ツアー最終公演を行ったwacci。笑いあり涙ありの全15曲を熱唱した

 男性5人組ポップロックバンドのwacci(ワッチ)が24日、東京・恵比寿ガーデンホールで全国ツアーのファイナル公演を開催、本編15曲を熱唱した。ボーカル&ギターの橋口洋平は「これまでとは一味違った凄く良いツアーになりました。僕らと一緒に素晴らしい景色を作ってくれてありがとう」と感無量の様子で、ファンに感謝の言葉を捧げた。また、8月5日に自身5枚目となるシングルをリリースすることを発表した。

 『あっち、こっち、そっち、わっちツアー2015春 〜眺めたい景色をたずねて さあ千里!〜』と題して行われた今回。過去2度のツアーよりも公演数を1つ増やして全国7カ所7公演を回った。各地、ファイナル公演のつもりで全力で歌を届け、各地多様のステージでそれぞれの景色を見てきた。そして、この日、ファイナルを迎えた。

 会場の全ての明かりが落とされると、ステージ上にメンバーが浮かび上がった。自然と手拍子が起こり、BGMの音量がマックスになるやいなや突然の消音。村中慧慈によるギターの綺麗なアルペジオがメンバーのコーラスをいざなう。優しく奏でられると、橋口が人差し指を天高くつき指し「ツアーファイナル」の掛け声とともに白光が会場を一気に明るくする。そのタイミングで1曲目「ここからはじめよう」が始まった。

 心躍るように音も弾けたナンバー。曲中「色んな所へ行って帰ってきたよ。ただいま」とファンに挨拶。その呼びかけに答えるようにファンも歓声や動きで示していた。

 「ツアーを回ってかなり気合を入れてここに立ってます。皆さんの気合はどうですか?」という問いで始まった2曲目「誰ニモマケズ」はよりポップなナンバー。爽快で心地よいメロディに打たれるファンは、まるでそよ風に揺られる花のように気持ちよさそうに左右に揺れていた。橋口も「これなら歌えるでしょ。二番からよろしくね」と共に歌うことを求めた。

 間髪入れずに3曲目「おつかれさん」。気持ちが良いギターサウンドがメロディを導く。ここでも「覚えて」と橋口。パートソロでは優しく音を立てるキーボードに対し、ギターはロックサウンドで煽る。そして、時折見せる橋口のハスキーなボイスは女性の心を突いた。ファンと楽しむ事を意識してか、何度もサビ部の歌唱を促し距離感を縮めていた。

 挨拶代わりに披露されたポップナンバーはあっと言う間に過ぎ去り、ここで一呼吸のMC。定番の「こんにちわっち」でファンとの絆を確かめると、橋口は「眺めたい景色を訪ねて三千里。きょうファイナルです。各地では本当に眺めたいと思った景色を眺めることが出来ました。毎公演がファイナルのつもりでやってきました。今日も皆、テンションが良いので燃え尽きましょう」と語った。

各地で良い景色が見れたと感謝した橋口

 4曲目から興奮した気持ちを落ち着かせるようにバラード曲が続いた。「ありがとう」に「桜の雨」、そして「ふわり」。優しいメロディに青紫色のスポットライトは桜を模写し、アコギの乾いた音色は春のような爽やかな風を送り込んだ。

 「キラメキ」では「曲は皆に聞いてもらって成長するんだなということを実感します。今日初めて出会った人、そしてこの曲が知られる前から応援してくれている人に感謝の気持ちを込めて送ります」と語り歌い捧げた。これら4曲を含めバラード曲は別の楽曲と異なり、一つ一つ歌い終える度に明かりが落とされていた。一つ一つの楽曲の想いを大事に届けるためにあえて区切りを入れているようでもあった。

 バラード4曲を終えて改めてMC。ここでは、全国ツアーで回った各地での思い出話やメンバーの個性などの面白エピソードを紹介。トークでは和やかな雰囲気のもとに笑いを誘った。ファン層の幅広さも考慮してか、着座も促した。

 座ったままの落ち着きのある雰囲気のなかで橋口は以下の通りに語り、8曲目「君を送る」を披露した。

 「僕らが初めてミュージックビデオを作った楽曲を届けたいと思います。歳を重ねるごとに思う事があって、無理しても虚勢を張らないといけない事が増える。寂しいとすがり付きたくても気持ちを殺して、虚勢を張ってさよならと言わないといけない。そうした場面が増える。そういう時にこの曲がそばにあったら」

 ボーカルの熱い想いが込められた楽曲に、涙を拭うファンの姿もあった。心の内から届けられる楽曲。圧巻の歌唱力と相反する甘い声。一度だけ声が裏返ることもあったが、それはより橋口の歌に対する本気さを伝えるものとなった。

涙を流すファンもいた

 「東京」の後には、活き活きとしたサウンドの「ケラケラ」。「生きていればいろんなことがありますが、笑っていればなんとかなると信じて」。先ほどのバラード曲でメッセージを伝えきったかのように、過剰な力を省いた自然体のボーカルとメロディ。それは、満足感に満ち溢れているようでもあった。

 再びのMCでは、全国ツアーで4000キロメートルを車で移動したことなどを報告。仕事の都合で飛行機と新幹線を使用した橋口は、飛行機内で起きた話で笑いを誘った。その笑いからリズムとってBlues Brothersの曲に乗せたコールアンドレスポンス。そして、いよいよ終盤へと入る。

 NHK BSプレミアム『七人のコント侍』エンディングテーマに起用された「まっぴら!」から始まると、これまたTBS系ドラマ『東京スカーレット〜警視庁NS係』OPテーマ「リスタート」などタイアップ曲のオンパレード。ベース小野裕基とギター村中は互いに見あって演奏したり、世界一難易度の低いダンスをファンと一緒に踊るなど、一体感も見せた。

 村中が一人何役もこなしたラジオドラマ仕立ての演出で会場をにこやかにさせると、その流れで「Weakly Weekday」。定番のフリでファンと共に楽しむと、ブラックミュージックのノリでちょっと変わったセッションタイム。14曲目では南国の風を感じる「同じ空の下」で沸かせた。

 彼らの魅力の一つに緩急の良さがある。ポップに弾けたかと思えば、一息に引き込むボーカルとサウンドの表現の巧みさ、そして観客の心を引き込む強さ。この日も緩急ある演出でファンを魅了した。

 そして三度のMC。橋口は「3度目だけど一味違った凄くいいツアーになりました。みんなが誰一人欠けても同じライブはできない。素晴らしい景色が見れたと思います。ぼくらと一緒に景色をつくってくれてありがとう」と感謝。更に「僕らはまだまだ沢山の人に知ってもらいたい。たくさん届けていかないと。そのなかで僕らの楽曲に出会えるのはすごい確率で。そしてそのひとりひとりがこの空間で一緒にいるのは奇跡。この結び付きがいつまでも続きますように、そう思って届けます」と、めいっぱいの感情を込めて「結」を披露した。

 アンコールでは、「ぼくらが音楽を始めた頃に抱いていた夢はまだ近づけていないけど、今はその過程。こういう日があるからずっと続けられるような気がします。ありがとう。大事に歌います。決意を込めて」と「羽田空港」を熱唱。最後は明るくポップなナンバー「サヨナラ」を歌い、ツアーを締め括った。  【紀村了】