欧米の医療者の間では、低身長は心筋梗塞など冠動脈疾患(CAD)発症リスクであることが知られている。ちなみに、医学的な低身長は同性・同年齢の平均身長からマイナス2SD(標準偏差)と定義される。

 低身長は、CAD発症リスク以外にも高血圧や脂質異常症、糖尿病など循環器疾患を誘発する疾病とも関連している。しかし、遺伝的な背景は特定されていなかった。

 先日、英国の研究者グループが、身長に関連する180の遺伝子変異とCAD発症リスクに関して、詳細な解析を行った。

 その結果、身長が1SD低下するごとに、CAD発症リスクは13.5%ずつ上昇。一方、高身長に関連する遺伝子変異が増えるほど、発症リスクは段階的に減少していった。CAD危険因子との関係では、LDL‐コレステロール(悪玉コレステロール)と中性脂肪の増減が遺伝的な身長と有意に関連することが判明している。

 悪玉コレステロールと中性脂肪といえば、動脈硬化を引き起こし、血管を詰まらせる元凶でもある。研究者は、「低身長とCAD発症リスクの上昇が相関することは明らかで、脂質異常や動脈硬化の遺伝的経路と関連する」としている。

 日本人は欧米人に比べ相対的にCAD発症率が低く、類似の報告は少ないが、脳卒中と低身長については日本人対象の報告がある。

 岩手、秋田、長野、沖縄4県在住の男女(40〜59歳)、約1万5500人を16年間追跡した調査で、参加者を身長順に4分割して比較した(国立がん研究センター・JPHC研究)。

 その結果、最低身長グループの脳卒中発症率は、最高身長グループの1.6倍に上昇することが示されたのだ。ただし、同研究は遺伝的背景を調べるものではなく、この結果には飲酒、肥満などの環境因子も影響していると思われる。一方、CADとの関連は見いだされなかった。

 いずれにしても、人種を問わず低身長と心臓・脳の循環器疾患リスクが示唆されているわけ。小柄な方は男女を問わず、人一倍、健康的な生活を心がけた方がよさそうだ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)