「2ちゃんねる」上で脅迫された佳子内親王(YouTube「FNNnewsCH」より)

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 巨大ネット掲示板「2ちゃんねる」上で佳子内親王を脅迫したとして、20日夜、東京・大久保在住の男(43)が逮捕された。佳子内親王を名指しして「逆らえないようにしてやる」「ICUには同志の仲間がたくさんいる」と書き込み、皇宮警察の警備を強化させるなどした偽計業務妨害の疑い。報道によれば、男は調べに対して「警察の業務を妨害するとは思わなかった」「スレッドを盛り上げるための悪ふざけだった」と話しているという。

 警視庁の対応もやや過剰だと思うが、もっと唖然としたのは、この犯人逮捕の報道後、すぐさまツイッター上にこんなカキコミがあふれたことだ。

「新宿区大久保在住で皇族を脅迫って...朝鮮人しかいないだろ...」
「佳子様を脅迫した犯人を 日本人かのように報じてますが 通名報道の可能性が高いかも 住所→新大久保コリアンタウン 無職→彼らの3分の2は無職」
「佳子さまを脅したのは、新宿新大久保の日本人成りすましの在日朝鮮人らしい。乗っ取られ日本マスゴミは通名報道」
 しかし、本サイトが容疑者のものとみられるツイッターアカウントを調べてみると、そのプロフィールには「行動する保守運動支持」との自己紹介が。さらに、頻繁にこんなツイートを投稿した形跡が見られたのである。

〈これ迄、日本人の無関心、日本人の和を尊ぶ国民性につけこんで、どれだけ反日在日、外国人、サヨク、メディアが跋扈していたか! こいつ等は弱者を騙る敗戦利権既得者共だ〉(2013年1月16日)

〈結局暴力反原発、不逞在日、慰安婦と ぜーんぶ繋がってますがな〉(13年2月18日)

〈韓国や在日韓国朝鮮コミュニティが嫌いな最大の原因は、彼等の社会に日本に関して『反日』というキーワードで思考停止し自浄能力が全く働いてないところ。強制連行や従軍慰安婦など次から次へと嘘の上塗りをして、日本人が怒らないと思っているのは正気の沙汰ではない。そこんとこわかってる?〉(13年4月2日)

〈朝日新聞はもはや新聞ではない。というかずっと前からだか。
朝日新聞は単なる反日原理主義者の機関紙にすぎない。反日原理主義で有ることが利である団体、個人が崇拝しているだけ。カルト宗教と全く同じ。
彼等は自分に異を唱えるものは全て敵対視し攻撃を加える〉(14年8月22日)

(沖縄の反基地運動として他のユーザーが提示した写真を引用しながら)〈沖縄の朝鮮左翼? いや、支那人に行動が似てるな。人の車に勝手にのっかり、勝手な主張。悪い奴らだ。"うわぁ〜(; ̄ェ ̄) 仮に同じことされたら間違いなくマジギレしてこの婆ブン殴ると思う...〉(14年6月30日)

 実際、男は、行動する保守系のデモに何度も参加希望を表明していた。在特会前会長・桜井誠氏についても賛同の姿勢を示し、〈異常反日国家に対して、日韓友好を呼びかける者は精神異常者か犯罪者かのどちらかです〉というツイートをリツイートしたり、また、こういう投稿をしたこともある。

〈私は闇雲に朝鮮人は全員悪という主張は賛成できない。しかし在特会の会長である桜井さんは筋が通っていると思う。在特会の活動自体は是々非々があるものの、彼の著書を読んだことがあるが朝鮮人や朝鮮文化、在日問題に関しては造詣が深いと感心するしその行動力は見習うものがある〉(14年7月16日)

 一方、サヨクは生理的に嫌いだったらしい。

〈純粋にサヨクの人に聞きたい なんでお風呂に入らないの? もしくはお風呂に入れないの? 先日サヨクの集会を偶然見たけど、もうクサイ、クサイ、クサイ 煽り抜きで、本当に臭い。・°°・(>_<)・°°・。〉(12年11月30日)

 このように男は、明らかに在特会ら行動保守にシンパシーを感じ、ヘイトデモに賛同し、「サヨク」や朝日新聞を嫌悪し、「在日特権」というデマを信じ込む、ネット右翼の典型のように見える。

 そして、気になるのは、安倍首相に関連するツイートだ。安倍首相のTPP交渉に関するブログらしきものを読み〈これは絶対によんだほうがいいよ!いかに安倍さんがいかに凄いかがわかる。賢い人だ!〉と絶賛するユーザーに対して、〈この方とほぼ同じ見解です〉という返信をしている。

 またニュース記事を引用し、〈最高!! 安倍首相演説会..中国や韓国の記者も参加を希望したが、認められなかったという〉というツイートに対しては、男は〈やっぱりね、一度挫折して這い上がってきた経験はでかいね〉と好意的な感想を述べている。

 13年2月の日米首脳会談については、こう安倍首相を評価。

〈安倍首相ですが予想以上の成果でしょう。なにしろ日本のTPPを参加する場合の基本姿勢を反映したことだ。これで他の交渉国は「日本だけ例外を認めるのか?」という声が出るのは想像に難くない。大きなアドバンテージ。緒戦は日本が先手取ったとみていい〉

 こうなってくると、男の安倍首相像が気になるところだが、古い投稿を読んでいくと、それはおぼろげながらも見えてくる。

〈椎間板ヘルニア、鈍痛続いて拉致があかないんで、ブロック注射してきました。職場に行きたいが、先ずは治さなきゃ。早くバリバリ仕事したいけど回り道なんないようにしなきゃ。正直安倍さんには今の自分の姿、投影してちょぴり勇気をもらった〉(12年12月17日)

 また、他のユーザーとの会話で、安倍自民党支持を表明したこともある。

〈お初です。(朝日新聞は)完全にアタマいかれてますな。取り敢えず、今は安倍さん初め保守派に選挙で勝利するよう国民で護り、時が来たらこいつら売国奴を根絶やしにしなけりゃね〉(12年11月30日)

 はたして、こうした安倍首相へのシンパシーはどう分析すればよいのか。やはり、我が国の首相には、ネトウヨを惹きつけてやまないものがある、ということだろう。

 と、そういうふうに言うと、かならず返ってくるのが、「なんでもかんでも安倍首相に結びつけるレッテル貼りだ」という台詞だ。もちろん、そんなことはわかっている。安倍首相を支持してる者が全員ネトウヨというわけではないし、皇族を脅迫するわけでもない。

 しかし、その「なんでもかんでもレッテル貼り」をやっているのはまさに、安倍首相を支持するネトウヨのみなさんである。今回の佳子内親王脅迫の件で出頭した男を「通名を使った朝鮮人」などとデマを振りまいた人々のことを考えてもらいたい。その論理は、「新大久保に住んでいる」「無職」だからと、まったくもって無茶苦茶。しかも、男がネトウヨ的思考を持っていたことが判明しつつあるにもかかわらず、それでもなお「皇族脅迫は、ネトウヨになりすました朝鮮人の仕業だ」などと言っているのだ。

 こうしたトンデモデマがネット上ではびこり、鵜呑みにする者が出てくることで、また新たなネトウヨが誕生する。そして、自ら"敵"を捏造して、デマを流し、憎悪を煽っていくようになるのである。

 この負の連鎖を断ち切るためには、ひとつひとつのデマを徹底的にツブしていくしかない。
(小杉みすず)