薬が切れる日──。その日をめぐって、市場関係者の間では、ある「国際ルール」の変更がひそかに話題となっている。

 その国際ルールを紹介する前に、日銀の現在の政策を振り返っておきたい。

 日銀は国債を買い取って、かつてない規模の巨額のお金を世の中に流し込んでいる。保有残高は異次元緩和の始まった13年4月と比べて2倍以上。資金循環統計によると、14年12月末時点で国債発行残高の25%を保有するという異常な事態だ。国債全体の4分の1を保有している計算となる。

 ミョウジョウ・アセット・マネジメント代表の菊池真氏が警告する。

「“財政ファイナンス”と見なされてもおかしくはない。そうした懸念が世界中に広がれば、日本国債に対する信用は地に落ちることになるでしょう」

 財政ファイナンスとは、中央銀行が政府の財政赤字を補てんすること。つまり、日銀がお金を刷って国債を買い取ることで政府の新たな借金を穴埋めしている状態だ。そんな国は誰も信用してくれない。

 とはいえ、日本国債は暴落するどころか、金利は超低位で安定したままだ。日本政府がいくら赤字国債を発行しても、これまでは日本国内でほぼ100%消化できたから、国債の下落リスクが小さかった。「国民が預けたお金で銀行や生命保険会社はせっせと国債を買ってきました。日本の国債市場には外国人投資家がほとんどいないことが特徴でした」(証券系ストラテジスト)

 国債が暴落したギリシャは、外国人投資家にほとんど国債を買ってもらっていたため、財政問題が浮かび上がると、一気に売り浴びせられた。日本国民が保有している限り、日本国債は安全なのだ。 だが、ここにきて、不穏な空気が漂い始めてきた。前述した「国際ルール」の変更である。東短リサーチの加藤出(いずる)チーフエコノミストが解説する。

「世界中の銀行を監督するバーゼル銀行監督委員会(事務局=スイス・バーゼル)によるルール変更です。一言で言うと、国債をリスク資産とみなすようにするということ。背景には、世界的な金融緩和で国債価格が急騰(金利低下)していることがあります。このルールが適用されると、国債を保有する場合、国債の価格下落(金利上昇)に備え、資本を積み増さなければならなくなるのです」

 バーゼル委員会は5月下旬にも、新ルールを発表する予定だ。適用は19年以降とみられている。

「しかし、保有する国債を前倒しで売却する日本の銀行もあると思います」(加藤氏)

 金融機関が資本の増強をするためには、利益を積み上げなければならないので、それほど簡単ではない。

 現在、日本政府が発行する国債881兆円(15年3月末)のうち、銀行は1割強を保有する。

 銀行が売却に動いたら、どうなるのか。日本国民が保有している限り安全だという神話が崩壊する可能性が出てくるのだ。

 そもそも、日本の金融機関は、日本国債に見切りを付けつつあるという。

 経済評論家の藤田正美氏が言う。

「地銀関係者が“横にらみ”と言っていました。どこかが急に国債を売りに出したなんて話が出ようものなら、みんな一斉に売りに回るということです。それは暴落を意味します」

週刊朝日  2015年6月5日号より抜粋