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2015年7月16日。史上初の冥王星(めいおうせい)探査機ニューホライズンズが、冥王星に接近、横を通り抜けます。地球の5分の1しかなく、太陽の40倍も遠くにあるこの小さな天体の素顔が、明かになる瞬間でございます。それに先立ちまして、いままでに分かっている冥王星のあれこれを、サクっとチェックしておきましょー。

○1. 冥王星が発見されたのは20世紀の1930年。米国が初めて発見した「惑星」

発見したのは、米国のクライド・トンボーさん。米国アリゾナ州にある「私設」研究所であるローウェル天文台のスタッフでした。米国が「惑星」を発見したのは初めて。米国民はお祭り騒ぎになったそうでございます。また、天文台の創設者パーシバル・ローウェル(Percival Lowell:この時には故人)の夢をかなえた発見でもありました。

ちなみに、古代から知られていた5惑星に加え、天王星は18世紀に英国が、海王星は19世紀に英仏の科学者が予測してドイツがそれぞれ発見していました。また、最初の小惑星ケレスは19世紀にイタリアが発見しています。20世紀の大国米国のプライドをくすぐる発見だったのですねー。

○2. オリジナル名の「プルート(Plute)」は、11歳の女の子の発案

発見された「惑星」の名前はすぐには決まりませんでした。ニュースをおばあちゃんから聞いたイギリスの11歳の天文ファンの女の子ヴェネチア・バーニーちゃんが、ローマ神話の地獄の神様、プルートにしてはどうかと発案。それを周囲の大人がローウェル天文台に伝えたところ。いたく評判になり、採用されました。PLuteの最初の2文字がPercival Lowellのイニシャルになっているのもポイントだったそうでございます。ちなみにバーニーちゃんのおばあちゃんのお兄さんのマダンは、火星の衛星フォボスとダイモスの名前の提案者だそうです。へー。

○3. ディズニーのキャラの名前、そしてあの元素の名前にも。

ディズニーのミッキーマウスは1930年に愛犬が登場します。その名前がプルートで、これはもちろん新発見の「惑星」にちなんだものですな。ところで、プルートは、犬のキャラのグーフィーの愛犬になることも…

また、プルートは、1940年に発見された新元素の名前にもなっています。それが原子番号94番プルトニウムですな。ちなみに、天王星ウラヌスは、原子番号92番ウラニウム。海王星ネプチューンは同じく93番ネプツニウムの名前の由来になっています。そのほかに、水星の英語名マーキュリーは水銀のことですね。

○4. 冥王星という名前

これは、日本の野尻抱影さんという文筆家があてたそうです。天王星、海王星が、ウラヌス、ネプチューンという神様なのに「王」という名前を与えていますから、それにうまくならわせたものですね。

ただ、冥(めい)の字が難しいものですから、子供の図鑑などでは「めい王星」とかかれていて、まるでヤギかヒツジの王様みたいと思ったりされたのでした。

○5. 長らく、太陽系最果ての天体だったが、1979年〜1999年は海王星が最果てとなった。

冥王星は、平均すると太陽から地球の40倍離れた軌道をまわっています。30倍の海王星より3割も太陽から離れているわけですね。ところが、冥王星の距離は、最大太陽から29.5倍〜59倍も変化するのでございます。最接近時には海王星よりも太陽に近づくわけで、最果ての天体の座を海王星にゆずっていました。米国のボイジャー探査機は1989年に海王星の探査をしたのですが、その瞬間は「太陽系最果ての天体」を探査したことになったわけです。

○6. 海王星とは接近しない軌道

海王星と冥王星が、太陽からの距離で交差するってことは、ぶつかる心配があるんじゃね? という話になります。が、これはうまいこと避けられるのでございます。というのは、冥王星が海王星軌道との交差点にさしかかるころには、海王星はその近所にいないのですね。公転の周期が3:2になっているためです。「赤い惑星」さんの説明がわかりやすいですよ。

○7. とても暗い星、見つけたのは写真とアニメの技術

冥王星の明るさは13〜14等級程度です。これは、肉眼で見える一番暗い星の1000分の1というレベル。望遠鏡だと光を集めるレンズの直径が25cm以上は必要です。そんな暗い星を見つける決め手になったのは、写真とアニメの技術。2枚の写真を交互に見比べ、変化を調べる、つまりは2コマの動画にする機械(ブリンク・コンパレータ)が活躍したのだそうです。アニメのキャラの名前の由来の星は、アニメの技術によって発見されたのでございますー。

○8. だんだん小さくなる冥王星

冥王星は当初、地球と同じくらいの重さがあり、大きさもそう変わらないと考えられていました。ところが、調べるために見積りが小さくなり。いまでは、地球の5分の1の大きさ(月が4分の1なので、月より小さい)、重さは地球の500分の1であることがわかっています。なんでかというと、冥王星が予想以上に白くて、大きさの割に目立っていた(明るかった)のですな。化粧をしているとでもいいましょうか。しかも、冥王星には冥王星の半分ほどの大きさの衛星カロンがあり、カロンと冥王星をあわせた明るさを単体の明るさと見積もっていたためでもあります。遠目では、なかなか本当のことが分かるのは難しいものです。見積もるたびに小さくなるので、このままだと冥王星は1984年には消滅するというジョークがあったそうでございます。

○9. 冥王星は5つの月がある。

冥王星は、小さいくせに5つも月を従えています。1978年に発見されたカロンのほかに、21世紀になってからニクスとヒドラ、ケルベロス、ステュクスが発見されています。望遠鏡で見ても、表面の様子などはほぼなにもわからないわけでして、探査機ニューホライズンズによる詳細な情報が楽しみですねー!

○10. 2006年に、惑星でなくなる。

新しい発見は、時に過去の栄光をなかったことにするわけです。1990年代の終わりごろから、冥王星なみの遠いところに、小惑星が発見されるようになりました。かねてからそのあたりからやってくる彗星が多いことから予想されていたことでございました。2001年に発見されたイクシオンは、冥王星と同じような軌道をまわっていて、冥王星の半分ほどの大きさであることが判明しました。いうならば第二冥王星というようなものですね。それからセドナ、クアオアなど冥王星とほとんど同じくらいの大きさの天体が次々と発見されました。冥王星を小惑星の分類にすべきって話も出たのですな。

決め手となったのは、2003UB313のエリスで、冥王星の1.5倍ほど遠くを回る天体で、大きさは冥王星よりチョイ大きいくらいとわかったんですねー。これを第10惑星とする発表もあったのですが、じゃあ、チョイ小さいクアオアとかどうする? という話になったのですね? この絵を見るとウームと思いますよ。

そこで、2006年までに天文学者が教義し、惑星ってなに? という定義を考えることになります。日本からは国立天文台の渡部潤一さんが参加しています。最終的には国際総会にて「投票」が行われ、冥王星は惑星とせずに、ドワーフ・プラネット(後に準惑星)というカテゴリーに入れることが決まったのです。つまり、冥王星は「惑星」ではなくなったのでございますねー。

もっとも自然のことを「人間が投票」で決めるってのはどうなのよーという話もあります。まあ、生物の種も危うくなっているってはなしも前に書きましたし、自然はパチっとはわからんもんです。

いずれにせよ、新しい発見が、冥王星の見方を変えたわけでございまして、7月に冥王星に接近する探査機ニューホライズンズが何を教えてくれるのか、楽しみなわけでございますー。

著者プロフィール
東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。

(東明六郎)