6月16日にW杯ロシア大会のアジア予選、シンガポール戦を控えている日本代表。その攻撃陣の顔ぶれは、ヴァヒド・ハリルホジッチ体制になってどうなっていくのか。福田正博氏が考察する。

 日本代表の前線については、「4−3−3」フォーメーションの場合、右サイドの先発は本田圭佑で決まりだろう。彼の代わりは現時点ではいない。所属するミランで右のアウトサイドを務めることで、日本代表の攻撃にもいい影響が出たといえる。新体制になっても、本田は日本代表の攻撃のキープレーヤーだろう。

 本田の控えについては、W杯ロシア大会を見据えて、リオ五輪世代ほかの若手が出てきてほしいところではあるが、まだまだ未知数であり、ハリルホジッチ監督にとって難しい選択になると思う。

 一方、左FWは乾貴士、宇佐美貴史、武藤嘉紀、永井謙佑と候補は多い。香川真司や清武弘嗣がここで起用される可能性もあるだろう。このなかでは、とくに宇佐美と武藤が活躍していることの代表への影響が大きい。Jリーグでプレーするふたりに注目が集まることで、日本代表への期待も高まってきている。

 宇佐美は自分で仕掛けて、相手の守備をドリブルで切り裂いて得点を決める。つまり、ゴールに対しての欲があり、「結果を残さなければ生き残れない」という意識を持ってピッチに立っている。これは武藤も同じで、彼らは常にゴールを目指してプレーする。FWで縦に行かない選手は怖くない。DFにとって、一番怖いのは縦に来られること。ボールも人も横に動いているうちは、DFにとって脅威にならないということだ。

 また、快足の永井は、カードとしてベンチに置いておきたい選手だ。私自身は、永井は以前から代表に入ってほしいと思っている選手のひとり。永井には「速さ」という武器がある。ロンドン五輪で見せたように、前線からの守備も含めて、永井は世界に驚きを与えられるだけのスピードを持っている。永井のスピードのような「特殊能力」がないと相手に脅威を与えられないし、ゲームの流れを変えられない。

 たとえば、1点を守りきることが求められる展開のとき、前線に永井がいることでカウンターがあるという「脅威」を相手に与えることができる。守ると同時に、カウンターという武器を相手に見せて「スキがあったら反撃しますよ」と、相手にプレッシャーをかけておく。そうすることで、相手は思うように攻撃に出てくることができなくなる。

 そういった相手にとっての「怖さ」を持ったうえで守る。ただ守っているだけでは守りきれないということだ。これは欧州のトップクラブでも同じこと。今季、プレミアリーグで優勝したチェルシーであれば、1点を守りきる局面で守備を固めた状態でも、FWのドログバやレミーがカウンターを狙い、相手を常に牽制している。

 また、同じようなタイプの選手ばかりでは、相手との駆け引きがうまくできないので、「スピード」以外にも「高さ」「ドリブル」など、いろいろな特長を持つ選手がいてほしい。それによって戦い方のバリエーションが増え、相手に揺さぶりをかけることができるようになる。

 次に中央のワントップだが、ここは岡崎慎司で決まりだ。岡崎の控えは豊田陽平や大久保嘉人、大迫勇也、川又賢碁らが候補だろう。豊田、大久保はあらゆる点で完成されているFWで、大迫、川又はこれからが楽しみな選手。いずれも、ピッチ上でファイトできるFWだ。

 それでも、所属しているクラブの環境を考えると、世界のトップに近い環境に身を置いているのが岡崎であり、やはりその経験値や実績を上回るセンターフォワードは見当たらない。センターバックと同様、センターフォワードはペナルティエリア内で身体をぶつけ合うことが多いポジションであり、体力的にほかのポジションより消耗しやすい。その点を考えても、ブンデスリーガで今シーズン12ゴールを決めた岡崎は、より高いレベルで、環境に適応して成長を続けているといえる。

 このように現在の日本代表の攻撃陣の顔ぶれを見ていくと、「4−2−3−1」のほうが、よりハマるのではないかと私は思っている。なぜなら、ワントップ以外の2列目とサイドの選手層が厚いからだ。

 4−2−3−1の場合、トップが岡崎、トップ下に香川、右が本田、左が宇佐美、もしくは武藤、乾。またはトップ下に宇佐美という選択があってもいいかもしれない。その場合、左は香川。そういうバリエーションが増えることは、チームにとって刺激になり、競争意識も生まれてくるはずだ。

 私自身は、ハリルホジッチ監督の非常にアグレッシブなスタイルのサッカーをこのまま進めてほしいと思っている。もちろん、ハリルホジッチ監督がやることの全部が全部、日本代表にとっていいということではないだろう。日本人はアルジェリア人ではないし、フランス人でもない。ハリルホジッチ監督がヨーロッパのクラブやアルジェリア代表で実践していたことが、そのまま日本代表にうまく当てはまるとは限らない。新たな指揮官が就任して日本代表が本当にいい方向に進んで行くのかどうか、まだ様子を見なくてはいけない段階にある。

 日本は、W杯本大会では格下であることを忘れずに、ハードワークをしてボールを奪いにいく。そして、格上を相手にしても一歩も引かない。それが戦い方の原則であり、勇気を持って一歩踏み込むことが重要になる。日本代表FWが、勇猛果敢に挑みかかる姿勢に期待したい。

福田正博●解説