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今お墓に何が起こっているのか、『葬式は、要らない』(幻冬舎新書)、『0葬 ――あっさり死ぬ』(集英社)などのベストセラー作家で、日本の葬儀・弔いのあり方に一石を投じてきた宗教学者・島田裕巳先生が執筆した、『お墓の未来 〜もう「墓守り」で困らない〜』(マイナビ新書)が、5月23日(土)に発行された。この本の中で、最近何かと話題が多い「お墓」の諸問題をまとめ、解決策を提示している。都会に家を建ててしまったけれど、故郷の墓はどうすればいいのだろうか。島田先生にその解決策をインタビューした。

――島田先生の新刊『お墓の未来 〜もう「墓守り」で困らない〜』では、これまで当たり前の存在だったお墓を管理する人=「墓守(はかも)り」がいなくなることによって起こる問題を中心に解説されています。「墓問題」について、どのような問題が起こっているのか、教えていただけませんか?

これからお盆の時期を迎え、テレビや雑誌などでお墓の話題が増えていきますが、最近は「無縁墓が増えている」ことと「新しい葬り方が増えている」ことがよく話題になります。 そうすると、みんなが「お墓をどうすればいいの?」という不安を抱くようになります。 今はまだ、意外と若い頃にお墓を買っていたり、故郷に墓があるからと安心したりしている人も多く、お墓を維持していくことの大変さをわかっている人が少ないんですね。 それがわかるのは、実際に親が亡くなって、葬儀をしたり、埋葬したり、都会でお墓を買ったりして、初めて「こんなに大変なことなのか!」と、気づくわけです。そうすると、自分の子どもにはこんな経験をさせたくないと思うわけです。

――確かに、自分の両親が亡くなるまで実感できないかもしれません。お墓を継ぐという意識もありませんでした。

人が亡くなると、相続という問題が起こり、いろんなことがそこにかかわってきます。 特に団塊世代で、都会に家を建てて故郷に帰らなくなった人が増えているわけですが、そうした中には将来的に「実家の片づけ」を考えなければいけない人も増えています。同じように「墓じまい」という言葉も使われ始め、話題になるようになりました。ですが、本の中でも解説しましたが、墓というものはやっかいなもので一度つくってしまうと、簡単になくすことができません。 まだ、その世代は「なんとかしないといけないな」と思いがちです。でも、さらにその子どもの世代になると、故郷にある墓を面倒見ることに疑問を感じるようになります。 今あるお墓の1番の問題は、「故郷にある墓が維持できなくなっている」ことにあります。

――確かにお墓が問題になっているのだとは思いますが、それは人口減少に悩む地方や、「無縁化」してしまった一部の人の問題なのではないでしょうか?

今、自分の将来がどうなるのか、考えることがむずかしくなっています。例えば結婚しなかったらどうなるのか? あるいは、結婚して、家庭をつくって、子どもがいて、年をとって…・・・自分が80歳、90歳になる、そういうことをなかなか考えられないわけです。 医療の発達や社会の変化により高齢化社会になったことで、新しい事態が生まれているわけです。そのため、昔の考え方が通じない、一時当たり前と思われていたことが当たり前ではない社会になりつつあります。

――なるほど。だからこそ、墓の問題を今、考えなければいけないわけですね。

日本の墓は「家」単位でできていて、家が続くことの象徴として墓があります。ですが、今は家の役割が小さくなってきていて、制度がズレてきている、でも簡単になしにすることができないわけです。将来にわたって若い人が墓の管理を維持しなければならないということを、今、考えなければいけないんです。時間がたてばたつほど解決できなくなります。

――とはいっても、やはり習慣や伝統は守るべきという考えもあると思うのですが?

例えば、今「夫婦別姓」が最高裁で審理されていますが、その場合には何々家の墓といった話も通じなくなります。従来の家のあり方が変わるのに、墓のあり方が変わらないわけにはいきません。 かつてのように、妻が同じ墓に入るのが当たり前、今までの墓のあり方がこうだから、ということを後を継ぐ人が受け入れてくれないわけです。 習慣や伝統といっても、実は最近生まれたのものだって多いんです。日本は火葬率が99%を超える「火葬大国」ですが、日本で火葬が普及したのは戦後です。クリスマスだって、昭和20年代の頃は男性がバーで騒いで祝うものでした(笑)。社会の変化ともに習慣だって変わるべきです。 しきたり=伝統という考えが間違っていて、しきたりは時代にあった新しいものなんです。 しきたりが時代にそぐわなくなって家族や親族の間で問題が起こるのであれば、新しいしきたりを考える必要があります。

――時代にそぐわなくなった墓のあり方を、変えていかなければいけないわけですね。

今、社会がすごく変わってきています。勢いが激しい。人口の減少がますます本格化してきて、2040年には、年間約167万人が亡くなって、生まれてくる数が66万人しかいなくて、毎年100万人ずつ減少していくと予測されていて、想像もつかない事態です。消滅するのは地方や故郷だけでなく、日本全体が消滅しかねないわけです。

今の人は世間、共同体の中に生きていなくて、ノマド※という言葉がありますが、ノマド化、個人化しているんです。家社会と言われていたものが、もうなかなか言えなくなっていて、今の日本人はどう生きるべきかを、考えなくてはいけなりました。

個人としていろいろなものにしばられない、自由を尊重する方向に進んでいる社会の中で、家を持たない、墓を持たない生き方のほうが、時代に即した生き方になるかもしれません。

ですが、墓は簡単に片づけられるものではありません。墓石はどうするのか、墓地をどうするのか、檀家をどうするのか、墓は簡単になしにできません。

もっと、「墓ってなんなの?」ということを自分自身が考える必要があります。自分たちを幸せにする墓のあり方、この本を参考にあなた自身の墓をどうすることが理想なのか考えていただきたいです。

※ノマド:英語で「遊牧民」の意味。クラウド環境を駆使してオフィスだけでなくカフェなどのさまざまな場所で仕事をする、新しいワークスタイルを指す言葉。このような働き方を「ノマドワーキング」、このような働き方をする人を「ノマドワーカー」と呼ぶ。

『お墓の未来 もう「墓守り」で困らない』
執筆:島田裕巳
価格:918円/税込み
新書判:216ページ
ISBN:978-4-8399-5496-3
発売日:2015年05月23日
シリーズ名:マイナビ新書
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