「マクハリ・ターン」で失格になった唯一の日本人パイロット、室屋義秀選手(2015年5月、関 賢太郎撮影)。

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今年5月に、日本で初めて開催された「レッドブルエアレース」。その選手たちは「マクハリ・ターン」に苦しめられ、唯一の日本人パイロット室屋選手もそれで失格。涙をのみました。この「マクハリ・ターン」を制するものが千葉の空を制す、といっても過言ではないでしょう。

室屋選手を襲った「マクハリ・ターン」

 2015年5月16・17日、幕張海浜公園において開催された「レッドブル・エアレース千葉 2015」。幸い天候も恵まれ、12万人にも達する観客を集め大盛況のうちに終了しました。

 優勝はイギリスのポール・ボノム選手(51.502秒)。オーストラリアのマット・ホール選手を0.382秒の僅差で抑え、通算17勝目という圧倒的強さを、千葉においてもまざまざと見せつけました。

 唯一の日本人パイロットであった室屋義秀選手は新型機「EDGE540 V3」を駆り、満を持して挑むも、ラウンド・オブ・8においてボノム選手と対戦、「オーバーG」によるペナルティでDNF(失格)となり、残念ながらラウンド・オブ・4(決勝)進出はなりませんでした。

 今回のエアレースは国内初となる記念すべき大会だったため、全ての選手は未体験のレーストラックを飛行しました。

 当初、千葉のトラックレイアウトは比較的難易度が低いとみられていました。というのも直線部分が多い細長い形状で、比較的シンプルなパイロン・ゲート配置であったためです。

 しかし、実際に飛行した選手にとってはどのような印象を受けたのか、今回3位で表彰台を獲得したマティアス・ドルダラー選手(ドイツ)は、大会後の記者会見において以下のように述べています。

「難易度が低いように思われたが、非常に高速なコースであり、コース両端でのGの負担が大きかった」

 千葉のトラックはシンプルな分、レーサー機は高速度を発揮しやすく、またトラックの両端で180度折り返しを必要とするレイアウトから、高いG(遠心力)に晒される旋回を数秒間、しかも2度も行わなくてはなりませんでした。

 この「マクハリ・ターン」とも呼ばれた2度の180度旋回において、涙をのむ結果となってしまったのが、室屋選手でした。ターンは高いGをかけたほど素早く回れます。しかし安全性への配慮から10Gを超えてはならないというルールがあり、室屋選手はここで「オーバーG」をしてしまったのです。

「マクハリ・ターン」を制するものが千葉を制す

「ポール・ボノムと戦うことが分かっていたので、チームとして全力で挑みました。100%で抑えられず、101%のちからを出してしまったので、オーバーGしてしまいました」

 室屋選手は失格になってしまったラウンド・オブ・8おけるレース展開を、このように語りました。

「マクハリ・ターン」を素早く抜けるには、高いGが引き起こす「ブラックアウト」と呼ばれる視界喪失・失神に耐えながら、10Gを0.1Gもオーバーすることなく可能な限り制限Gに近づけるという、繊細な操縦が要求されます。

 その結果として、各選手のライン取りにおいても大きな差が生じました。上昇しつつターンし速度を落として旋回率を稼ぐ選手や(低速であるほど同じGを掛けた場合でも素早くターンできる)、できるだけ水平にターンし速度喪失を最小限にする選手など、機体特性にあわせた飛行をコンピューターによって解析し、それぞれ最適と思われるフライトをみせました。

 高速で折り返す二度の「マクハリ・ターン」は、レッドブル・エアレース千葉大会において、各選手の命運を分けた最大の見せ場だったのではないでしょうか。

 レッドブルおよび地元自治体ではまたこの千葉での開催を目指しており、きっと来年以降もエキサイティングなレースが展開されることになるでしょう。

 なお室屋選手は、初戦となるラウンド・オブ・14において50.779秒のコースレコードを叩き出しました。第2回レッドブル・エアレース千葉において、室屋選手が「マクハリ・ターン」を制し、表彰台の頂点に君臨する可能性は十分にあり得えます。

 レッドブル・エアレース次戦は、5月30日・31日にクロアチアのロヴィニで開催されます。千葉とは全くことなる周回トラックにおいて、室屋選手らがどのような健闘を見せるのかが注目です。