橋がある。聞かれる前に答えるが、ちゃんと歩いて渡ることができる橋だ。

シンプルなポピーレッドのこのアーチは、スティーヴ・メッサムの作品だ。メッサムは環境アーティストとして、意外な場所に意外な構造物を設置するのを得意としている。イギリスの田舎に突如出現したこの紙の橋もそのひとつだ。

メッサムの橋の構造は謎めいている。完全に自立していて、接着剤もホチキスも支柱も使われていない。ほかの自立式アーチと同様、ペーパーブリッジは圧縮によって安定を保っているのだ。

紙で橋をつくるのは、石などのほかの素材で橋をつくるのとあまり変わらない。メッサムは紙を1,000枚ずつに分け、それを仮置きした木枠の上に置いて、アーチ型にしていった。内側に進むにつれ、紙束は次第に詰まっていき、最後には紙束をハンマーで打ち込まなければならなかったという。すべての紙をはめ終わると、木型を取り除き、自立する橋が完成した。

メッサムが使った紙は、彼曰く「この上なく普通の」紙だ。1枚の厚さは0.26mm、大きさは約70x90cm。紙を支えているのは両側にある各1.5トンの石積みの土台。興味深いことに、橋は濡れるとさらに強度を増す。イギリスの野外建築としては好都合だ。「雨が降ると繊維は膨張しようとしますが、その余裕がどこにもないのです」とメッサムは言う。彼の試算では、全体の耐荷重は4.5トンで、約60頭の羊に相当する。

完成以来、小川にかかるこの橋を7,000人以上の人と多くの犬が渡った(羊は渡っていないという)。インスタレーションの公開期間中、橋はたった30mm沈下しただけだ。橋の撤去後、この場所は本来の美しいイギリスの田園風景に戻るが、きっと『何かが足りない』と思うことだろう。

メッサムのつかの間の作品は、風景のなかに無為に居座る立体物ではなく、周囲の環境と共鳴し合うインスタレーションだ。好奇心を刺激し、スケール感を与え、周囲の世界をとらえる枠組みを提示する。メッサムは言う。「表面的なところしか見えない絵画のようなものではなく、この橋は、風景のまだ見ぬ可能性を探索するものなのです」

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