■5月特集 いま見るなら、女子ゴルフ(6)

 日本女子ツアーの2014年賞金女王はアン・ソンジュ。今年も今のところ、イ・ボミがトップを走っている。さらに、日本ツアー初出場でいきなりメジャー大会、ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ(5月7日〜10日・茨城GC東コース)を制したチョン・インジや昨年度の韓国ツアー賞金王、キム・ハヌル、ここ3週ベスト10入りのジョン・ジェウンなど、韓国人選手の活躍が相変わらず目立っている。

 この強さの要因は? 素朴な疑問を1994年から日本ツアーに参戦して8勝を挙げ、現在は韓国人選手のよき相談相手になっているコウ・ウスン(高又順)さんにぶつけてみたところ、3つの大きな要因を挙げてくれた。さらには、今シーズンの展望、韓国人選手に対抗できる有望株の日本人選手についても語ってくれた。

●競争社会

 韓国はものすごい競争社会です。日本でも韓国の受験競争の激しさが報道されますが、その競争を勝ち抜いて、一流企業に入れたとしても、そこでも競争が待っている。生き残りのためには常に『強くなるしかない』のです。子供の頃からそういう教育をされているから、韓国人は勝ち負けにとてもこだわります。

 アン・ソンジュ、イ・ボミ、申 ジエは、ジュニア時代から韓国でもビッグ3として有名で、韓国の試合でマッチプレーなんかで負けたら、家族みんなで林の中で号泣しているんですよ。それくらい韓国人同士のライバル心はすごい。そう、日本は韓国よりも国自体が裕福だし、お互いライバル心を持つような国民性ではないのかもしれないですが、そのあたりが、最後の勝負強さの差になっていると思います。

●体の強さ

 私が思うに、残念ながら日本の選手は男女とも韓国の選手に体格や体力は負けています。まず骨格が違いますね。韓国では子供の頃から発育を促進するため、漢方サプリを調合して飲ませます。100種類くらいの成分が入っていて、中には高級素材の高麗人参が入っているものも。韓国のプロゴルファーほか、アスリートたちは、こういった漢方サプリを飲んでいます。それで体格がガッチリとしているし、体力的にも強いんです。

 アン・ソンジュやイ・ボミは最終日にスコアを大きく伸ばせるし、プレーオフの勝率が高いので、彼女たちのメンタルの強さが指摘されます。、でも、メンタルと言うのは体力があることが前提になります。18ホールを終えて、まだ体にパワーが残っていて、脳に酸素が行き渡り集中力も切れないわけですから。逆に最後のハーフで成績が落ちやすい選手は、体が弱いんですよ。

 最近は、女子プロゴルフの世界でも筋力トレーニングをする人が多くなりましたね。日本人選手は特に熱心にやっています。でも、あまりに熱心だから、いざ本番の試合で疲れちゃうのでは? 韓国人選手は月曜日、もっぱら体のケアに充てます。だから若い日本の選手に私は「月曜日は休養日にして、ビールでも飲んで遊べば」と言うんですよ(笑)

 実際、強い選手は切り替えが上手。アン・ソンジュなんて試合のない時は練習もしないですから(笑)。好きなショッピングをしたりして、リラックスしていると聞きますよ。でも彼女は試合になると、すごい集中力を発揮する。昨年25試合に出場して5勝もしたんです。まさに切り替え上手な選手です。もちろん、アンちゃんもジュニア時代は過酷な競争に勝ち抜いてきたから、今の彼女なりの調整法が出来るんですよ。

●育成システム

 韓国はナショナルチームが選手育成に力をかなり入れていて、メンバーになれば、それこそ、コーチが付くし、トレーニング、栄養面、強化費用など、すべてのサポートが受けられる。だからンショナルチームに入るための競争は熾烈です。

 もちろん、最初から強い子供はいませんから、それぞれの家庭でお父さんが教えたりして始めるわけです。練習場は日本よりも高いくらいだからお金は掛かります。でも、そのうちに頭角を現せば、タダで練習場で球を打たせてもらえるとか、ゴルフ場で手伝いをした後にハーフを無料で回らせてくれるとか、普通の家庭の子供もナショナルチームを目指せるようにはなっています。

 そういったジュニアの子たちの練習量はすごいです。朝6時半にオープンする練習場の前には、6時からダァ〜っと親子連れでジュニア選手が並ぶんです。練習が始まれば、打席の後ろでお父さんが見ているのだから、子供たちはメールや電話も出来ないんです。いいか悪いかはわらないけど、でも10代の伸び盛りの時には、そういう時期が必要で、プロになれたら、オンとオフを切り替えて上手くやっていく。それが韓国人選手の強さなのかなと思います。

 1998年の朴セリの全米女子オープンでの優勝を見たお父さんが、娘にゴルフをやらせて育った子らが『パクセリキッズ』で、それがアンちゃんやイ・ボミ、申 ジエたちです。そのパクセリキッズ以降の世代も選手は育っていて、今すぐにでも日本のレギュラーツアーに出られるレベルの20歳前後の選手が韓国には500人くらいいると言われています。日本のツアーは魅力的ですから、これからも韓国人の若手がどんどん参戦してくるでしょう。

●賞金女王の行方、そして注目の日本人選手

 ちょっと早いけど、今年の賞金女王争いはどうでしょう。私は、今の調子で行けばイ・ボミが70%獲るかなと思います。申 ジエも日本の賞金女王を今年は狙っているでしょうね。アンちゃんも結婚してラブラブモードですが、これから力を出してくるでしょう。このビッグ3に日本人の中で誰が絡んでくるかが、見どころです。

 去年のツアーが終わった時点では、私は香妻琴乃に期待していたんですよ。あの子はパターとアプローチが半端じゃなく上手いです。特にパッティングのストロークはいい。それに体は小さいけど、性格が強気で根性がある。ああいう子は強いです。上手いだけじゃ勝てない。あの子が去年のようなパッテッィングストロークが出来れば、後半はイ・ボミを脅(おびや)かすゴルファーになると思いますよ。

 成田美寿々もいい体格をしているし、ショットも飛ぶし全体的にはいいんだけど、パッティングがダメですね。パッティングだけちょっと私が教えたいなって思うくらい(笑)。それがよくなれば毎週、優勝争いをしてきますよ。

 菊地絵理香もいい体をしています、お尻と足と、最高ですよ。イ・ボミみたいに下半身が安定していますよね。この子はやっと優勝(4月17日〜19日KKT杯バンテリンレディスオープン)しました。性格的に根性があるけど、少し優しすぎるかなぁ。もっと強気になってくれば。今年はもっと成長していいと思いますね。

 藤田光里は2013年にQTで一番になったけど、その時は、たまたまかなと思ったんですよ。華奢だし、かわいいいから(笑)。でも、この前フジサンケイレディスクラシック(4月24日〜26・川奈ホテルゴルフコース 富士コース)で勝った時、この子は根性ある、強いなと思いました。最終日18番ホールのエッジからのバーディーパットを入れなければ、6人のプレーオフになることを知っていて打ったんですからね。あれを入れ切るメンタルの強さはすごい。でも今年、もう1回勝たないとダメです。優勝の間が開くとよくない。

 原江里菜がそういう状況でしょう。彼女もいい体をしているし、性格もいい。ゴルフも上手いんですよ。もう2〜3勝すればスーパースターになれるのにと思っているんですが、何かちょっと足りないのかなぁ。

 鈴木愛も去年の日本女子プロゴルフ選手権(2014月10日〜13日・パサージュ琴海GC)に勝った時はいい感じだったのに、最近ちょっとダメですね。まだ燃え尽きるのは早いでしょうに。私もそうでしたが、メジャーを勝ったときの、その嬉しさは半端じゃない。お金なんか要らないから、またあの試合で勝ちたいと思いした。だから日本の選手は、欲が少し足りないのかもしれないですね。

 渡邉彩香は今年、通算2勝目(4月2日〜5日・ヤマハレディスオープン葛城 葛城GC)を挙げましたね。彼女はティーショットの飛距離が出るし。ツーオンを狙ったり、ピンをデッドに狙うことはいいんですけど、少しコースマネジメントが足りないかなと感じます。それができれば毎週、優勝争いに顔を出してきそうです。

 ツアーは日本人選手が強くなって、日韓対抗戦の様相を帯びてきたら、さらに盛り上がるはず。私は心から日本人選手を応援していますから、頑張ってもらいたいです!

【プロフィール】
※高又順(コウ・ウスン)
1964年4月21日生まれ。
高校卒業後18歳でゴルフを始める。2年後に韓国のプロテストに合格。89年から4年連続で賞金女王に。93年8月に日本のプロテストに一発合格。翌94年にレギュラーツアーに参戦し、4試合目という異例の早さで初優勝を果たす。2002年には日本女子オープンを制覇。これまでにツアー8勝を挙げている。現在はレジェンズツアーを中心に参戦中。韓国人選手はもちろん、日本人の若手選手からの信頼も厚い

古屋雅章●文 text by furuya Masaaki