■3月の親善試合(チュニジア戦/2−0、ウズベキスタン戦/5−0)で、ヴァヒド・ハリルホジッチ監督が採用した基本フォーメーションは、「4−3−3」、または「4−2−3−1」だった。次の6月のW杯予選では、どのような選手が招集されるのか気になるところだ。今回は、ハリルジャパンの中盤について福田正博氏が現在の考えを語った。

 4−3−3の場合、中盤の構成はセンターバック2枚の前にアンカーがひとり、その前方の左右にインサイドハーフがポジションをとり、逆三角形の陣形が基本になる。

 アンカー、あるいはワンボランチとも言われるポジションに適した世界レベルの選手は、日本にはまだ少ない。たとえば、バルセロナのブスケッツ(スペイン代表)のような「高くて強くてうまい」選手がいればいいが、日本にそういう選手はなかなかいない。アンカーに高さが必要になる理由は、ふたりのセンターバックの前に位置するアンカーに「高さ」と「強さ」があることで、ハイボールへの対応も含めた守備が安定するからだ。

 たとえば、センターバックにボアテングとバドシュトゥバー(ともにドイツ代表)という強力なDFがいるバイエルンであれば、ラームのような小柄な選手をアンカーに置いてもいいだろう。しかも、バイエルンはほとんどの時間帯で自分たちがボールを保持して主導権を握っているため、アンカーへの負荷がそこまで大きくないので、小柄な選手でも問題はない。

 しかし、センターバックがバイエルンほどの強さではない日本代表が格上と戦うときは、アンカーひとりでは厳しいだろう。相手がどんな戦術かにもよるが、やはり4−2−3−1のダブルボランチのほうが守備は安定してリスクは減る。日本人は身体のサイズが大きくないので、中央の4人、つまりセンターバックふたりとボランチふたりで守ったほうが、スペースを埋めやすいということだ。

 反対に、対戦相手が格下だったら、ボランチをふたり置いておく必要はない。アンカーひとりにして、MFはどんどん前へ出ていけるほうがいいだろう。ただし、アンカーはあまりボールに食いついてはいけないポジションで、自分のエリアを留守にしてはいけない。ボールを奪いに行って、かわされてしまったら、センターバックの前のスペースがポッカリ空いてしまい、守備が混乱する。

 たとえば、バイエルンのシャビ・アロンソ(スペイン代表)は中央でドッシリ構えている。そして、ポジショニングがいいのでほとんどのこぼれ球を拾う。ただ、スピードがあるわけではないので、ガンガン前には出ていかない。

 日本代表の場合、W杯アジア予選であればボランチひとりでも互角以上に戦えるだろう。アンカーとセンターバックの3人で守りきれるからだ。アンカーひとりの場合、日本が主導権を握れる相手ならば長谷部誠、少し守備に比重をかけたほうがいいときは山口蛍がいいのではないかと私は思う。

 そして、格上との対戦になるW杯本大会でも、日本代表がアジア予選と同じように対応できるかどうかが問題だ。日本の場合、W杯本大会で対戦する相手はほとんどが格上。4−3−3の布陣で前からプレスをかけてもハマらないときのことも考えるべきだろう。

 仮に、W杯本大会で日本がドイツと戦ったら、アンカーひとりでは守りきることは現実的に難しい。前からプレッシャーをかけてボールを奪おうとしても、プレスを回避されて全体のコンパクトさがなくなってしまい、その結果、中央やサイドのスペースを使われてそこで起点を作られてしまったら、守備の混乱を招く。

 あるいは、相手のセンターフォワードにイブラヒモビッチのような長身FWがいて、そこへロングボールを放り込まれたら、日本の中盤の上空をボールが通過していくので前からのプレスがハマらない。そう考えていくと、格上と戦うときは、ボランチふたりとセンターバックふたりの4人で守るほうが安定しているといえる。その場合の中盤は、長谷部と蛍がダブルボランチを組むことがいいと私は考えている。そして、ハリルホジッチ監督は、相手に合わせてその変更ができるはずだ。

 ハリルホジッチ監督が就任以来、もっとも強調していることが「前に出ていくこと」だ。テンポを速くして、ひとりひとりの判断スピードも含めてプレースピードを上げて前へ出ていく。これはドイツ代表がやっていることでもある。ひとりがボールを持つ時間を2秒、あるいは1秒と短くしていく。そのためには、判断のスピードを高めて、技術を高めなくてはいけない。正確に速く、次のプレーを読む力も必要になる。

 中盤は、それがもっとも求められるポジションになる。プレースピードとクイックネスが必要な「縦に速いサッカー」。積極的に飛び出していくことを求めるハリルホジッチスタイルを考えると、相性がいいMFは蛍だろう。彼は縦にどんどん出て行くし、ボールを奪取する能力も高く、インターセプトもできる。長谷部誠も縦にスプリントする選手であり、縦にドリブルしてボールを運ぶ。つまり、スプリントを繰り返すことができ、ハードワークができて、球際も強い。そんな勇猛果敢な選手をハリルホジッチ監督は求めているのだと思う。

 4−3−3であれば、アンカーに長谷部、インサイドハーフの右に蛍、左に香川真司が私のファーストチョイスになる。もちろん清武弘嗣も候補のひとりだ。宇佐美貴史をインサイドハーフで起用する手もある。あるいは、技術や戦術眼で確かなものを持っている柴崎岳もインサイドハーフで見てみたい選手だ。さらには、先日の国内合宿に招集された米本拓司ら、新戦力の台頭にも期待したい。

 6月のW杯アジア予選で、ハリルホジッチ監督がどのフォーメーションを採用して、どんな選手起用をするのか楽しみだ。

福田正博●解説 analysis by Fukuda Masahiro