「オジサン」はもと某通信社の看板フォトジャーナリスト。「わからないこと」があると気になって仕方がないといういささか面倒な性分の持ち主だ。外国生活が長かったせいか、日本の経済や金融に関する最新の知識には少々疎い。それが癪にさわって仕方がないと、今日は、昔の部下を訪ねて都内某ニュースセンターに現れた。

オジサン やあ、久しぶりだね。
デスク どうしたんですか。お久しぶりです。ご無沙汰しています。
 実はね、IT関連企業ライブドアとフジテレビによるニッポン放送株をめぐる話題が連日マスコミを賑わしているけれども、テレビを見ても新聞を開いても、株取引の専門用語なんかが多すぎて、実にわかりにくいこときわまりない。たぶん、世のお父さんたちにとってもそうだと思うんだ。
 それで?
 そんな冷たい目でみるなよ。オジサンの年になると、「何でも知っている」っていうことだけが「売り」なんだ。しかし、正直言って、よくわからないことが多い。このままだと、「何だ、そんなこと知らないのか」って若いやつにバカにされるかもしれない。それは、オジサンたちにとって致命傷ともいえるほどつらいことなんだ。辞書やネットで調べれば、言葉の説明は出ているんだけど、もうひとつうまく理解できない。何とかしなくちゃいけないと思って、おまえさんを尋ねたというわけさ。たしか、駆け出しの頃、よく面倒見てやったよなぁ。
 また、昔の話ですか……。で、わからないことってなんですか。

「立会外取引」とは

 まず、株の「時間外取引」っていうことだけど……
 「時間外取引」?
 そう。証券取引所が開く前だったか後だったかに、ライブドアがニッポン放送株を買ったのはルール違反じゃないかっていわれているよね。
 ああ、ToSTNeT(トストネット)のことですね。
 ???
 正式にはTokyo Stock exchange Trading Network systemっていうんですが、1998年から東京証券取引所が取り入れた電子取引ネットワークシステムです。
 なんでそんなシステムを取り入れたの?
 株式市場って、午前9時から11時までの「前場」(ぜんば)と午後0時半から3時までの「後場」(ごば)の合計4時間半しか開かないのはご存じですよね。
 もちろん。
 つまり、通常の株取引はその時間内に行うんですが、たとえばある会社の株を一定の値段で大量に買いたいと思ったとき、取引時間内で買おうとすると、株価が急上昇して、市場が混乱し、思い通りの株を買えないなんていうことも起きるかもしれない。そこで、立会時間外に特別の枠を設けて株取引ができるようにしたというわけです。
 ということは、立会時間外取引だけど、市場内取引だということね。
 その通りです。
 それじゃ、ライブドアがやったことは、別にルール違反ではない、ということね。
 基本的には、そういうことです。

「TOB」「敵対的買収」とは

 さて、次はTOBだ。「U」がつけばデパートになるが、……
 寒い冗談ですね。
 ゴメン。フジテレビがニッポン放送株をTOBで取得しているという話だよね。
 そうですね。日本語でいうと「株式の公開買付」で、新聞やテレビでもTOB(Take Over Bid,Tender Offer Bid)という言葉がそのまま使われることが多いようです。簡単にいえば、会社の経営権取得を目的として、市場外でその会社のかなりの数の株券の買付けを行うことです。これは、証券取引法に定められた制度で、「総株主の議決権の3分の1」を超える株式の買付けを行う場合には、原則として公開買付によらなければならないとされています。
 なるほど。それに対して、ライブドアのニッポン放送株買い付けは、「敵対的買収」などといわれているよね。「敵対的」なんて、何となく物騒だね。
 英語では、「買収」はM&A(Merger & Aquisition)、敵対的買収はHTO(Hostile Take Over)などといわれますが、要するに、買う相手の会社の取締役会の賛同を得ないでTOBを行う場合を敵対的TOBというわけです。買収される側の企業としてもありがたい話ではないので、社内に不満がくすぶって、社員の士気も上がらなくなる。その結果、会社の経営自体がうまくいかなくなる可能性もあるので、日本ではあまりうまくいかないといわれています。
 確かにそうだよね。いきなりわけのわからない上司が乗り込んできて、あれをやれ、これはやるな、なんていわれたら、誰だって働く気をなくしちゃうよね。(つづく)

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