「ニコニコ動画」の在特会公式チャンネルを突然閉鎖したドワンゴ(株式会社ドワンゴHPより)

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 5月19日17時頃、本サイトは「ニコニコ動画」がヘイト市民団体「在特会」の公式チャンネルを閉鎖し、在特会側に通告したというニュースをいち早く報じた。そのなかで、「ニコニコ動画」が閉鎖にふみきった理由として、コンプライアンス違反があった可能性と、背景にニコニコ動画を運営する株式会社ドワンゴがKADOKAWAと合併した社内事情があることを指摘した。

 しかし、この本サイトの記事にまっさきに噛み付いた人物がいる。ドワンゴ代表取締役会長にして、KADOKAWA・DWANGO代表取締役会長に就いている川上量生氏だ。

 川上氏のツイッターアカウント名が「@kadongo38」であることは公然の事実。氏は本サイトの記事に対し、こんなツイートを投稿したのである。

〈無茶苦茶な記事だなあ。こんなことわざわざ役員会で決めるわけないじゃん。憶測もすべて的外れ。〉

 ああ、そうなのか。「的外れ」なのか。ならば、このタイミングでなぜ、突然"在特会切り"をおこなったのか、ぜひ聞かせていただきたいところだが、しかし、ドワンゴ側は新聞社などの取材にたいし「具体的な事項についてはコメントできない」と、ノーコメントの一点張りだ。

 在特会側は本サイトの報道後、ホームページで、〈本日ドワンゴより「規約違反」を理由に「チャンネル閉鎖」の通告があり、公式チャンネルページも削除されました。具体的な説明は一切ありませんでした。〉と発表したが、ドワンゴは今にいたるまで閉鎖の事実すら公式発表していない。

 しかも、それでいて、川上氏はツイッターで他にも不可解な言い訳を口にしている。本サイトの記事を否定するツイートをしたあと、閉鎖問題に対する一般ユーザーからの追及に答えるかたちで、こんな投稿を連続で行っているのだ。

〈ほんとこのひとみたいなしばき隊の連中はどうしようもないな。事が終わってから、一生懸命名誉毀損しようとしている人間がなにをいっているのかw。〉
〈しばき隊界隈のひとたちは自分たちの活動の成果としたいのか、いまさらながら、また騒いでいるけど、彼らが存在しなければ、もっと早くに在特会チャンネルは閉鎖されていたでしょう。あんなのがいるからややこしくなった。〉

 つまり、しばき隊がいたから在特会チャンネルを閉鎖できなかったってこと? しばき隊は在特会を批判している側なのに? いったいどういうことなのだろう。ちょっと意味がわからないので、川上氏のいうところの「しばき隊界隈」であると思われる反レイシスト行動集団C.R.A.C.にあててみた。

「理解できないですね。たしかに、C.R.A.C.はツイッター上で川上氏と『差別を放置し、容認するのか』という点で議論したことがあります。でもそれは『ニコ動』が在特会公式チャンネルを設置する前。しかも、それ以前の2013年から『ニコ動』のコンテンツ全般にたいして、差別を扇動する内容をドワンゴの規約に従ってなんとかしろと、男組をはじめ反レイシズムのカウンターの人たちが抗議してきた。ここがポイントで、つまり在特会公式チャンネル云々という以前の話なんです。だから『公式チャンネル』のせいで抗議が起こり、角川と合併したドワンゴが対応した、ということにはなりません。それを『しばき隊がいなければもっと早く閉鎖された』などというのは意味がわからない。池乃めだか的なアレでしょう」(C.R.A.C. 野間易通)

 池乃めだか的かどうかはともかく(笑)、川上氏の発言はどうやら無根拠な八つ当たり、責任転嫁と考えていいだろう。

 しかも、川上氏は22日の朝になって、さらなる八つ当たり発言をしている。クリエイターにはマーケティングが必要だという話から、なぜかいきなり〈そういえば世の中になにを伝えたい、伝えようとしているとかということで考えると、しばき隊界隈の連中の最悪さがよく分かる〉と、しばき隊のことをもちだし、こうツイートしたのだ。

〈彼らの一生懸命に世の中に発信しているメッセージで意味のある部分を解釈するとこうなる。「おれたち面倒くさいよ」。まあ、やくざとか総会屋とかと同じ。〉

「やくざや総会屋と同じ」って、「名誉毀損」しているのは川上氏のほうだと思うが、しかし、そもそも川上氏が何を言い募ろうと、今回の問題はドワンゴが招いたものであることはまぎれもない事実だ。

 在特会前会長の桜井誠氏は、閉鎖を発表した日の夜、「ニコニコ生放送」でこんな発言をしている。

「私が会長だったとき、ですけど、去年ですけど。ニコニコのね、生放送の、ドワンゴのほうから『チャンネルつくってみませんか。おねがいします』って言って頭下げてきたんですよ。だからねえ、なんで急に閉鎖になってるのかわかんないんですけどねえ」

 たしかに本サイトも速報記事で書いたように、「ニコニコ動画」の公式チャンネルは、希望者が自由に開設できるものではなく、ドワンゴ側がアクセス数を見込んで営業をかけるものと言われている。

 在特会公式チャンネルの開設は昨年12月。マスメディアの"ヘイトスピーチ特集"は最盛期と言っていい状況だった。安倍首相、山谷えり子参議院議員ら多数の国会議員に、在特会あるいはその流れを汲むヘイターたちとの関係が報じられ、もはやその存在は"差別を憎む社会には相容れないもの"として確立されていた。

 そんな状況下で「ニコ動」は公式に在特会側へ情報発信の場を供給したのである。もちろん反発は強く、「ニコ動」全体をボイコットしようという動きを見せる利用者たちもいた。おそらく社内にも「やめたほうがいい」という声もあったはずだ。にもかかわらず、ドワンゴはいまのいままで公式チャンネルを放置してきた。

 それも、桜井氏がいうような経緯があったのなら、納得がいく。自分たちから「頭を下げて」頼んでおきながら、「あ、やっぱり反発スゴイんでこの話はなかったことに」とはなかなか言えないのだろう。

 では、その川上氏とドワンゴがなぜいまになって、突然、"在特会切り"をおこなったのか。理由はふたつ考えられる。

 ひとつは、具体的に在特会の「投稿規約違反」に触れると、これまで自分たちが"差別コンテンツ"を野放しにし、今でも野放しにしていることを掘り返されるからだ。

「ニコ動」の「投稿規約」では、〈他の利用者への中傷、脅迫、いやがらせに該当する行為〉〈差別につながる民族・宗教・人種・性別・年齢等に関する表現行為〉などが禁じられている。もし、ある具体的な文言がこれに抵触したがゆえに在特会公式チャンネルを閉鎖したことを認めれば、現存する人種差別デモや極右排外主義的主張をする動画コンテンツを一斉に削除せねばならない。だから「具体的な規約違反」の文言について説明できないのではないか。

 ふたつめは、やはりKADOKAWAと合併をしたという社内事情が関係しているという見方だ。本サイトは関係者からこんな情報を得ている。

「今回の決定の背景には、KADOKAWA側の役員から強い申し入れがあったと聞いています。理由は株主総会で問題になる可能性があること、それから、KADOKAWAのアニメ、マンガコンテンツが海外市場進出をにらんでいるため、国際社会で批判されるような問題を取り除いておきたいということだったようです」(KADOKAWA・DWANGO関係者)

 ようするに、ドワンゴとしては、徹頭徹尾、商売的な理由だったため、ユーザーにまともに説明することができなかったということではないのか。

 まあ、本サイトが何を言おうが、おそらく川上氏はまた「無茶苦茶」「的外れ」と繰り返すのだろう。表向きはダンマリを決め込みながら、非公式に一部を取り出し「デマだ」と指摘することで、情報を相対化していく。川上氏らしい頭のいいやり方である。

 しかし、在特会をいくらこっそり"足切り"したところで、差別的コンテンツを積極的に作り出した責任、そして今も垂れ流し続けている責任から逃れられるわけではない。そのことだけはゆめゆめ忘れぬようお願いしたい。
(編集部)