これから全国各地にも訪れる梅雨。その間は、室内干しの洗濯物や満員電車の中の臭いなど、さまざまな臭いが気になるもの。本当は口臭が殆どないにも関わらず「自分に口臭があるのではないか?」と気にする人も多いそうです。全身疾患の兆候として現れる口臭もありますが、約9割は口の中の問題であることが明らかになっています。その原因物質は揮発性硫黄化合物(Volatile Sulfur Compound:VSC)。口の中に常駐する細菌がタンパク質を分解することでVSCが発生します。


ポイントは「唾液」

では、タンパク質を減らしたり食べなければ防げるのでしょうか? いいえ、そんな単純にはいきません。皮膚における垢のように、口の中の粘膜も新陳代謝ではがれます。粘膜はもちろんタンパク質。口臭予防として注目すべきなのは「細菌」の方です。そして、細菌の増減の鍵を握っているのは「唾液」の量。唾液には口腔内をキレイにし、雑菌を殺菌する効果があります。ですから、唾液の量が減少すると細菌が増え、口臭が発生しやすくなります。
一日の中で最も唾液が少なくなるのが起床時。寝る前に歯磨きをしたのに、朝起きたときには口の中がネバネバする感じを経験したことのある人も多いのではないでしょうか。口の中が乾燥し、細菌が少ない唾液に凝縮された状態です。口臭も一日の中で最も強くなります。就寝時と起床時のVSCを比較すると5倍だったというデータ(佐野)もある程です。
緊張したりストレスを感じることでも唾液は減少します。ストレスによって自律神経が乱れることで唾液の分泌が3割も減少するという報告も。規則正しい生活を心がけ、入浴でリラックスしたり、軽く体を動かしたりして、自律神経を整えておきたいものですね。


口臭を自分でチェックする方法

舌をチェック:正常な人でも白い舌苔(ぜったい)はついているものです。体調によって舌苔は多くなったり、色が変わったりします。舌苔をチェックする習慣をつければ、その変化に気づくことができるでしょう。舌苔を布やティッシュで優しくこすり、匂いを嗅いでみます。
デンタルフロスでチェック:歯磨き後に、歯と歯の間にデンタルフロスを通します。フロスに付いた歯垢の匂いを嗅いでみます。匂いが気になっても大丈夫。フロスや歯間ブラシを使えば、歯垢は85%除去できます(高世ら)。
唾液でチェック:唾液が「すっぱい」と感じるときは、口の中が歯垢や食べカスが残っているのかもしれません。唾液が「苦い」と感じるときは、口臭の原因となるVSCが口腔内に溜まっている可能性があります。唾液の味がいつもと違うときは、口臭が強くなっている可能性があるので、口をすすいだりするとよいでしょう。
手を舐めてチェック:片方の手の甲を舐めます。30秒ほど待ってから、舐めていない方の手の甲の匂いを嗅いでみます。次に舐めた方の手の甲の匂いを嗅ぎ、両者を比べます。
ポリ袋でチェック:小さめのポリ袋を2つ用意します。片方の袋には空気を入れます。もう一方の袋の空気をぬき、袋の中に息を吐きます。吹き込んだ息が抜けないようにして持ち、30秒ほど待ちます。空気入りの袋の中をまず嗅ぎ、次に息を吹き込んだ袋の中の匂いを嗅いで比べます。
口臭測定器でチェック:
口臭の主成分はVSCのうち、硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドの3種類であることが分かっています。これらのガスが混じっている呼気からそれぞれのガスを測るとなると、80万円程もする医療用の機械が必要です。そんな高度な機械でも人間の嗅覚には適わないとか。「口臭外来」においても、測定器の値をそのまま利用して済ませるのではなく、医師が直接患者さんの息を嗅いで測定する「官能検査」が行われています。
家庭向けに市販されている「口臭チェッカー」は1500円〜4500円程度。利用方法が簡単で、携帯に便利です。3種類のガスの区別なく、5段階程度で結果を表します。口臭に変化があったという自覚があっても測定値は同じだったり、同程度の口臭だと思っても測定値が違う、といったことは当然起こりうる話です。家庭用のチェッカーで測定した値は目安程度に考えた方がよいでしょう。


細菌を減らし、唾液を増やそう

口臭の約9割は口腔内の環境が原因と言われています。つまり、歯や歯茎を健康に保つと、殆ど改善されるのです。口腔内の細菌は就寝中に最も増えるので、就寝前と起床後の歯磨き・歯垢の除去が特に効果的。就寝前に歯磨きをしなかった場合、起床時のVSCが、就寝前に歯磨きをした場合の7倍も検出されたという報告(佐野)もあるほどです。
舌苔も細菌が繁殖する原因となります。でも、歯ブラシでゴシゴシするのは厳禁! 傷が付き、かえって舌苔を増やすことになってしまいます。舌苔を取る場合は舌専用ブラシを優しく使いましょう。水を口に含み、口の中の天井にあたる部分に舌をこすりつけるだけでも効果があるといわれています。
唾液を増やす方法として真っ先に思いつくのは、飴を舐める、ガムを噛むといった方法でしょうか?キシリトールガムは、キシリトール自体に唾液分泌を促進する効果があるので、口臭予防にもってこい。ガムを噛まずに口の中で舐めていた方が、さらに唾液が出続けてくれるという裏技も! 緊張して、口がカラカラになってしまった。ガムも持っていない。飲み水もない。こんな時には、梅干やレモンなどの「すっぱいものを思い浮かべる」というお手軽手法も試してみる価値がありそうです。


心配なときは医療機関へ

自分でできる口臭対策をやってみて、なお口臭が気になる場合は、「歯科」を受診し、虫歯、歯周病などの口の中のトラブルがないかを調べてもらいましょう。
口腔内の問題は解決しているのに、なお口臭に対する不安がある場合は、「口臭外来」を利用してみるのもよいでしょう。総合病院や歯科医院に設けられている他、口臭外来専門のクリニックも開設されています。検査内容は、口腔内の検査の他、唾液検査、測定器による口臭測定、舌診、官能検査、尿検査など。検査で口臭の原因が分かれば、そのケアによる改善を図ります。原因が見つからなかった場合は、心理的口臭(自臭症)の可能性がありますから、カウンセリングを受けると良いでしょう。
「口臭外来」は保険の適用外である場合も多く、金額が気になるところですが、初診の費用は2〜3万円程度が一般的。美容院でカラーとパーマをお願いし、ちょっと贅沢な外食をして、タクシーで帰宅すると同じぐらいかかるでしょうか・・・口臭が気になるけれど、恥ずかしくて何年も口臭外来に行けず、ようやく勇気を持って受診したら長年の悩みがスッキリしたというケースも耳にします。他の患者さんに診察の様子や話し声が聞こえないように完全個室の形態をとり、プライバシーに配慮しているところもありますので、自分にあった、通いやすい医療機関を見つけられると良いですね。
参考文献:
高世尚子, 田淵由美子,鶴川直希,武村あかね 「歯間清掃具によるプラーク除去効果の臨床的検討」 日本歯科保存学雑誌 48(2), 272-277, 2005
佐野あゆみ 「空気が乾燥してきたら、口臭に要注意!?」 タニタのダイエット・健康コラム
中城基雄 「口臭治療」 スキンケア講座
「いつでも、どこでも、5秒で口臭をチェックする9つの方法」 http://complex7.com/koshucheck9-1030-2410
「口臭を消す方法まとめ 1日中「息が臭い」と思われないために」 http://b-h.hatenablog.com/entry/2013/07/27/133209