今年も健康診断の季節がやってきたが、再検査だった、C評価だったなど、検診を受けた人の落胆の声が聞こえてくる。しかし最近、専門医の間などでは「結果を鵜呑みにしてはならない」といった健診の数値を疑う声が聞こえてくる。
 山梨医科大学名誉教授の田村康二氏は、「厚労省の研究班でも、“集団検診はほとんど意味がない”という結論を出しています。医療費削減の観点からも、いずれなくなるのではないでしょうか」とした上で、こう続ける。
 「近ごろ健診で行われなくなったのが肺のレントゲン検査です。肺がんの早期発見を目的として行われるようになったレントゲン検査ですが、X線を照射することによって、返って肺ガン患者を増やしてしまうからです。また、乳がんの早期発見のために乳房をX線撮影するマンモグラフィーも、早期発見にはつながらず意味がないことがわかってきており、スイスのように廃止を勧告するところもあるほどなのです」

 また、健診の中で最も問題視されているのが血圧だ。
 特定健診を行っている医療機関の基準では、健康な人の血圧は130-85。しかし、1987年当時、高血圧は180-100以上だった基準が、2004年は140-90以上に、そして130-85以上の現在に至っている。そのため、'87年当時は30万人しかいなかった高血圧患者が、今や5500万人もいるといういいかげんさなのだ。

 『高血圧はほっとくのが一番』(講談社+α新書)の著者で血圧治療の第一人者、関東医療クリニック院長の松本光正氏が言う。
 「たとえば、基準値を160から140にするということは、150で正常だった人が突然異常になるということです。基準値が10下がると新たに1000万人の患者が生まれる。2011年の国民健康・栄養調査では、成人の27.5%、つまり4人に1人が降圧剤を飲んでいることがわかった。降圧剤の売り上げは、製薬会社にとってまさに打ち出の小槌というわけです」

 前出の田村氏もこう言う。
 「高血圧学会は正義の敵です。製薬メーカーとグルになり、自分たちの飯のタネを作っている。人間の血管は老化すると自然に硬くなる。血圧が高くなるのは当たり前のことなのです。それを、若い人と同じ130以下というのは考えられません」

 脳梗塞は高血圧が原因とされるが、そうではないと前出の松本氏は続ける。
 「むしろ血圧が低い時に起こる疾患が脳梗塞です。脳の血管が詰まりかけた時、人間の体は血流をよくし血の塊を吹き飛ばそうとする。血圧を上げて脳を守ろうとしているわけです。つまり、高血圧だから脳梗塞になったわけではなく、脳梗塞になったので治そうとしている。原因と結果を取り違えているのです」

 多くの人が降圧剤を飲む風潮が残っている要因はもう一つある。
 1950年代までは、脳卒中のうち脳血管が破れる脳溢血が90%を占めた。ところが、時代が移り'90年代に入ると、脳溢血は減り、代わって脳梗塞が80〜90%を占めるようになったのだ。
 「戦前は栄養状態が悪く、血管ももろかった。そのため、血圧が高いと脳溢血になる人が多かったのです。しかし、国民の栄養状態がよくなり、今は脳梗塞が主流となっているのです」(松本氏)
 このような時代、しかも脳梗塞への降圧剤の使用が意味がない事となれば、服用している人が多いことは時代錯誤としかいいようがない。